ASSET-SSBJ

サステナビリティ開示テーマ別基準第2号 気候関連開示基準
目 的
- 1. 本基準の目的は、財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な、当該企業の気候関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めることにある。
- 2. 気候関連開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会に関する情報を開示しなければならない。また、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得ない気候関連のリスク及び機会に関する情報については、開示する必要はない。
開示基準
Ⅰ.範 囲
- 3. 本基準は、企業がさらされている気候関連のリスク(気候関連の物理的リスク及び気候関連の移行リスクを含む。)及び企業が利用可能な気候関連の機会に適用しなければならない。
Ⅱ.用語の定義
ⅰ.本基準において定義している用語
(a) 全 般
- 4. 本基準は、次のように用語を定義している。
- (1) 「気候関連のリスク」とは、気候変動が企業に与える、潜在的なネガティブな影響をいう。気候関連のリスクは、気候関連の物理的リスク及び気候関連の移行リスクに分類される。
- (2) 「気候関連の物理的リスク」とは、気候変動によりもたらされるリスクで、事象を契機とすることがあるもの(急性の物理的リスク)又は気候パターンの長期的な変化によるもの(慢性の物理的リスク)をいう。
- (3) 「気候関連の移行リスク」とは、低炭素経済に移行する取組みから生じるリスクをいう。移行リスクには、政策、法律、技術、市場及びレピュテーション・リスクが含まれる。
- (4) 「気候関連の機会」とは、企業にとっての、気候変動から生じる潜在的なポジティブな影響をいう。
- (5) 「企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会」とは、短期、中期又は長期にわたり、企業のキャッシュ・フロー、当該企業のファイナンスへのアクセス又は資本コストに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会をあわせたものをいう。
- (6) 「温室効果ガス」とは、「京都議定書」に記載されている7種類の温室効果ガス、すなわち、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、三フッ化窒素(NF3)、パーフルオロカーボン類(PFCs)及び六フッ化硫黄(SF6)をいう。
- (7) 「気候変動に関する最新の国際協定」とは、気候変動に対処するための「国連気候変動枠組条約」の締約国としての国家間の協定をいう。
(b) 戦 略
- 5. 本基準は、戦略に関して、次のように用語を定義している。
- (1) 「気候関連の移行計画」とは、温室効果ガス排出の削減などの活動を含む、低炭素経済に向けた移行のための企業の目標、活動又は資源を示した企業の全体的な戦略の一側面をいう。
- (2) 「気候レジリエンス」とは、気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の能力をいう。
(c) 指標及び目標
- 6. 本基準は、指標及び目標に関して、次のように用語を定義している。
- (1) 「内部炭素価格」とは、投資、生産及び消費のパターンの変化並びに潜在的な技術上の進歩及び将来の排出削減コストの財務的影響を評価するために企業が使用する価格をいう。
- (2) 「直接的な温室効果ガス排出」とは、報告企業が所有又は支配する排出源から発生する温室効果ガス排出をいう。
- (3) 「間接的な温室効果ガス排出」とは、報告企業の活動の結果であるものの、別の企業が所有又は支配する排出源から発生する温室効果ガス排出をいう。
- (4) 「スコープ1温室効果ガス排出」とは、報告企業が所有又は支配する排出源から発生する直接的な温室効果ガス排出をいう。
- (5) 「スコープ2温室効果ガス排出」とは、報告企業が消費する、購入又は取得した電気、蒸気、温熱又は冷熱(以下あわせて「電気等」という。)の生成から発生する間接的な温室効果ガス排出をいう。
- (6) 「スコープ3温室効果ガス排出」とは、報告企業のバリュー・チェーンで発生する間接的な温室効果ガス排出(スコープ2温室効果ガス排出に含まれないもの)をいい、上流及び下流の両方の温室効果ガス排出を含む。
- (7) 「地球温暖化係数」とは、1単位の特定の温室効果ガスが放射強制力に与える影響(大気への悪影響の度合い)について、1単位の二酸化炭素の放射強制力に与える影響と比較して説明する係数をいう。
- (8) 「CO2相当」とは、1単位の二酸化炭素の地球温暖化係数を用いて表される、それぞれの温室効果ガスの地球温暖化係数を示すための普遍的な測定単位をいう。この単位は、さまざまな温室効果ガスの放出(又は放出の回避)について共通の基準で評価するために使用される。
- (9) 「連結会計グループ」とは、親会社及びその連結子会社をいう。
- (10) 「ロケーション基準」とは、地域、地方、国などの特定された場所におけるエネルギー生成に関する平均的な排出係数を用いてスコープ2温室効果ガス排出を測定する方法をいう。
- (11) 「マーケット基準」とは、電気等の購入契約(分離できない契約証書が含まれることがある。)及び分離された契約証書の内容を反映してスコープ2温室効果ガス排出を測定する方法をいう。
- (12) 「契約証書」とは、次のいずれかをいう。
- ① エネルギー生成に関する属性と一体となっている電気等の購入契約
- ② 電気等の購入契約から分離された、エネルギー属性に着目して締結される契約
- (13) 「スコープ3カテゴリー」とは、「温室効果ガスプロトコルのコーポレート・バリュー・チェーン(スコープ3)基準(2011年)」(以下「『スコープ3基準(2011年)』」という。)に定めるスコープ3温室効果ガス排出に関する次の15のカテゴリーをいう。
- ① 購入した財及びサービス
- ② 資本財
- ③ スコープ1温室効果ガス排出又はスコープ2温室効果ガス排出に含まれない燃料及びエネルギー関連の活動
- ④ 上流の輸送及び流通
- ⑤ 事業において発生した廃棄物
- ⑥ 出張
- ⑦ 従業員の通勤
- ⑧ 上流のリース資産
- ⑨ 下流の輸送及び流通
- ⑩ 販売した製品の加工
- ⑪ 販売した製品の使用
- ⑫ 販売した製品の廃棄処理
- ⑬ 下流のリース資産
- ⑭ フランチャイズ
- ⑮ 投資
- (14) 「ファイナンスド・エミッション」とは、報告企業が行った投資及び融資に関連して、投資先又は相手方による温室効果ガスの総排出のうち、当該投資及び融資に帰属する部分をいう。ファイナンスド・エミッションは、スコープ3のカテゴリー15(投資)の温室効果ガス排出の全部又は一部を構成する。投資及び融資には、融資、プロジェクト・ファイナンス、債券、株式投資及び未実行のローン・コミットメントが含まれる。資産運用に関する活動を行う企業のファイナンスド・エミッションには、運用資産に帰属する温室効果ガス排出が含まれる。
- (15) 「持分割合アプローチ」とは、子会社等の投資先の温室効果ガス排出量のうち、持分割合相当を報告企業の温室効果ガス排出量に含める測定アプローチをいう。
- (16) 「経営支配力アプローチ」とは、子会社等の投資先の意思決定機関に対する支配力を通じて、当該投資先の経営方針を決定する力を持つ場合、持分割合によらず、当該投資先の温室効果ガス排出量の100%を報告企業の温室効果ガス排出量に含める測定アプローチをいう。
- (17) 「財務支配力アプローチ」とは、子会社等の投資先の活動から経済的利益を得る目的で、契約等により当該投資先の財務方針を決定する力を持つ場合、持分割合によらず、経済的実質を反映する割合において当該投資先の温室効果ガス排出量を報告企業の温室効果ガス排出量に含める測定アプローチをいう。
- (18) 「(スコープ3温室効果ガス排出の測定における)1次データ」とは、報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動から、直接入手されたデータをいう。1次データには、報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動に関するサプライヤー又はバリュー・チェーン上の他の企業から提供されたデータが含まれる。
- (19) 「(スコープ3温室効果ガス排出の測定における)2次データ」とは、報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動から、直接入手されないデータをいう。2次データには、データ・プロバイダーから提供されるデータ、並びに、データベース及び政府統計等の産業平均データが含まれる。
- (20) 「カーボン・クレジット」とは、カーボン・クレジットを付与する制度等によって発行され、温室効果ガス排出の削減又は除去を表す単位をいう。カーボン・クレジットは、電子登録によって一意にシリアル化され、付与され、追跡され、無効化される。
ⅱ.本基準以外のサステナビリティ開示基準において定義している用語
- 7. 本基準は、サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(以下「『適用基準』」という。)に定義している意味で次の用語を使用している。
- (1) 報告企業
- (2) 財務報告書
- (3) 財務報告書の主要な利用者(主要な利用者)
- (4) 財務諸表
- (5) サステナビリティ関連財務開示
- (6) 重要性がある
- (7) 合理的で裏付け可能な情報
- (8) サステナビリティ開示基準
- (9) IFRSサステナビリティ開示基準
- (10) 開示トピック
- (11) バリュー・チェーン
- (12) ビジネス・モデル
- (13) 実務上不可能
- 8. 本基準は、サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(以下「『一般基準』」という。)に定義している意味で次の用語を使用している。
- (1) シナリオ分析
- (2) 産業別の指標
Ⅲ.コア・コンテンツの開示
ⅰ.ガバナンス
(a) 開示目的
- 9. ガバナンスに関する気候関連開示の目的は、気候関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために企業が用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続を理解できるようにすることにある。
(b) 気候関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関又は個人
- 10. 第9項の目的を達成するため、気候関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関又は個人に関して、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 気候関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関の名称又は当該責任を負う個人の役職名
- (2) 気候関連のリスク及び機会に関する責任が、(1)の機関又は個人に与えられた役割、権限及び義務などの記述及びその他の関連する方針にどのように反映されているか
- (3) (1)の機関又は個人が、気候関連のリスク及び機会に対応するために定めた戦略を監督するための適切なスキル及びコンピテンシーが利用可能であるかどうか又は開発する予定であるかどうかについて、どのように判断しているか
- (4) (1)の機関又は個人が、気候関連のリスク及び機会について、どのように、また、どの頻度で情報を入手しているか
- (5) (1)の機関又は個人が、企業の戦略、主要な取引に関する意思決定並びに当該企業のリスク管理のプロセス及び関連する方針を監督するにあたり、気候関連のリスク及び機会をどのように考慮しているか((1)の機関又は個人が、それらのリスク及び機会に関連するトレードオフを考慮しているかどうかを含む。)
- (6) (1)の機関又は個人が、気候関連のリスク及び機会に関連する目標の設定をどのように監督し、それらの目標の達成に向けた進捗をどのようにモニタリングしているか(第92項から第99項参照)。これには、次の事項が含まれる。
- ① 関連するパフォーマンス指標が報酬に関する方針に含まれている場合、どのように含まれているか(第84項(1)及び第85項参照)
- ② 関連するパフォーマンス指標が報酬に関する方針に含まれていない場合、その旨(第84項(2)参照)
(c) 経営者の役割
- 11. 第9項の目的を達成するため、気候関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続における経営者の役割に関して、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 具体的な経営者若しくはこれに準ずる者(本項において「経営者等」という。)又は経営者等が関与する委員会その他の機関への役割の委任に関する次の情報
- ① 役割が具体的な経営者等又は経営者等が関与する委員会その他の機関に委任されている場合、次の事項
- ア. 経営者等の役職名又は委員会その他の機関の名称
- イ. 経営者等又は委員会その他の機関に対し、どのように監督が実施されているか
- ② 役割が具体的な経営者等又は経営者等が関与する委員会その他の機関に委任されていない場合、その旨
- (2) 経営者による気候関連のリスク及び機会の監督を支援するための統制及び手続に関する次の情報
- ① 経営者が、気候関連のリスク及び機会の監督を支援するために、所定の統制及び手続を用いている場合、これらの統制及び手続がその他の内部機能とどのように統合されているか
- ② 経営者が、気候関連のリスク及び機会の監督を支援するために、所定の統制及び手続を用いていない場合、その旨
(d) 不必要な繰り返しの回避
- 12. 第10項及び第11項の定めを満たすための開示を作成するにあたり、「適用基準」に従い、不必要な繰り返しを避けなければならない(「適用基準」第31項(2))。例えば、企業は第10項及び第11項により要求される情報を提供しなければならないが、サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督が統合的に管理されている場合、サステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれについての個別の開示ではなく、統合されたガバナンスの開示を提供することにより繰り返しを避けることになる。
ⅱ.戦 略
(a) 開示目的
- 13. 戦略に関する気候関連開示の目的は、気候関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を理解できるようにすることにある。
- 14. 具体的には、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会(第17項から第19項参照)
- (2) (1)の気候関連のリスク及び機会が企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響(第20項参照)
- (3) (1)の気候関連のリスク及び機会の財務的影響(第21項から第27項参照)
- (4) (1)の気候関連のリスク及び機会が企業の戦略及び意思決定(気候関連の移行計画を含む。)に与える影響(第28項及び第29項参照)
- (5) (1)の気候関連のリスク及び機会を考慮した企業の戦略及びビジネス・モデルの気候レジリエンス(第30項から第39項参照)
- 15. 第14項(2)から(4)の事項は、第14項(1)の気候関連のリスク及び機会のそれぞれについて開示しなければならない。また、第14項(1)の気候関連のリスク及び機会のうち、相互に関連し合う複数のリスク及び機会については、「適用基準」第29項(1)に従い、関連する項目の間のつながりを理解できるように情報を開示しなければならない。
- 16. 第20項から第39項に従った開示の作成にあたり、産業横断的指標等(第46項参照)、及びIFRS S2号「気候関連開示」(以下「IFRS S2号」という。)(2023年6月公表、2025年12月最終改訂)の付属ガイダンスである「IFRS S2号の適用に関する産業別ガイダンス」(以下「『産業別ガイダンス』」という。)に定義されている、開示トピックに関連する産業別の指標(第86項参照)を参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。考慮した結果、適用すると結論付ける場合と、適用しないと結論付ける場合とがある。
(b) 気候関連のリスク及び機会
- 17. 気候関連開示を作成するにあたり、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会を識別しなければならない。このようなリスク及び機会を識別するにあたり、「産業別ガイダンス」に定義されている開示トピックを参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。考慮した結果、適用すると結論付ける場合と、適用しないと結論付ける場合とがある。
- 18. 第17項に従い企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会を識別するにあたり、合理的で裏付け可能な情報(過去の事象、現在の状況及び将来の状況の予想に関する情報を含む。)を用いなければならない(「適用基準」第32項)。
- 19. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会について、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 第17項に従い識別した、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会
- (2) (1)の気候関連のリスクのそれぞれについて、気候関連の物理的リスク又は気候関連の移行リスクのいずれであるか
- (3) (1)の気候関連のリスク及び機会のそれぞれについて、その影響が生じると合理的に見込み得る時間軸(短期、中期又は長期により表す。)
- (4) 企業による「短期」、「中期」及び「長期」の定義
- (5) (4)の定義と企業が戦略的意思決定に用いる計画期間との関係
(c) ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響
- 20. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会について、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 気候関連のリスク及び機会が現在の企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与えている影響
- (2) 気候関連のリスク及び機会が将来の企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与えると予想される影響
- (3) 企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンにおいて、気候関連のリスク及び機会が集中している部分
(d) 財務的影響
(財務的影響の開示)
- 21. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会について、次の事項を理解できるようにする情報を開示しなければならない。
- (1) 現在の財務的影響
気候関連のリスク及び機会が、当報告期間において、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与えた影響 - (2) 予想される財務的影響
気候関連のリスク及び機会が、短期、中期及び長期において、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与えると予想される影響 - 22. 第21項(1)及び(2)について、具体的には、次の事項に関する定量的及び定性的情報を開示しなければならない。
- (1) 気候関連のリスク及び機会が、当報告期間において、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与えた影響
- (2) (1)の気候関連のリスク及び機会のうち、翌年次報告期間において、関連する財務諸表に計上する資産及び負債の帳簿価額に重要性がある影響を与える重大なリスクがあるもの
- (3) 気候関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を踏まえた、短期、中期及び長期における、企業の財政状態の変化に関する見込み。この開示を作成するにあたり、次の事項を考慮しなければならない。
- ① 企業の投資計画及び処分計画(契約上約束していない計画を含む。)
- ② 企業の戦略を遂行するための資金計画
- (4) 気候関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を踏まえた、短期、中期及び長期における、企業の財務業績及びキャッシュ・フローの変化に関する見込み
- 23. 第21項(2)の予想される財務的影響について、気候関連のリスク及び機会が企業の財務計画にどのように含まれているかを考慮しなければならない。
- 24. 第21項(2)の予想される財務的影響に関する開示を作成するにあたり、次のようにしなければならない。
- (1) 合理的で裏付け可能な情報を用いる(「適用基準」第32項)。
- (2) 企業が利用可能なスキル、能力及び資源に見合ったアプローチを用いる。
(定量的情報の開示とその免除)
- 25. 財務的影響の開示(第21項から第24項参照。以下同じ。)において定量的情報を開示する場合、単一の数値又は数値の範囲を開示することができる。また、次のいずれかであると判断する場合には、定量的情報を開示する必要はない。
- (1) 影響を区分して識別できない。
- (2) 影響を見積るにあたり測定の不確実性の程度があまりにも高いために、もたらされる定量的情報が有用でない。
- 26. 企業が定量的情報を提供するスキル、能力又は資源を有していない場合、予想される財務的影響の開示において定量的情報を提供する必要はない。
- 27. 第25項又は第26項に従い、財務的影響の開示において定量的情報を提供する必要はないと判断した場合、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 定量的情報を提供していない理由
- (2) 当該財務的影響に関する定性的情報(気候関連のリスク又は機会が影響を与える可能性が高いか、影響を与えた、関連する財務諸表の行項目、合計及び小計を含む。)
- (3) 財務的影響の開示において定量的情報を提供する必要はないと判断した事項に関する気候関連のリスク又は機会と、他の気候関連のリスク又は機会及びその他の要因との複合的な財務的影響に関する定量的情報(この複合的な財務的影響に関する定量的情報が有用でないと企業が判断する場合を除く。)
(e) 戦略及び意思決定に与える影響
- 28. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会について、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 企業の戦略及び意思決定において、気候関連のリスク及び機会にどのように対応してきたか、また、今後対応する計画であるか(企業が設定した気候関連の目標及び企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、当該目標をどのようにして達成する計画であるかを含む。)
- (2) (1)に従い開示した対応について、報告期間の末日において資源を確保している方法及び将来において資源を確保するための計画の内容
- (3) 過去の報告期間に開示した計画に対する進捗(定量的及び定性的情報を含む。)
- (4) (1)の対応を決定するにあたり考慮した、気候関連のリスク及び機会の間のトレードオフ
- 29. 第28項(1)について、具体的には、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 気候関連のリスク及び機会に対処するために、現在のビジネス・モデル(資源の配分を含む。)を変更している場合には、その内容。また、将来におけるビジネス・モデル(資源の配分を含む。)の変更が予想される場合には、その内容
- (2) 気候関連のリスク及び機会に対処するために、現在、直接的及び間接的な緩和及び適応の取組みを実施している場合には、その内容。また、将来における直接的及び間接的な緩和及び適応の取組みが予想される場合には、その内容
- (3) 気候関連の移行計画がある場合、当該移行計画の内容(移行計画の作成に用いた主要な仮定並びに移行計画を実現するうえで不可欠な要因及び条件に関する情報を含む。)
- (4) 気候関連の目標(温室効果ガス排出目標を含む。)(第92項から第99項参照)がある場合、当該目標を達成するための計画の内容
(f) 気候レジリエンス
(気候レジリエンスの開示)
- 30. 気候関連のシナリオ分析に基づき、気候レジリエンスを評価しなければならない。気候関連のシナリオ分析は、最低限、戦略計画サイクルに沿って更新しなければならないが、報告期間ごとに実施する必要はない。気候レジリエンスの評価は、報告期間ごとに実施しなければならない。
- 31. 気候レジリエンスに関して、識別した気候関連のリスク及び機会を考慮したうえで、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 実施した気候関連のシナリオ分析の手法及び実施時期(第33項から第38項参照)
- (2) 報告期間の末日における気候レジリエンスの評価(第39項参照)
- 32. 第31項の開示を行うにあたり定量的情報を開示する場合、単一の数値又は数値の範囲を開示することができる。
(気候関連のシナリオ分析)
- 33. 気候レジリエンスの評価にあたり、企業の状況に見合ったアプローチを用いて、気候関連のシナリオ分析を用いなければならない。
- 34. 気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチは、合理的で裏付け可能な情報を考慮することができるようなものとしなければならない(「適用基準」第32項)。
- 35. 気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチを決定するにあたり、次の事項を検討しなければならない。
- (1) 気候関連のシナリオ分析に対して用いるインプットの選択
- (2) 気候関連のシナリオ分析の実施方法に関する分析上の選択
- 36. 第33項に従い評価を行う際の企業の状況の評価及び第35項に従い気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチの決定にあたり、次の事項を考慮しなければならない。
- (1) 気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャー
- (2) 気候関連のシナリオ分析のために企業が利用可能なスキル、能力及び資源
- 37. 気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチに関する追加の定めは、別紙Aに示している。
- 38. 実施した気候関連のシナリオ分析の手法及び実施時期について、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 用いたインプットに関する情報。これには、次の事項を含む。
- ① 分析に用いた気候関連のシナリオに関する次の情報
- ア. 分析に用いた気候関連のシナリオ及びそのシナリオの情報源
- イ. 分析に多様な範囲の気候関連のシナリオを含めたかどうか
- ウ. 分析に用いた気候関連のシナリオは、気候関連の移行リスク又は気候関連の物理的リスクのいずれに関連するものかどうか
- エ. 用いたシナリオの中に、気候変動に関する最新の国際協定と整合する気候関連のシナリオが含まれるかどうか
- オ. 選択した気候関連のシナリオが、気候関連の変化、進展又は不確実性に対する企業のレジリエンスの評価に関連すると判断した理由
- ② 分析に用いた時間軸
- ③ 分析に用いた事業の範囲(例えば、分析に用いた事業の所在地及び事業単位)
- (2) 分析の前提とした主要な仮定。これには、次の事項を含む。
- ① 企業が事業を営む法域における気候関連の政策
- ② マクロ経済のトレンド
- ③ 国又は地域レベルの変数(例えば、地域の気象パターン、人口統計、土地利用、インフラ及び天然資源の利用可能性)
- ④ エネルギーの使用及びエネルギー構成
- ⑤ 技術の進展
- (3) 気候関連のシナリオ分析を実施した報告期間(A20項参照)
(気候レジリエンスの評価)
- 39. 報告期間の末日における気候レジリエンスの評価について、次の事項に関する情報を開示しなければならない。
- (1) 気候関連のシナリオ分析の結果が企業の戦略及びビジネス・モデルについての評価に影響がある場合、当該影響。これには、気候関連のシナリオ分析において識別された影響について、どのように対応する必要があるかを含む。
- (2) 気候レジリエンスの評価において考慮された重大な不確実性の領域
- (3) 気候変動に対して、短期、中期及び長期にわたり戦略及びビジネス・モデルを調整(適応を含む。)する企業の能力。これには、次の事項を含む。
- ① 気候関連のシナリオ分析において識別された影響に対応する(気候関連のリスクに対処すること及び気候関連の機会を利用することを含む。)ための、既存の金融資源の利用可能性及び柔軟性
- ② 既存の資産を再配置、別の目的へ再利用、性能向上又は廃棄する企業の能力
- ③ 気候レジリエンスのための気候関連の緩和、適応及び機会に対する、現在の投資及び計画されている投資の影響
ⅲ.リスク管理
(a) 開示目的
- 40. リスク管理に関する気候関連開示の目的は、次のことをできるようにすることにある。
- (1) 気候関連のリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするプロセス(それらのプロセスが全体的なリスク管理プロセスに統合され、用いられているかどうか、また、統合され、用いられている場合、その統合方法及び利用方法を含む。)を理解すること
- (2) 企業の全体的なリスク・プロファイル及び全体的なリスク管理プロセスを評価すること
(b) リスク管理に関する開示
- 41. 第40項の目的を達成するため、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 企業が気候関連のリスクを識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセス及び関連する方針に関する情報。これには、次の情報を含む。
- ① 企業が用いるインプット等に関する情報(例えば、データの情報源及び当該プロセスの対象となる事業の範囲に関する情報)
- ② 気候関連のリスクを識別するための気候関連のシナリオ分析に関する次の情報
- ア. 気候関連のリスクを識別するために気候関連のシナリオ分析を用いている場合、その利用方法に関する情報
- イ. 気候関連のリスクを識別するために気候関連のシナリオ分析を用いていない場合、その旨
- ③ 気候関連のリスクの影響の性質、発生可能性及び規模の評価方法に関する情報(例えば、定性的要因、定量的閾値又はその他の規準を考慮しているかどうか)
- ④ 気候関連のリスクの優先順位付けに関する次の情報
- ア. 他の種類のリスクと比べて気候関連のリスクに高い優先順位を付けている場合、どのように高い優先順位を付けているかに関する情報
- イ. 他の種類のリスクと比べて気候関連のリスクに高い優先順位を付けていない場合、その旨
- ⑤ 気候関連のリスクをモニタリングする方法に関する情報
- ⑥ 企業が用いるプロセスの変更に関する次の情報
- ア. 前報告期間と比較して、企業が用いるプロセスを変更した場合、変更の内容に関する情報
- イ. 前報告期間と比較して、企業が用いるプロセスを変更していない場合、その旨
- (2) 気候関連の機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセスに関する情報。これには、次の情報を含む。
- ① 気候関連の機会を識別するために気候関連のシナリオ分析を用いている場合、その利用方法に関する情報
- ② 気候関連の機会を識別するために気候関連のシナリオ分析を用いていない場合、その旨
- (3) 気候関連のリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセスが、全体的なリスク管理プロセスに統合され、用いられている程度、並びにその統合方法及び利用方法に関する情報
(c) 不必要な繰り返しの回避
- 42. 第41項の定めを満たすための開示を作成するにあたり、「適用基準」に従い、不必要な繰り返しを避けなければならない(「適用基準」第31項(2))。例えば、企業は第41項により要求される情報を提供しなければならないが、サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督が統合的に管理されている場合、サステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれについての個別の開示ではなく、統合されたリスク管理の開示を提供することにより繰り返しを避けることになる。
ⅳ.指標及び目標
(a) 開示目的
- 43. 指標及び目標に関する気候関連開示の目的は、気候関連のリスク及び機会に関連する企業のパフォーマンス(企業が設定した気候関連の目標及び企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、当該目標の達成に向けた進捗を含む。)を理解できるようにすることにある。
- 44. 第43項の目的を達成するため、次の情報を開示しなければならない。
- (1) 産業横断的指標等(第46項参照)に関連する情報
- (2) 産業別の指標(第86項参照)
- (3) 気候関連のリスクの緩和若しくは気候関連のリスクへの適応、又は気候関連の機会の利用のために、企業が設定した気候関連の目標及び企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、当該目標(ガバナンス機関又は経営者が、当該目標の達成に向けた進捗を測定するために用いる指標を含む。)(第92項から第99項参照)
- 45. 気候関連の指標(気候関連の目標を設定し、当該目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために用いる指標を含む。)の定義及び算定方法は、原則として、時間の経過とともに一貫性がなければならない。また、気候関連の指標及び目標は、その内容を示す、明瞭かつ正確な名称を付し、定義しなければならない。
(b) 気候関連の指標
(産業横断的指標等の開示)
- 46. 産業横断的指標等に関連して、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 温室効果ガス排出(第47項から第76項参照)
- (2) 気候関連の移行リスク(第79項参照)
- (3) 気候関連の物理的リスク(第80項参照)
- (4) 気候関連の機会(第81項参照)
- (5) 資本投下(第82項参照)
- (6) 内部炭素価格(第83項参照)
- (7) 報酬(第84項及び第85項参照)
(温室効果ガス排出の絶対総量の開示)
- 47. 第46項(1)に関連して、当報告期間中に生成した温室効果ガス排出の絶対総量について、次の3つに区分して開示しなければならない。
- (1) スコープ1温室効果ガス排出
- (2) スコープ2温室効果ガス排出
- (3) スコープ3温室効果ガス排出
- 48. 温室効果ガス排出量は、CO2相当のメートル・トン(mt(e))により表示しなければならない。
ただし、第47項において開示するスコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出量のそれぞれの絶対総量が大きい場合、千メートル・トン(キロ・トン(kt(e)))、百万メートル・トン(メガ・トン(Mt(e)))又は十億メートル・トン(ギガ・トン(Gt(e)))のいずれかの単位を用いて表示することができる。この選択を行う場合、それぞれの温室効果ガス排出量について、同じ単位を用いて表示しなければならない。
温室効果ガス排出の測定
- 49. 第46項(1)に関連して、温室効果ガス排出は、「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)」(以下「『GHGプロトコル(2004年)』」という。)に従って測定しなければならない。
ただし、法域の当局又は企業が上場する取引所が、温室効果ガス排出を測定するうえで異なる方法を用いることを企業の全部又は一部に対して要求している場合、企業のその部分について、当該方法を用いることができる。
測定方法ごとの温室効果ガス排出量の開示
- 50. 第49項ただし書きに従い「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定することを選択し、かつ、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定した温室効果ガス排出量に重要性がある場合、第47項に従い開示する温室効果ガス排出の絶対総量に加え、その内訳として次の情報に分解して開示しなければならない。
- (1) 「GHGプロトコル(2004年)」により測定した温室効果ガス排出量
- (2) 「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定した温室効果ガス排出量
- 51. 第50項に従い分解して開示するにあたり、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法が複数の法域の法令又は企業が上場する取引所の規則に関するものである場合、特定の法域の法令又は企業が上場する取引所の規則が要求する方法により測定した温室効果ガス排出量が単独で重要性があるときは、当該方法のそれぞれについて、第50項(2)に従い開示する温室効果ガス排出量を区分して開示しなければならない。
スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出の開示
- 52. スコープ1温室効果ガス排出(第47項(1)参照)及びスコープ2温室効果ガス排出(第47項(2)参照)について、連結会計グループに関するものと、その他の投資先に関するものとに分解して開示しなければならない。
- 53. スコープ2温室効果ガス排出については、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示しなければならない。
- 54. スコープ2温室効果ガス排出について、主要な利用者の理解に情報をもたらすために必要な契約証書に関する情報がある場合には、第53項に基づく開示に加え、当該契約証書に関する情報を提供しなければならない。ただし、マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示することにより当該契約証書に関する情報の提供に代えることができる。
スコープ3温室効果ガス排出の開示
- 55. スコープ3温室効果ガス排出(第47項(3)参照)については、「スコープ3基準(2011年)」に記述されているスコープ3カテゴリーに従い、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解して開示しなければならない。
- 56. 「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定したスコープ3温室効果ガス排出について、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解して開示することができない場合、「スコープ3基準(2011年)」のスコープ3カテゴリーのうち、報告企業の活動に関連するカテゴリーの名称を開示しなければならない。
スコープ3カテゴリー15(投資)の温室効果ガス排出の測定及び開示
- 56-2. スコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出を測定し開示するにあたり、ファイナンスド・エミッション以外の温室効果ガス排出について、カテゴリー15から除外することができる。
- また、スコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出に含めることとした金融活動について、当該金融活動に関連するデリバティブに係る温室効果ガス排出をカテゴリー15から除外することができる。
- 56-3. 第56-2項に従いスコープ3カテゴリー15から除外することとした温室効果ガス排出がある場合、除外したカテゴリー15の温室効果ガス排出に関連する金融活動について、説明しなければならない。
- また、第56-2項また書きに従いカテゴリー15から除外したデリバティブがある場合、当該デリバティブに関連する金融活動及び何をデリバティブとして扱ったか(例えば、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準又は実務において、当該項目がデリバティブの定義を満たしているかどうか等)について、説明しなければならない。
- 56-4. スコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出については、第55項の開示に加え、カテゴリー15の温室効果ガス排出の開示に含めたファイナンスド・エミッションの合計を小計として開示しなければならない。
ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示
- 57. 報告企業が次の1つ以上の活動を行う場合、ファイナンスド・エミッション(カテゴリー15(投資)の温室効果ガス排出の全部又は一部を構成する。)に関する追加的な情報を開示しなければならない(別紙C参照)。
- (1) 資産運用に関する活動
- (2) 商業銀行に関する活動
- (3) 保険に関する活動
- 58. 報告企業が第57項(1)から(3)に定める活動を行う場合であっても、これらを業として営むことについて企業が活動する法域の法令により規制を受けていないときは、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報を開示しないことができる。
- 59. 報告企業が第57項(1)から(3)に定める活動を行っているかどうかを判断するにあたり、次の定義を用いることができる。
- (1) 「資産運用に関する活動」とは、機関投資家、個人投資家及び富裕層の投資家のために手数料又は報酬と引換えにポートフォリオを運用する活動をいう。
- (2) 「商業銀行に関する活動」とは、預金を受け入れ、個人及び企業に対して融資を実行したり、インフラ、不動産及びその他のプロジェクトに対して融資を実行したりする活動をいう。
- (3) 「保険に関する活動」とは、保険関連の商品(伝統的なものも非伝統的なものも含む。)を提供する活動をいう。
(温室効果ガス排出の測定アプローチ等に関する開示)
温室効果ガス排出の測定アプローチに関する開示
- 60. 第49項本文に従い、「GHGプロトコル(2004年)」に従って温室効果ガス排出を測定するにあたり、報告企業が連結財務諸表を作成している場合の親会社(連結すべき子会社が存在しないため連結財務諸表を作成していない場合は、個別財務諸表を作成する企業)は、報告企業として報告する温室効果ガス排出を集計する範囲を決定する方法について、次のうち1つを選択しなければならない。
- (1) 持分割合アプローチ
- (2) 経営支配力アプローチ
- (3) 財務支配力アプローチ
- 61. 第49項本文に従い、「GHGプロトコル(2004年)」に従って温室効果ガス排出を測定するにあたり、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 第60項に従い選択した測定アプローチ(持分割合アプローチ、経営支配力アプローチ又は財務支配力アプローチのいずれか)
- (2) (1)を選択した理由
- (3) (1)において選択した測定アプローチが、どのように気候関連の指標及び目標に関する開示目的(第43項参照)と関連しているか
- (4) 当報告期間において(1)を変更した場合、その変更の内容及び変更の理由
- 62. 第49項ただし書きに従い、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を用いて温室効果ガス排出を測定するにあたり、第50項及び第51項に基づき温室効果ガス排出量を区分して開示することとした測定方法のそれぞれについて、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を要求している法域の法令の名称又は企業が上場する取引所及び当該取引所の規則の名称
- (2) 「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を選択した理由
- (3) 適用した測定アプローチ
- (4) (3)を適用した理由
- (5) (3)において適用した測定アプローチが、どのように気候関連の指標及び目標に関する開示目的(第43項参照)と関連しているか
- (6) 当報告期間において(3)を変更した場合、その変更の内容及び変更の理由
温室効果ガス排出の測定方法に関する開示
- 63. 温室効果ガス排出の測定(第54項ただし書きに従いマーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示することを選択する場合を含む。)に関して、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 温室効果ガス排出の測定方法
- ① 直接測定の場合
温室効果ガス排出を測定するために使用した排出量に関する情報及び測定にあたって報告企業が置いた仮定 - ② 見積りの場合
温室効果ガス排出を測定するために使用した活動量及び排出係数に関する情報並びに測定にあたって報告企業が置いた仮定 - (2) (1)で開示した各項目を選択した理由
- (3) 当報告期間において(1)を変更した場合、その変更の内容及び変更の理由
(特定の状況における異なる算定期間の情報の使用)
- 64. 第46項(1)の温室効果ガス排出に関する開示を行うための温室効果ガス排出の測定にあたり、バリュー・チェーン上の各企業から入手した情報の算定期間が報告企業の報告期間と異なる場合で、次のすべての要件を満たすときは、当該情報を使用することができる。
- (1) 過大なコストや労力をかけずに利用可能な、バリュー・チェーン上の各企業の最も直近のデータを使用する。
- (2) バリュー・チェーン上の各企業から入手した情報の算定期間の長さが、報告企業の報告期間の長さと同じである。
- (3) バリュー・チェーン上の各企業から入手した情報の算定期間の末日と、報告企業の財務報告書の報告期間の末日との間に発生した、報告企業の温室効果ガス排出に関連する重大な事象又は状況の重大な変化がある場合、その影響を開示する。
(CO2相当の温室効果ガスの集約)
- 65. 第46項(1)の温室効果ガス排出に関する開示を行うにあたり、7種類の温室効果ガスをCO2相当量に集約しなければならない。
直接測定の方法による場合
- 66. 温室効果ガス排出を測定するにあたり、直接測定の方法による場合、報告期間の末日において利用可能な、最新の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の評価における、100年の時間軸に基づく地球温暖化係数を用いて、7種類の温室効果ガスをCO2相当量に変換しなければならない。
ただし、法域の当局又は企業が上場する取引所が、7種類の温室効果ガスをCO2相当量に変換するうえで異なる地球温暖化係数を用いることを企業の全部又は一部に対して要求している場合、企業のその部分について、当該異なる地球温暖化係数を用いることができる。
見積りの方法による場合
- 67. 温室効果ガス排出を測定するにあたり、見積りの方法による場合、温室効果ガス排出を測定する基礎として、企業の活動を最も表現する活動量と、当該活動量に対応する排出係数を使用しなければならない。
- 68. 第67項において、見積りにおいて使用する排出係数が、既に、構成する温室効果ガスをCO2相当量に変換したものである場合、報告期間の末日において利用可能な、最新の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の評価における、100年の時間軸に基づく地球温暖化係数を用いて、排出係数を再計算することは要求されない。
一方、見積りにおいて使用する排出係数が、構成する温室効果ガスをCO2相当量に変換したものではない場合、報告期間の末日において利用可能な、最新の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の評価における、100年の時間軸に基づく地球温暖化係数を用いなければならない。
ただし、法域の当局又は企業が上場する取引所が、7種類の温室効果ガスをCO2相当量に変換するうえで異なる地球温暖化係数を用いることを企業の全部又は一部に対して要求している場合、企業のその部分について、当該異なる地球温暖化係数を用いることができる。
(スコープ3温室効果ガス排出の測定)
- 69. 第63項(1)①及び②に掲げた各項目は、スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたっても用いられる要素及び仮定である。スコープ3温室効果ガス排出の測定に使用する測定アプローチ並びに測定にあたって用いる要素及び仮定を選択するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならない(「適用基準」第32項)。
- 70. 利用可能なデータのうち、スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたって用いる要素及び仮定に組み込むものは、次の(1)から(4)に従い決定しなければならない(別紙B参照)。ただし、(1)から(4)については順不同である。
- (1) 直接測定によるデータがある場合には、見積りによるデータよりも優先しなければならない。
- (2) 1次データがある場合には、2次データよりも優先しなければならない。2次データを用いる場合、データが企業の活動をどの程度忠実に表現するかについて考慮しなければならない。
- (3) バリュー・チェーンにおける活動及び温室効果ガス排出が行われた法域、並びに当該活動を遂行する方法を忠実に表現する適時のデータがある場合には、そうではないデータよりも優先しなければならない。
- (4) 検証されたデータがある場合には、検証されていないデータよりも優先しなければならない。
- 71. スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたり、法域の当局又は報告企業が上場する取引所が、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を用いることを要求し、かつ、報告企業がその異なる方法を用いて測定した温室効果ガス排出を開示することを選択する場合(第49項ただし書き参照)であっても、また、第103項(1)に記載している経過措置を適用する場合であっても、第70項に従い、組み込むデータを決定しなければならない。
- 72. スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたって用いる要素及び仮定を開示するにあたり、次の事項を含めなければならない。
- (1) 第70項に従い組み込むデータを決定した方法
- (2) スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたり1次データを使用した範囲
- (3) スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたり検証されたデータを使用した範囲
- 73. スコープ3温室効果ガス排出の見積りにあたって、ある部分のスコープ3温室効果ガス排出を見積ることが実務上不可能であると判断する稀な場合、どのようにその部分に関するスコープ3温室効果ガス排出を管理しているか(管理していない場合は、その旨)について開示しなければならない。
(スコープ3温室効果ガス排出の範囲の再評価)
- 74. 「適用基準」第46項に従い、バリュー・チェーンの範囲(その幅広さ及び構成を含む。)を決定するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならない(「適用基準」第32項)。
- 75. 「適用基準」第44項に従い、重大な事象が発生した場合又は状況に重大な変化が発生した場合、バリュー・チェーンを通じて、影響を受けるすべての気候関連のリスク及び機会の範囲を再評価しなければならない。この再評価には、スコープ3温室効果ガス排出の測定において、スコープ3カテゴリーのどのカテゴリー及びバリュー・チェーン上のどの企業を含めるかについての再評価が含まれる。重大な事象又は状況の重大な変化は、企業がその事象又は状況の変化に関与しない場合でも発生することがある。また、主要な利用者にとって重要であると企業が評価する内容が変化することにより発生することもある。
- 76. 第75項にかかわらず、バリュー・チェーンを通じての気候関連のリスク又は機会の範囲について、「適用基準」第44項よりも頻繁に再評価することができる。
(温室効果ガス排出以外の産業横断的指標等に関する考慮事項)
- 77. 第46項(2)から(7)の定めを満たすための開示を作成するにあたり、次のことを考慮しなければならない。
- (1) 気候関連のリスク及び機会による影響が生じると合理的に見込み得る時間軸(第19項(3)参照)
- (2) 企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンにおいて、気候関連のリスク及び機会が集中している部分(第20項(3)参照)
- (3) 気候関連のリスク及び機会が、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与える影響に関連する、次の情報
- ① 気候関連のリスク及び機会が、当報告期間において、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与えた影響(第22項(1)参照)
- ② ①の気候関連のリスク及び機会のうち、翌年次報告期間において、関連する財務諸表に計上する資産及び負債の帳簿価額に重要性がある影響を与える重大なリスクがあるもの(第22項(2)参照)
- (4) 産業別の指標(第86項参照)(適用されるサステナビリティ開示基準で定義しているもの又は「適用基準」の定めを満たすものを含む。)が、第46項(2)から(7)の定めの全部又は一部を満たすために用いることができるかどうか
- (5) 第46項(2)から(7)の定めを満たすために開示される情報と、関連する財務諸表において開示される情報とのつながり(「適用基準」第29項(3))
- 78. 第46項(2)から(4)の定めを満たす開示を作成するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならない(「適用基準」第32項)。
(気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する開示)
- 79. 第46項(2)に関連して、気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動に関し、少なくとも次のいずれかを開示しなければならない。
- (1) 気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ
- (2) 気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報
- 80. 第46項(3)に関連して、気候関連の物理的リスクに対して脆弱な資産又は事業活動に関し、少なくとも次のいずれかを開示しなければならない。
- (1) 気候関連の物理的リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ
- (2) 気候関連の物理的リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報
- 81. 第46項(4)に関連して、気候関連の機会と整合した資産又は事業活動に関し、少なくとも次のいずれかを開示しなければならない。
- (1) 気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ
- (2) 気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の規模に関する情報
(資本投下に関する開示)
- 82. 第46項(5)に関連して、気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資の数値を開示しなければならない。
(内部炭素価格に関する開示)
- 83. 第46項(6)に関連して、次の事項に関する情報を開示しなければならない。
- (1) 内部炭素価格を意思決定に用いている場合、次の事項に関する情報
- ① 内部炭素価格の適用方法(例えば、投資判断、移転価格及びシナリオ分析)
- ② 温室効果ガス排出に係るコストの評価に用いている内部炭素価格(温室効果ガス排出のメートル・トン当たりの価格で表す。)
- (2) 内部炭素価格を意思決定に用いていない場合、その旨
(報酬に関する開示)
- 84. 第46項(7)に関連して、次の事項に関する情報を開示しなければならない。
- (1) 気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれている場合、次の事項に関する情報
- ① 気候関連の評価項目を役員報酬に組み込む方法(第10項(6)①参照)
- ② 当報告期間に認識された役員報酬のうち、気候関連の評価項目と結び付いている部分の割合
- (2) 気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれていない場合、その旨(第10項(6)②参照)
- 85. 第84項について、気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれているものの、他の評価項目とあわせて役員報酬に組み込まれており、気候関連の評価項目に係る部分を区分して識別できない場合は、その旨を開示したうえで、気候関連の評価項目を含む評価項目全体について第84項(1)①及び②の事項に関する情報を開示することができる。
(産業別の指標の開示)
- 86. 企業に関連する産業別の指標のうち、主なものを開示しなければならない。開示する産業別の指標を決定するにあたり、「産業別ガイダンス」に記述されている、開示トピックに関連する産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。考慮した結果、適用すると結論付ける場合と、適用しないと結論付ける場合とがある。
(その他の気候関連の指標の開示)
- 87. 第43項の目的を達成するため、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会のそれぞれについて、次のものを測定し、モニタリングするために企業が用いている指標を開示しなければならない。
- (1) 識別した気候関連のリスク又は機会
- (2) 識別した気候関連のリスク又は機会に関連する企業のパフォーマンス(企業が設定した目標及び企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、当該目標の達成に向けた進捗を含む。)
- 88. 「適用基準」第51項から第55項に基づき、サステナビリティ開示基準以外の情報源から得た気候関連の指標を開示する場合、当該情報源及びその得た指標を開示しなければならない。
- 89. 企業が作成した気候関連の指標を開示する場合、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 指標の定義。これには、次の事項が含まれる。
- ① 当該指標がサステナビリティ開示基準以外の情報源から得た指標を調整したものである場合、どの情報源から得たのか、また、開示する指標がその情報源で定める指標とどのように異なるか
- ② 当該指標がサステナビリティ開示基準以外の情報源から得た指標を調整したものではない場合、その旨
- (2) 指標が絶対指標、相対指標又は定性的指標のいずれであるか
- (3) 第三者による指標の認証に関する次の情報
- ① 指標が第三者によって認証されている場合、認証者の名称
- ② 指標が第三者によって認証されていない場合、その旨
- (4) 指標の算定に用いた方法及びその算定に用いたインプット(用いた算定方法の限界及び置いた重大な仮定を含む。)
- 90. 気候関連の指標(気候関連の目標を設定し、当該目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために用いる指標を含む。)の定義又は算定方法を変更した場合、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 変更された指標に関する更新された比較対象の数値(実務上不可能である場合を除く。)
- (2) 変更の内容
- (3) 変更の理由(再定義された指標又は置き換えられた指標がより有用な情報を提供する理由を含む。)
- 91. 気候関連の指標を新たに導入した場合、そうすることが実務上不可能である場合を除き、当該指標に関する比較対象の数値を開示しなければならない。
(c) 気候関連の目標
(気候関連の目標の特定)
- 92. 戦略的目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために設定した定量的及び定性的な気候関連の目標並びに企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、これらの目標に関する情報を開示しなければならない。これらの目標には、温室効果ガス排出目標を含む(第97項から第99項参照)。目標のそれぞれについて、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 目標を設定するために用いる指標(第96項参照)
- (2) 企業が設定したか、企業が満たすことを要求されている、具体的な定量的又は定性的目標
- (3) 目標の目的(例えば、緩和、適応又は科学的根拠に基づく取組みへの準拠)
- (4) 目標が適用される企業の部分(例えば、目標が企業全体に適用されるのか、企業の一部のみ(特定の事業単位、特定の地理的地域など)に適用されるのか)
- (5) 目標が適用される期間
- (6) 進捗が測定される基礎となる期間
- (7) マイルストーン及び中間目標がある場合、その内容
- (8) 目標が定量的である場合、それが絶対量目標であるか、原単位目標であるか
- (9) 気候変動に関する最新の国際協定(その協定から生じる法域のコミットメントを含む。)を目標にどのように反映したか
- 93. 気候関連の目標について、次の事項に関する情報を開示しなければならない。
- (1) 目標のそれぞれを設定し、レビューするアプローチ
- (2) 目標のそれぞれに対する進捗をモニタリングする方法
- 94. 第93項の開示を行うにあたり、次の事項を含めなければならない。
- (1) 目標及び目標設定についての方法論が第三者によって認証されているかどうか
- (2) 目標を変更する必要がないかどうかを確認する企業のプロセス
- (3) 目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために用いる指標
- (4) 目標を変更した場合、その旨及びその内容
- 95. 気候関連の目標のそれぞれについて、次の事項に関する情報を開示しなければならない。
- (1) 気候関連の目標のそれぞれに対する企業のパフォーマンス
- (2) 企業のパフォーマンスに関するトレンド又は変化についての時系列での分析
- 96. 第92項から第95項に記述された目標を設定し、当該目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために用いる指標を識別し、開示するにあたり、産業横断的指標等(第46項参照)及び産業別の指標(第86項参照)(適用されるサステナビリティ開示基準に記述しているもの又は「適用基準」の定めを満たす他の指標を含む。)を参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。目標の達成に向けた進捗を測定するための指標を企業が作成した場合、第89項に従い、その指標についての情報を開示しなければならない。
(温室効果ガス排出目標)
- 97. 第92項から第95項に従って温室効果ガス排出目標を開示する場合、第92項から第95項に基づく開示に加え、温室効果ガス排出目標のそれぞれについて、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 7種類の温室効果ガスのうち、温室効果ガス排出目標の対象となっているもの
- (2) スコープ1温室効果ガス排出、スコープ2温室効果ガス排出及びスコープ3温室効果ガス排出のうち、温室効果ガス排出目標の対象となっているもの
- (3) 温室効果ガス排出目標は、総量(グロス)目標又は純量(ネット)目標のいずれによるものか(第98項参照)
- (4) 温室効果ガス排出目標がセクター別脱炭素アプローチを用いて算定されたかどうか
- (5) 温室効果ガス排出の純量目標がある場合、当該目標を達成するために使用する計画があるカーボン・クレジットに関する説明(第99項参照)
- 98. 温室効果ガス排出の純量目標を開示する場合、関連する総量目標を別個に開示しなければならない。
- 99. 使用する計画があるカーボン・クレジットについて説明するにあたり、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 温室効果ガス排出の純量目標を達成するために使用するカーボン・クレジットについて、当該カーボン・クレジットに依拠する方法及び依拠する程度
- (2) 当該カーボン・クレジットが検証又は認証された第三者スキームの名称
- (3) カーボン・クレジットの種類。これには、次の事項に関する情報を含む。
- ① オフセットが自然に基づくもの(自然の炭素吸収を増進させることにより大気の温室効果ガスを低減させる方法)又は技術に基づくもの(科学的な技術により大気の温室効果ガスを低減させる方法)のいずれによるものか
- ② オフセットが達成されるのは、炭素削減(現在の温室効果ガス排出源からの排出を削減すること)又は炭素除去(大気から温室効果ガスを取り出して貯留等を行うこと)のいずれによるものか
- (4) 使用する計画があるカーボン・クレジットの信頼性及び十全性を主要な利用者が理解するために必要なその他の要素(例えば、カーボン・オフセットの永続性に関する仮定)
Ⅳ.適用時期等
ⅰ.適用時期
- 100. サステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合には、本基準を含むサステナビリティ開示基準のすべての定めを適用しなければならない。
- 101. 2025年に公表された本基準(以下「2025年基準」という。)は、公表日である2025年3月5日以後終了する年次報告期間に係る気候関連開示から適用する。
- 101-2. 2026年に改正された本基準(以下「2026年改正基準」という。)は、2027年1月1日以後開始する年次報告期間に係る気候関連開示から適用する。
- ただし、2025年12月11日以後終了する年次報告期間に係る気候関連開示について、2026年改正基準を適用することができる。この選択を行う場合、その旨を開示しなければならない。
ⅱ.経過措置
(a) 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
(本基準の最初の適用)
- 102. 本基準を適用する最初の年次報告期間において、比較情報を開示しないことができる。この経過措置を適用する場合、その旨を開示しなければならない。
- 103. 本基準を適用する最初の年次報告期間においてのみ、次のいずれか又は両方の経過措置を適用することができる。この経過措置を適用する場合、その旨をそれぞれ開示しなければならない。
- (1) 本基準を適用する最初の年次報告期間の直前の年次報告期間において、温室効果ガス排出の測定に「GHGプロトコル(2004年)」又は法域の当局若しくは企業が上場する取引所が要求している方法(第49項ただし書き参照)以外の測定方法を用いていた場合、当該測定方法を用いることができる。この場合、温室効果ガス排出の測定方法及び測定アプローチについて、次の事項を開示しなければならない。
- ① 温室効果ガス排出を測定するために用いた方法
- ② ①を選択した理由
- ③ 適用した測定アプローチ
- ④ ③を適用した理由
- ⑤ ③において適用した測定アプローチが、どのように気候関連の指標及び目標に関する開示目的(第43項参照)と関連しているか
- (2) スコープ3温室効果ガス排出(第47項(3)参照)を開示しないことができる(ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示(別紙C参照)を含む。)。
- 104. 第103項の経過措置を適用した場合、その後の報告期間において比較情報として情報を表示するにあたり、第103項の経過措置を引き続き適用することができる。この経過措置を適用する場合、その旨をそれぞれ開示しなければならない。
(2026年改正基準の適用)
- 104-2. 2026年改正基準を適用する最初の年次報告期間において、実務上不可能である場合を除き、次のとおり比較情報を更新しなければならない。
- (1) 「GHGプロトコル(2004年)」の使用に関する第49項ただし書きの方法を用いることを選択した場合、又は地球温暖化係数の使用に関する第66項ただし書き若しくは第68項ただし書きの方法を用いることを選択した場合、前報告期間に当該方法を用いて測定していたものとして、前報告期間に開示した温室効果ガス排出を更新する。
- (2) 前報告期間にスコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出を開示していた場合、前報告期間に第56-4項の定めを適用していたものとしてファイナンスド・エミッションの小計を開示する。
- (3) 前報告期間にファイナンスド・エミッションの情報を産業別に分解して開示していた場合、C5項(5)又はC6項(5)の定めを適用して選択された産業分類システムを用いて、前報告期間の情報を分解する。
(b) 任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
(本基準の最初の適用)
- 105. 本基準を適用する最初の年次報告期間においてのみ、第103項(1)及び(2)のいずれか又は両方の経過措置を適用することができる。
(2026年改正基準の適用)
- 105-2. 2026年改正基準を適用する最初の年次報告期間において、比較情報を開示する場合には、実務上不可能である場合を除き、第104-2項(1)から(3)に従って比較情報を更新しなければならない。
Ⅴ.議 決
- 106. 2025年基準は、第49回サステナビリティ基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は、以下のとおりである。
川 西 安 喜(委員長)
中 條 恵 美
井 口 譲 二
川那部 留理子
菊 池 勝 也
草 野 英 哉
阪 智 香
関 口 洋 平
高 村 ゆかり
藤 本 貴 子
峰 雪 輝 史
宮 坂 充
森 洋 一 - 106-2. 2026年改正基準は、第65回サステナビリティ基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は、以下のとおりである。
川 西 安 喜(委員長)
衣 川 清 隆
山 口 奈 美
井 口 譲 二
太 田 稔
川那部 留理子
草 野 英 哉
阪 智 香
関 口 洋 平
芹 口 尚 子
峰 雪 輝 史
山 我 哲 平
別紙A:気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチ
本別紙について
- A1. 本別紙は、第33項から第36項に定める気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチに関して、追加の定めを示すことを目的としており(第37項参照)、本基準を構成するものである。
- A2. 本別紙の内容は、IFRS S2号「気候関連開示」B1項からB18項を基礎としている。
Ⅰ.気候レジリエンス
- A3. 第33項は、気候レジリエンスの評価にあたり、企業の状況に見合ったアプローチを用いて、気候関連のシナリオ分析を用いることを要求している。また、第34項は、合理的で裏付け可能な情報を考慮することができるような気候関連のシナリオ分析に対するアプローチを用いることを要求している。A4項からA20項は、企業の気候レジリエンスを評価するために、企業がどのようにシナリオ分析を用いるかについて、次のガイダンスを提供している。
- (1) A4項からA9項は、企業の状況を評価するにあたり考慮しなければならない要因を示している。
- (2) A10項からA17項は、気候関連のシナリオ分析に対する適切なアプローチを決定するにあたり考慮しなければならない要因を示している。
- (3) A18項からA20項は、時間の経過とともに気候関連のシナリオ分析に対するアプローチを決定するにあたり考慮する追加的な要因を示している。
Ⅱ.企業の状況の評価
- A4. 気候関連のシナリオ分析を実施する場合、企業の状況に見合った気候関連のシナリオ分析に対するアプローチを用いなければならない(A5項参照)。企業の状況を評価するにあたり、次の事項を考慮しなければならない(第36項参照)。
- (1) 気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャー(A6項及びA7項参照)
- (2) 気候関連のシナリオ分析のために企業が利用可能なスキル、能力及び資源(A8項及びA9項参照)
- A5. 気候関連のシナリオ分析を実施するたびに、企業の状況を評価しなければならない。例えば、戦略計画サイクルと整合するように、3年ごとに気候関連のシナリオ分析を実施している場合(A20項参照)、気候関連のシナリオ分析を実施するにあたり、その時点での気候関連のリスク及び機会に対するエクスポージャー並びに利用可能なスキル、能力及び資源を再度考慮することが要求される。
ⅰ.気候関連のリスク及び機会に対するエクスポージャー
- A6. 気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチを決定するにあたり、企業の状況の評価において気候関連のリスク及び機会に対するエクスポージャーを考慮しなければならない(第36項(1)参照)。この考慮は、気候関連のシナリオ分析に対する特定のアプローチを用いることによる潜在的な便益を理解するうえで、必要不可欠な文脈を提供するものである。例えば、気候関連のリスクに対するエクスポージャーが大きい企業であれば、気候関連のシナリオ分析に対する、より定量的又は技術的に洗練されたアプローチは、当該企業及び主要な利用者にとって、より大きな便益をもたらすこととなる。一方、企業がさらされている気候関連のリスク及び機会がほとんどないか、比較的深刻度が低い場合、主要な利用者は、定量的又は技術的に洗練された気候関連のシナリオ分析の便益を受ける可能性は低くなる。つまり、他のすべての条件が同じであれば、気候関連のリスク又は機会に対するエクスポージャーが大きい企業ほど、より技術的に洗練された形の気候関連のシナリオ分析が要求されていると判断する可能性が高くなる。
- A7. 本基準は、企業がさらされている気候関連のリスク及び機会の識別(第17項から第19項参照)並びにそれらのリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために企業が用いるプロセスに関する情報の開示(第41項参照)を要求している。第19項及び第41項に従い開示する情報は、気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャーを考慮するにあたり、情報をもたらすことができる。
ⅱ.利用可能なスキル、能力及び資源
- A8. 気候関連のシナリオ分析に対して用いる適切なアプローチを決定するにあたり、利用可能なスキル、能力及び資源を考慮しなければならない(第36項(2)参照)。これらのスキル、能力及び資源には、内部及び外部の両方のスキル、能力及び資源が含まれる場合がある。企業の利用可能なスキル、能力及び資源は、気候関連のシナリオ分析に対する特定のアプローチによって要求される潜在的なコスト及び取組みのレベルを企業が検討するうえで情報をもたらすための文脈を提供する。例えば、気候レジリエンスを評価するために気候関連のシナリオ分析の使用を探究し始めたばかりの企業の場合、過大なコストや労力をかけずに気候関連のシナリオ分析のための定量的又は技術的に洗練されたアプローチを用いることができないことがある。誤解を避けるために記すと、企業が資源を利用可能である場合、必要なスキル及び能力を入手又は開発するための投資を行うことができる。
- A9. 気候関連のシナリオ分析は、資源集約的である場合があり、反復的な学習プロセスを通じて、複数の計画サイクルにわたって開発され、精緻化される場合がある。企業が気候関連のシナリオ分析を繰り返すに従い、時間の経過とともに気候関連のシナリオ分析に対するアプローチを強化することを可能にするスキル及び能力が開発される可能性が高い。例えば、企業が気候関連のシナリオ分析をまだ用いていない場合又は気候関連のシナリオ分析があまり用いられていない産業に参加している場合、スキル及び能力を開発するために、より多くの時間を必要とすることがある。対照的に、気候関連のシナリオ分析が確立された実務であるような産業(例えば、採掘及び鉱物加工)に属している場合、経験を通じて、スキル及び能力を強化していることが見込まれる。
Ⅲ.適切なアプローチの決定
- A10. 気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチは、合理的で裏付け可能な情報を考慮することができるようなものとしなければならない(第34項参照)。アプローチの決定は、気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャー(A6項及びA7項参照)並びに企業が利用可能なスキル、能力及び資源(A8項及びA9項参照)の評価に基づいて行わなければならない。そのような決定をするにあたり、次の事項を検討しなければならない(第35項参照)。
- (1) 気候関連のシナリオ分析に対して用いるインプットの選択(A13項からA15項参照)
- (2) 気候関連のシナリオ分析の実施方法に関する分析上の選択(A16項及びA17項参照)
- A11. 合理的で裏付け可能な情報には、過去の事象、現在の状況及び将来の状況の予想に関する情報が含まれる。また、定量的又は定性的情報並びに外部の情報源から入手した情報又は内部で所有若しくは開発した情報も含まれる。
- A12. 合理的で裏付け可能な情報を考慮することができるように、インプット及び分析上の選択の組み合わせを決定するために判断を用いることが必要となる。要求される判断の程度は、詳細な情報の利用可能性に依存する。時間軸が長くなり、詳細な情報の利用可能性が低下するに従い、要求される判断の程度は高くなる。
ⅰ.インプットの選択
- A13. 企業が気候関連のシナリオ分析に対して用いるインプットを選択するにあたり、合理的で裏付け可能な情報(シナリオ、変数及びその他のインプットを含む。)を考慮しなければならない。シナリオ分析に用いられるインプットは、定量的又は定性的情報並びに外部の情報源から入手又は内部で開発した情報が含まれる場合がある。例えば、権威ある情報源から一般に利用可能な気候関連のシナリオで、将来のトレンド及びさまざまなもっともらしい結果に向けた道筋を記述しているものは、企業が過大なコストや労力をかけずに利用可能とみなされる。
- A14. 気候関連のシナリオ分析に対して用いるシナリオ、変数及びその他のインプットを選択するにあたり、例えば、権威ある情報源から一般にかつ自由に利用可能な、1つ以上の気候関連のシナリオ(国際的なシナリオ及び地域的なシナリオを含む。)を用いる場合がある。特定のシナリオ又は一連のシナリオを用いるにあたり、合理的で裏付け可能な基礎を有していなければならない。例えば、排出が規制されている(又は将来規制される可能性が高い)法域に事業が集中している場合、低炭素経済への秩序ある移行又は気候変動に関する最新の国際協定に対する関連する法域のコミットメントと整合的なシナリオを用いて分析を実施することが適切であると判断することがある。また、例えば、気候関連の物理的リスクに対するエクスポージャーが大きい場合、現在の政策を考慮した地域に特化した気候関連のシナリオを用いて分析を実施することが適切であると判断することがある。
- A15. 選択されたインプットが合理的で裏付け可能であるかどうかを検討するにあたり、企業が識別した気候関連のリスク及び機会を考慮し、気候関連の変化、進展及び不確実性に対する企業の戦略及びビジネス・モデルのレジリエンスに関する事項を開示することを要求している第31項の目的を考慮しなければならない。これは、企業の気候関連のシナリオ分析に対するインプットは、企業の状況、例えば、企業が行う特定の活動及びそれらの活動の地理的な所在地に関連したものでなければならないことを意味する。
ⅱ.分析上の選択の実施
- A16. 企業のレジリエンスの評価は、気候関連のシナリオ分析に対する個々のインプットのみならず、分析を実施するにあたりそれらのインプットを組み合わせて得られる情報によっても情報がもたらされる。合理的で裏付け可能な情報を考慮することができるように、分析上の選択(例えば、定性的な分析を用いるか、定量的なモデル化を用いるか)を優先順位付けしなければならない。例えば、企業が、過大なコストや労力をかけずに、ある結果(例えば、摂氏1.5度の結果)に関連して複数の炭素価格の道筋を組み込むことができる場合、そのようなアプローチが企業のリスク・エクスポージャーによって正当化されると仮定すれば、この分析は、企業のレジリエンスの評価を強化する可能性が高い。
- A17. 多くの場合、定量的情報によって、気候レジリエンスについて、より頑健な評価を実施することができるようになる。しかし、定性的情報(シナリオの記述を含む。)は、単独でも定量的データと組み合わせても、企業のレジリエンスの評価に関して合理的で裏付け可能な基礎を提供することがある。
Ⅳ.追加の考慮事項
- A18. 気候関連のシナリオ分析は、実務が発展途上であるため、企業が用いるアプローチは時間の経過とともに変化する可能性が高い。A4項からA9項において記述しているとおり、気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチは、気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャー並びにシナリオ分析のために企業が利用可能なスキル、能力及び資源を含む、企業の具体的な状況に基づいて決定しなければならない。また、それらの状況は、時間の経過とともに変化する可能性が高い。したがって、企業が気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチは、報告期間又は戦略計画サイクルの間で同じである必要はない(A20項参照)。
- A19. 企業の状況に照らして適切なアプローチである場合、気候関連のシナリオ分析に対して用いる定性的なシナリオの記述など、より単純なアプローチを用いる場合がある。例えば、企業が現在、定量的な気候関連のシナリオ分析を実施するスキル、能力又は資源を有していないものの、気候関連のリスクに対するエクスポージャーが大きい場合、最初は気候関連のシナリオ分析に対してより単純なアプローチを用いることがあるが、経験を通じて能力を積み重ね、時間の経過とともに、気候関連のシナリオ分析に対してより高度で定量的なアプローチを適用することになる。気候関連のリスク及び機会に対するエクスポージャーが大きく、必要なスキル、能力又は資源を利用できる企業は、気候関連のシナリオ分析に対して、より高度で定量的なアプローチを適用することが要求される。
- A20. 第39項は、報告期間の末日における気候レジリエンスに関する情報を開示することを企業に要求しているが、気候関連のシナリオ分析は、複数年の戦略計画サイクル(例えば、3年から5年ごと)を含む戦略計画サイクルに沿って実施する場合がある。したがって、企業が毎年、シナリオ分析を実施していない場合、報告期間によっては、第38項に従った企業の開示が、前報告期間から変更されないことがある。気候関連のシナリオ分析は、最低限、戦略計画サイクルに沿って更新しなければならない。しかし、気候の不確実性が企業のビジネス・モデル及び戦略に与える影響に関して、更新された洞察を反映するため、企業のレジリエンスの評価は毎年実施することになると考えられる。したがって、第39項に従った企業の開示、すなわち、企業のレジリエンスの評価の結果は、報告期間ごとに更新しなければならない。
別紙B:スコープ3測定フレームワーク
本別紙について
- B1. 本別紙は、スコープ3温室効果ガス排出の開示を作成するためのガイダンスとして、第70項に定めるスコープ3測定フレームワークの詳細について定めるものであり、本基準を構成するものである。
- B2. 本別紙の内容は、IFRS S2号「気候関連開示」B42項からB54項を基礎としている。
- B3. スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたって用いる要素及び仮定(第63項及び第69項参照)に組み込むデータを第70項に従い決定する場合、また、第70項における特性に基づく各要素間のトレードオフを考慮する場合、経営者による判断が求められる。例えば、第70項における「適時のデータ」と「バリュー・チェーンにおける活動及び温室効果ガス排出が行われた法域、並びに当該活動を遂行する方法を忠実に表現するデータ」との間のトレードオフを考慮することが必要な場合がある。頻繁には公表されない古いデータは、特定の活動及びその温室効果ガス排出を忠実に表現するものであるとみなされる場合がある。
Ⅰ.直接測定に基づくデータ
- B4. スコープ3温室効果ガス排出を定量化するために、直接測定と見積りの2つの方法が使用される。他のすべての条件が同じであれば、これら2つのうち、直接測定を優先しなければならない。
- B5. 直接測定は、温室効果ガス排出を直接モニタリングすることをいい、理論的には、最も正確な証拠を提供する。しかし、スコープ3温室効果ガス排出の直接測定には課題があるため、スコープ3温室効果ガス排出は見積りを含むものと見込まれる。
- B6. スコープ3温室効果ガス排出を見積るにあたっては、仮定及び適切な要素に基づきデータを概算することを伴う。見積りを使用してスコープ3温室効果ガス排出を測定する場合、次の2種類の要素を使用する可能性が高い。
- (1) 温室効果ガス排出をもたらす企業の活動を表現するデータ(活動量)。例えば、バリュー・チェーン内の製品の輸送を表現するために、移動距離を活動量として使用する場合がある。
- (2) 活動量を温室効果ガス排出に変換する排出係数。例えば、排出係数を使用して、移動距離(活動量)を温室効果ガス排出データに変換する。
Ⅱ.1次データ
- B7. 報告企業のスコープ3温室効果ガス排出の測定は、報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動から直接入手されたデータ(1次データ)、報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動から直接入手されないデータ(2次データ)又はこれらの組み合わせに基づくことになる。
- B8. 報告企業のスコープ3温室効果ガス排出の測定にあたり、1次データは、2次データに比べ、報告企業のバリュー・チェーンの活動及び温室効果ガス排出をより表現する可能性が高い。他のすべての条件が同じであれば、これら2つのうち、1次データの使用を優先しなければならない。
- B9. スコープ3温室効果ガス排出の1次データには、報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動に関する、サプライヤー又はバリュー・チェーン上の他の企業から提供されたデータを含む。例えば、1次データは、検針、公共料金の請求書又は報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動を表現する他の活動から得られる場合がある。また、1次データは、例えば、報告企業の記録を通じて内部から収集される場合もあれば、購入された製品又はサービスに関するサプライヤー固有の排出係数のように、サプライヤー及び他のバリュー・チェーンのパートナーといった外部から収集される場合もある。報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動からのデータは、報告企業のバリュー・チェーンの特定の活動のより正確な表現を提供するものであるため、報告企業のスコープ3温室効果ガス排出の測定において、より良い基礎を提供することになる。
- B10. スコープ3温室効果ガス排出の2次データは、報告企業のバリュー・チェーン内の特定の活動から直接入手されないデータである。2次データは、第三者のデータ・プロバイダーから供給されることが多く、産業平均データ(例えば、公開されたデータベース、政府統計、文献調査及び産業団体からのもの)を含む。また、2次データは、活動又は排出係数を概算するために使用されるデータを含む。さらに、2次データは、別の活動の温室効果ガス排出を見積るために使用される、特定の活動からの1次データ(代替データ)を含む。
Ⅲ.バリュー・チェーンにおける活動及び温室効果ガス排出が行われた法域、並びに当該活動を遂行する方法を忠実に表現する適時のデータ
- B11. 報告企業が2次データを使用する場合、報告企業の活動から1次データ(例えば、従業員が移動時に使用した、特定の航空機モデル、移動距離及び搭乗クラス)を入手したうえで、当該1次データについて、移動(この例の場合は、航空機による移動)による温室効果ガス排出の見積りに変換するために、これらの活動から生じる温室効果ガス排出を表現する2次データを使用する場合がある。
- B12. また、一部の法域では、特定の活動を遂行する方法に関連して、2次データが年次で収集されるため、当該データは報告企業の現在の実務を表現するものとなる可能性が高い。しかし、2次データの一部は、報告企業の報告期間とは異なる報告期間に収集された情報に基づく。
Ⅳ.検証されたデータ
- B13. 検証されたデータは、主要な利用者に、情報が完全で、中立的で、正確であるという自信を与えることができる。
- B14. 検証されたデータには、内部又は外部で検証されたデータが含まれる。検証は、現場での確認、計算のレビュー又は他の情報源とのデータの照合を含む、いくつかの方法で行われることがある。しかし、場合によっては、過大なコストや労力をかけずに、報告企業のスコープ3温室効果ガス排出を検証することができないことがある。例えば、データ量が多い場合や、バリュー・チェーンが多くの階層から構成されるため報告企業が直接やり取りをしない企業からデータを入手する場合、検証されたデータの完全なセットを入手できないことがある。このような場合、検証されていないデータを使用することが必要となることがある。
別紙C:ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示
本別紙について
- C1. 本別紙は、第57項に定めるファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示の詳細について定めることを目的としており、本基準を構成するものである。
- C2. 本別紙の内容は、IFRS S2号「気候関連開示」B59項からB63A項を基礎としている。
Ⅰ.ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示
- C3. 報告企業が次の1つ以上の活動を行う場合、本別紙に定める追加的な情報を開示しなければならない。
- (1) 資産運用に関する活動
- (2) 商業銀行に関する活動
- (3) 保険に関する活動
Ⅱ.資産運用
- C4. 報告企業が資産運用に関する活動を行う場合、次の事項を開示しなければならない。
- (1) スコープ1温室効果ガス排出量、スコープ2温室効果ガス排出量及びスコープ3温室効果ガス排出量に分解された、ファイナンスド・エミッションの絶対総量
- (2) (1)のファイナンスド・エミッションに関連する運用資産残高(AUM)の総額(関連する財務諸表の表示に用いる通貨で表す。)
- (3) 運用資産残高(AUM)の総額に対する(2)の割合。当該割合が100%未満の場合、ファイナンスド・エミッションに関連する資産に、運用資産残高(AUM)の一部を含めていないことについて説明する情報(含めていない資産の種類及び関連する運用資産残高(AUM)の金額を含む。)
- (4) ファイナンスド・エミッションを算定するために用いた方法(投資の規模に関連して、企業に帰属する排出量を決定するために用いた配分方法を含む。)
Ⅲ.商業銀行
- C5. 報告企業が商業銀行に関する活動を行う場合、次のようにしなければならない。
- (1) ファイナンスド・エミッションの絶対総量について、次のように開示しなければならない。
- ① スコープ1温室効果ガス排出量、スコープ2温室効果ガス排出量及びスコープ3温室効果ガス排出量に分解する。
- ② 相手方を産業別に分解する。
- ③ 資産クラス別に分解する。この場合、次の資産クラスを含めなければならない。
- ア. 融資
- イ. プロジェクト・ファイナンス
- ウ. 債券
- エ. 株式投資
- オ. 未実行のローン・コミットメント
- ④ ③アからオに掲げる資産クラス以外の資産クラスについてファイナンスド・エミッションを算定し、これを開示する場合、当該追加の資産クラスを含めることが主要な利用者の意思決定に関連性がある情報を提供することとなる理由について説明する。
- (2) グロス・エクスポージャーについて、次のように開示しなければならない。この際、グロス・エクスポージャーは、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準にかかわらず、貸借対照表価額(該当ある場合、貸倒引当金を控除する前の金額)を開示しなければならない。
- ① 相手方を産業別に分解する。
- ② 次の資産クラスに分解する。
- ア. 融資
- イ. プロジェクト・ファイナンス
- ウ. 債券
- エ. 株式投資
- オ. 未実行のローン・コミットメント
- ③ 未実行のローン・コミットメントに関するグロス・エクスポージャーは、実行済みのローン・コミットメントと区別して、コミットメントの総額を開示する。
- (3) グロス・エクスポージャーについて、次の事項を開示しなければならない。この際、グロス・エクスポージャーの貸借対照表価額に、リスクを軽減するための取組みの影響が反映されている場合は、それらの影響を含めてはならない。
- ① グロス・エクスポージャーの総額に対する、ファイナンスド・エミッションに関連するグロス・エクスポージャーの割合
- ② ①の割合が100%未満の場合、ファイナンスド・エミッションに関連する資産にグロス・エクスポージャーの一部を含めていないことについて説明する情報(含めていない資産の種類を含む。)
- ファイナンスド・エミッションに関連するグロス・エクスポージャーのうち、未実行のローン・コミットメントの割合
- (4) ファイナンスド・エミッションを算定するために用いた方法(グロス・エクスポージャーの規模に関連して、企業に帰属する排出量を決定するために用いた配分方法を含む。)を開示しなければならない。
- (5) C5項(1)②及び(2)①に従い、ファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーを産業別に分解するにあたっては、気候関連の移行リスクに対するエクスポージャーを理解するうえで有用な情報をもたらす方法で相手方を産業別に分類することができる産業分類システムを選択しなければならない。産業分類システムの選択にあたり、他のすべての条件が同じであれば、企業固有の産業分類システムよりも、一般的に用いられている産業分類システムを選択することを優先しなければならない。
- なお、商業銀行及び保険に関する活動の両方を行う企業は、商業銀行と保険とで同じ産業分類システムを用いる必要はない。
- (6) C5項(5)に従い、産業別の分解のために選択する産業分類システムについて、次の事項を開示しなければならない。
- ①選択した産業分類システム
- ②産業分類システムの選択がC5項(5)の定めをどのように満たしているのかを理解するための情報
Ⅳ.保険
- C6. 報告企業が保険に関する活動を行う場合、次のようにしなければならない。
- (1) ファイナンスド・エミッションの絶対総量について、次のように開示しなければならない。
- ① スコープ1温室効果ガス排出量、スコープ2温室効果ガス排出量及びスコープ3温室効果ガス排出量に分解する。
- ② 相手方を産業別に分解する。
- ③ 資産クラス別に分解する。この場合、次の資産クラスを含めなければならない。
- ア. 融資
- イ. 債券
- ウ. 株式投資
- エ. 未実行のローン・コミットメント
- ④ ③アからエに掲げる資産クラス以外の資産クラスについてファイナンスド・エミッションを算定し、これを開示する場合、当該追加の資産クラスを含めることが主要な利用者の意思決定に関連性がある情報を提供することとなる理由について説明する。
- (2) グロス・エクスポージャーについて、次のように開示しなければならない。この際、グロス・エクスポージャーは、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準にかかわらず、貸借対照表価額(該当ある場合、貸倒引当金を控除する前の金額)を開示しなければならない。
- ① 相手方を産業別に分解する。
- ② 次の資産クラスに分解する。
- ア. 融資
- イ. 債券
- ウ. 株式投資
- エ. 未実行のローン・コミットメント
- ③ 未実行のローン・コミットメントに関するグロス・エクスポージャーは、実行済みのローン・コミットメントと区別して、コミットメントの総額を開示する。
- (3) グロス・エクスポージャーについて、次の事項を開示しなければならない。
- ① グロス・エクスポージャーの総額に対する、ファイナンスド・エミッションに関連するグロス・エクスポージャーの割合
- ② ①の割合が100%未満の場合、ファイナンスド・エミッションに関連する資産にグロス・エクスポージャーの一部を含めていないことについて説明する情報(含めていない資産の種類を含む。)
- ③ ファイナンスド・エミッションに関連するグロス・エクスポージャーのうち、未実行のローン・コミットメントの割合
- (4) ファイナンスド・エミッションを算定するために用いた方法(グロス・エクスポージャーの規模に関連して、企業に帰属する排出量を決定するために用いた配分方法を含む。)を開示しなければならない。
- (5) C6項(1)②及び(2)①に従い、ファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーを産業別に分解するにあたっては、気候関連の移行リスクに対するエクスポージャーを理解するうえで有用な情報をもたらす方法で相手方を産業別に分類することができる産業分類システムを選択しなければならない。産業分類システムの選択にあたり、他のすべての条件が同じであれば、企業固有の産業分類システムよりも、一般的に用いられている産業分類システムを選択することを優先しなければならない。
- なお、商業銀行及び保険に関する活動の両方を行う企業は、商業銀行と保険とで同じ産業分類システムを用いる必要はない。
- (6) C6項(5)に従い、産業別の分解のために選択する産業分類システムについて、次の事項を開示しなければならない。
- ①選択した産業分類システム
- ②産業分類システムの選択がC6項(5)の定めをどのように満たしているのかを理解するための情報
Ⅴ.(削 除)
- C7. (削 除)
- C8. (削 除)
結論の背景
経 緯
我が国最初のサステナビリティ開示基準の公表
- BC1. 当委員会は、国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB」という。)が国際的なサステナビリティ開示基準を開発するために設立されたことを受け、我が国におけるサステナビリティ開示基準を開発すること等を目的として、2022年7月に設立された。
- BC2. ISSBは、国際的なサステナビリティ開示基準の開発にあたり、世界的に統一的な基準が適用されることを望む関係者の喫緊のニーズを踏まえ、白紙の状態から基準の開発を始めるのではなく、既存の基準やフレームワークを基礎とすることとした。ISSBは、自ら開発する基準を「グローバル・ベースライン」と位置付け、各法域において追加の開示要求を定めることができるとした。
- BC3. 2023年6月、ISSBは、最初のIFRSサステナビリティ開示基準となるIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(以下「IFRS S1号」という。)及びIFRS S2号「気候関連開示」を公表した。
- BC4. 当委員会は、高品質で国際的に整合性のあるサステナビリティ開示基準を開発するにあたり、グローバル・ベースラインとされるIFRSサステナビリティ開示基準と整合性のあるものとすることが関係者にとって有用であると考えた。そのため、我が国のサステナビリティ開示基準においても、IFRS S1号に相当する基準及びIFRS S2号に相当する基準の開発に取り組むこととした。
- BC5. その後、当委員会は、サステナビリティ開示基準の「開発にあたっての基本的な方針」(BC12項及びBC13項参照)を定め、当該基本的な方針に基づき我が国におけるサステナビリティ開示基準の開発に関する審議を行い、その結果を2024年3月にサステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」、サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般開示基準(案)」及びサステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」(以下あわせて「2024年3月公開草案」という。)として公表し広く意見を求めた。
- BC6. 当委員会は、2024年3月公開草案に対して寄せられた意見を踏まえ検討を行った。その結果、2024年3月公開草案の提案を修正することとした内容のうち、指標の報告のための算定期間に関する論点については、当委員会が改めて意見を求めることが適切と考え、2024年11月にサステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案第2号及びサステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第3号「指標の報告のための算定期間に関する再提案」(以下「2024年11月公開草案」という。)として再提案を公表し広く意見を求めた。
- BC7. その後、当委員会は、2024年3月公開草案及び2024年11月公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、これらの公開草案の内容を一部修正したうえで、2025年3月に我が国最初のサステナビリティ開示基準(2025年基準)を公表した。
- BC8. 本基準は、IFRS S2号に相当する内容を定めている。
2026年改正基準の公表
- BC8-2. ISSBでは、IFRS S1号及びIFRS S2号の公表後、これらの基準の適用を支援するための活動を行っている。その活動を通じて識別された課題に対応するため、2025年12月にIFRS S2号の修正「温室効果ガス排出の開示に対する修正―IFRS S2号に対する修正」(以下「2025年公表のIFRS S2号の修正」という。)を公表した。また、このIFRS S2号の修正に伴う結果的修正として、「SASBスタンダード」の修正を公表した。
- BC8-3. 2025年公表のIFRS S2号の修正では、以下の内容に関する修正が含まれている。
- (1) ファイナンスド・エミッション以外のスコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出の測定及び開示を除外することができるとする定めの追加
- (2) 産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報を開示するにあたって、「世界産業分類基準」(以下「GICS」という。)を用いるとする定めの見直し
- (3) 「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を用いることができる範囲の明確化
- (4) 地球温暖化係数について、法域の当局又は企業が上場する取引所が、異なる地球温暖化係数を用いることを企業の全部又は一部に対して要求している場合、企業のその部分について、当該異なる地球温暖化係数を用いることができるとする定めの追加
- BC8-4. 当委員会は、「適用基準」BC19項(1)に記載の基準公表後の対応方針に従って、2025年公表のIFRS S2号の修正の公表に伴う本基準における取扱いについて、検討を行うこととした。検討にあたっては、IFRSサステナビリティ開示基準との整合性を維持する観点から、原則として2025年公表のIFRS S2号の修正における要求事項を本基準に取り入れることとした。この際、ISSBによってIFRS S2号の修正に伴う結果的修正として「SASBスタンダード」が修正されたことを踏まえて、「適用基準」において、「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源として定めている「SASBスタンダード」の参照先を最新のものに改正することについて、検討を行うこととした。
- BC8-5. 当委員会では、2027年3月期の期首からサステナビリティ開示基準の適用を開始する企業のニーズを考慮し、2026年3月末までに改正が確定するように検討を進めることを目標として審議を行った。
- BC8-6. また、当委員会は、検討の結果としてサステナビリティ開示基準を改正する場合には、2025年に我が国最初のサステナビリティ開示基準公表後、初めての改正になることを踏まえ、本基準、「適用基準」及び「一般基準」のそれぞれについて、必要と考えられる文言の修正について審議を行い、その検討結果についても公開草案に含めることとした。
- BC8-7. 当委員会は、2025年12月に、これらの審議における検討の結果について、「温室効果ガス排出の開示に対する改正案」(以下「2025年12月公開草案」という。)として、サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案第3号「サステナビリティ開示基準の適用(案)」、サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第4号「一般開示基準(案)」及びサステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第5号「気候関連開示基準(案)」を公表し、広く意見を求めた。
- BC8-8. 2026年改正基準は、2025年12月公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、2025年12月公開草案の内容を一部修正したうえで公表するに至ったものである。
適用対象企業
- BC9. 「適用基準」BC8項からBC10項では、同基準の適用対象企業について記述している。本基準の適用対象企業の考え方は、「適用基準」と同様である。
サステナビリティ開示基準の構成
- BC10. 「適用基準」BC11項からBC15項では、サステナビリティ開示基準の構成について記述している。
- BC11. IFRSサステナビリティ開示基準では、IFRSサステナビリティ開示基準に従ってサステナビリティ関連財務開示を作成し、報告するにあたり、IFRS S1号を適用しなければならないとされており、他のIFRSサステナビリティ開示基準に定めがない場合には、IFRS S1号の内容が要求されるとされている。この点、サステナビリティ開示基準においては、IFRS S1号のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関して開示すべき事項(以下「コア・コンテンツ」という。)以外の要求事項に相当する定めについては「適用基準」において常に適用することを要求しており、また、IFRS S1号のコア・コンテンツに関する要求事項でIFRS S2号に同様の要求事項がないものについては、本基準において必要な定めを繰り返し定めている。したがって、本基準は、気候関連開示に関するコア・コンテンツの定めについて、本基準を適用すれば「一般基準」の定めを確認する必要がないように記述している。
開発にあたっての基本的な方針
- BC12. 「適用基準」BC16項では、サステナビリティ開示基準の開発にあたっての基本的な方針について記述している。
- BC13. 本基準の定めについては、この基本的な方針のもとで開発しており、基本的にIFRS S2号の内容を取り入れている。本基準の結論の背景は、次の内容を中心に記述しており、IFRS S2号の結論の根拠については詳述していない。
- (1) IFRS S2号に要求事項がないものについて当委員会において定めを置くこととした項目
- (2) IFRS S2号の要求事項について当委員会において選択肢を追加したうえで本基準に取り入れることとした項目
本基準公表後の対応
- BC14. 「適用基準」BC18項及びBC19項では、基準公表後の対応について記述している。本基準についても、同様の対応を行う。
目 的
- BC15. 本基準は、財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な、当該企業の気候関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めることを目的としている(第1項参照)。
- BC16. 本基準の目的は、IFRS S2号の目的と整合している。IFRS S2号は、気候関連のリスク及び機会に関して開示すべき事項について定めている。
開示基準
Ⅰ.範 囲
ⅰ.本基準以外のサステナビリティ開示基準との関係
- BC17. 当委員会は、本基準を公表すると同時に「適用基準」及び「一般基準」を公表した。本基準と「適用基準」及び「一般基準」とは一体のものであり、これらは同時に適用しなければならないとしている(第100項参照)。
- BC18. 「適用基準」は、サステナビリティ開示基準に準拠したサステナビリティ関連財務開示を作成し、報告する場合において、基本となる事項を示すことを目的としている(「適用基準」第1項)。
- BC19. 「一般基準」は、財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な、当該企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めることを目的としている(「一般基準」第1項)。本基準は、気候関連開示に関するコア・コンテンツの定めについて、本基準を適用すれば「一般基準」の定めを確認する必要がないように記述している(BC11項参照)。
- BC20. 本基準は、企業がさらされている気候関連のリスク(気候関連の物理的リスク及び気候関連の移行リスクを含む。)及び企業が利用可能な気候関連の機会に関連する、より具体的な定めを置いている。このため、本基準は、そのような気候関連のリスク及び機会に適用しなければならないとしている(第3項参照)。
ⅱ.「重要性がある」
- BC21. 「適用基準」は、「重要性がある」という用語について、「サステナビリティ関連財務開示の文脈において、ある情報について、それを省略したり、誤表示したり、不明瞭にしたりした場合に、財務諸表及びサステナビリティ関連財務開示を含む、特定の報告企業に関する財務情報を提供する当該報告書に基づいて財務報告書の主要な利用者が行う意思決定に影響を与えると合理的に見込み得ること」と定義している(第7項(6)参照、「適用基準」第4項(7))。
- BC22. 「適用基準」は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関して、重要性がある情報を開示しなければならないとしている(「適用基準」第48項)。また、同基準は、たとえサステナビリティ開示基準において、具体的な開示項目を列挙していたり、最低限開示すべき事項を定めていたりする場合であっても、情報に重要性がないときには、これを開示する必要はないとしている(「適用基準」第22項)。このため、本基準の定めにより求められている情報(具体的な開示項目を列挙していたり、最低限開示すべき事項を定めていたりする場合を含む。)であっても、重要性がないときには、当該情報を開示する必要はないと考えられる。
ⅲ.気候関連のリスク及び機会
- BC23. 本基準が適用される気候関連のリスクは、気候関連の物理的リスク(第4項(2)参照)と気候関連の移行リスク(第4項(3)参照)とに分類される。これらの気候関連のリスクの分類は、金融安定理事会の「気候関連財務開示に関するタスクフォース」(以下「TCFD」という。)による提言で用いられたものと整合的である。
- BC24. 気候関連の物理的リスクには、急性の物理的リスクと慢性の物理的リスクがある。
- (1) 急性の物理的リスクは、極端な気温変化、降雨などの事象によって生じると考えられる。例えば、異常気温、台風又は豪雨は、事業、施設、サプライ・チェーン、輸送ニーズ又は従業員の安全に影響を与え、結果として企業のキャッシュ・フロー、当該企業のファイナンスへのアクセス又は資本コストに影響を与える可能性がある。
- (2) 慢性の物理的リスクは、平均気温の上昇、降雨パターンの変化、海面の上昇など、より長期的な要因から生じると考えられる。慢性的なリスクは、例えば、海面上昇による事業又は施設に対する影響など、より長期的な財務的影響をもたらす可能性がある。
- BC25. 気候関連の移行リスクは、地球温暖化を抑制し、低炭素経済への移行を目的とした政策、法律、技術及び市場の変化に関連することが考えられる。低炭素経済への移行には、例えば、化石燃料エネルギー及び関連する物理的資産から離れる動きのほか、コストを低減し、よりクリーンでエネルギー効率の高い技術の活用を増加又は加速させる取組みが含まれる可能性がある。市場の変化には、温室効果ガス排出を最小限にすることを目的とした新たな規制による変化や、低炭素の製品及びサービスを選好する市場のニーズの変化が含まれる可能性がある。
移行リスクは、発生する変化の性質、速度及び焦点に応じて、企業に影響を与える程度が異なる場合がある。 - BC26. 気候関連の物理的リスク及び移行リスクを管理する方法として、「緩和」及び「適応」という考え方がある。
「緩和」は、主として移行リスクに関連するものであり、温室効果ガス排出に対し、炭素削減又は炭素吸収などの対応を行うこととされることが多いと考えられる。例えば、温室効果ガス排出を削減する新製品や新サービスを導入するために、新技術を採用したりビジネス・モデルを変更したりすることが考えられる。
一方、「適応」は、主として物理的リスクに関連するものであり、既に起こりつつある気候変動の現在の及び予想される影響の両方を、防止又は軽減するための企業の備えや、気候変動により変化した気候パターンに即したビジネスを行うこととされることが多いと考えられる。例えば、物理的リスクに対するレジリエンスを改善するために、インフラに投資する場合などが考えられる。 - BC27. 気候関連の機会については、例えば、消費者のニーズ又は選好の変化に応じて、自社ブランドの評判を高める新製品及び新サービスを開発することなどが考えられる。気候関連のリスクと同様に、気候関連の機会は、企業が事業を営んでいる地域、市場及び産業によって異なると考えられる。
- BC28. 気候変動の影響は、広範囲にわたり、相互に関連しながら、企業に異なる影響を与えることが考えられる。企業に影響を与える可能性のある気候関連のリスク及び機会を正確に網羅的に定義することは不可能であることから、本基準は、何が「気候関連」であるのかを明示的に定めていない。
- BC29. 本基準は、例えば、生物多様性の喪失、森林破壊及び気候関連の社会的影響などについて、具体的な定めを明示的に設けていないものの、当該情報が主要な利用者にとって重要性があると企業が判断する場合には、追加的な情報を開示しなければならない(「適用基準」第21項)。例えば、飲料製造業を営む企業が、気候変動により水ストレスが高い地域において利用できる水が減少する可能性があるため、企業の戦略、事業、資本計画及び資産価値に与える影響に関する情報に重要性があると判断した場合には、気候関連のリスク又は機会に関する情報として開示しなければならないと考えられる。
ⅳ.任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
- BC30. 本基準では、一部の事項について、任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合における別段の取扱いを定めている。任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合とは、法令の定めに基づき本基準を適用するのではなく、企業が自発的にサステナビリティ開示基準のすべての定めに準拠した開示を行う場合をいい、法令の定めに基づき本基準の適用時期を早める場合は該当しないと考えられる。
Ⅱ.用語の定義
- BC31. 当委員会は、サステナビリティ開示基準において、IFRSサステナビリティ開示基準が用いる用語及びその定義を、原則として同一の意味で取り入れている。当該用語の定義をIFRSサステナビリティ開示基準とは異なるものとした場合、サステナビリティ開示基準を適用した結果として開示される情報が国際的な比較可能性を大きく損なわせるものとなる可能性があるためである。
- BC32. 本基準では、「報告企業」及び「企業」という用語を用いている。「報告企業」とは、財務諸表の作成を要求される又はこれを選択する企業をいう(第7項(1)参照、「適用基準」第4項(1))。
- BC33. 本基準では、「気候変動に関する最新の国際協定」の定義について、IFRS S2号の定義と同一の意味で定義するために、気候変動に対処するための「国連気候変動枠組条約」の締約国としての国家間の協定をいうとしている(第4項(7)参照)。本基準の公表時点においては、2015年12月に国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において採択され、2016年4月に発効した「パリ協定」が該当する。
また、国際航空及び国際海運における温室効果ガス排出の削減に関する取決めについては、国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)において「気候変動に関する最新の国際協定」を参照して国家間で合意し、取決めがなされており、このような取決めも「気候変動に関する最新の国際協定」に含まれると考えられる。 - BC34. 本基準は、国際的な基準との整合性を図るためにIFRSサステナビリティ開示基準を取り入れるとしたものについて、日本語として不自然になると考えられた場合に、次のとおり、基準の意図がより明確になるような表現を用いることとした。これは、我が国の関係者にとって理解しやすい表現とすることを目的としており、IFRSサステナビリティ開示基準との間に差異を設けることを意図していない。

- BC35. なお、本基準では、サステナビリティ関連の実務においてこれまで使われてきた用語と必ずしも同じ表現を用いていないものがある。これは、国際的な基準との整合性を考慮して開発した本基準において用いる用語の定義と、実務で使われてきた用語の定義が、必ずしも同じではない場合があると考えられたためである。
Ⅲ.コア・コンテンツの開示
ⅰ.4つの構成要素
- BC36. 本基準は、「一般基準」に示した構成(「一般基準」第7項)に従い、経営全般に関連する次の4つの構成要素(コア・コンテンツ)に関する情報を開示しなければならないとしている。
- (1) ガバナンス(第9項から第12項参照)
- (2) 戦略(第13項から第39項参照)
- (3) リスク管理(第40項から第42項参照)
- (4) 指標及び目標(第43項から第99項参照)
- BC37. 本基準は、企業が事業をどのように管理すべきかを定めていない。本基準は、企業が設定する気候関連のリスク及び機会を管理するプロセス及び方針に関して透明性がある開示を行うことで利用者の情報ニーズを満たすことを意図している。
ⅱ.ガバナンス
(a) 「一般基準」との関係
- BC38. サステナビリティ開示基準の構造上、本基準のガバナンスに関する定めは、「一般基準」の定めと整合している。「一般基準」による開示と整合的な開示が作成されることを意図して、第9項から第11項の定めについては、「一般基準」における「サステナビリティ関連のリスク及び機会」という用語を「気候関連のリスク及び機会」に置き換えたうえで、省略することなく全文を示している。
- BC39. 本基準は、ガバナンスに関する開示において、不必要な繰り返しを避けることを要求している。例えば、気候関連のリスク及び機会について、他のサステナビリティ関連のリスク及び機会とは区別せず、全体的にガバナンスのプロセスや管理体制を構築している場合は、ガバナンスに対する全体的なアプローチを記述し、気候関連のリスク及び機会について採用するアプローチに関しては、具体的な記述を追加することが適切である場合があると考えられる(第12項参照)。
(b) 要求事項の明確化
- BC40. 次の項目については、IFRS S2号では開示することが明示的に要求されていないものの、主要な利用者に有用な情報を提供すると考えられたため、「一般基準」と同様に、本基準においては開示しなければならないこととした。
- (1) 気候関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関の名称又は当該責任を負う個人の役職名(第10項(1)参照)
- (2) ガバナンスのプロセス、統制及び手続における経営者の役割が、具体的な経営者若しくはこれに準ずる者(経営者等)又は経営者等が関与する委員会その他の機関に委任されている場合における、経営者等の役職名又は委員会その他の機関の名称(第11項(1)①ア参照)
- BC41. 気候関連のリスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関(第10項(1)参照)には、取締役会、取締役により構成される委員会又はガバナンスに対する責任を負う同等の機関が含まれると考えられる。また、気候関連のリスク及び機会の全体的な監督責任を、ガバナンス機関ではなく、具体的な専門性及び経験を有する個人が担う場合もあると考えられる。
ⅲ.戦 略
(a) 気候関連のリスク及び機会
(ガイダンスの情報源)
- BC42. 「適用基準」は、企業が開示を作成するにあたり参照する可能性があるガイダンスについて、次の3つに分類し、「ガイダンスの情報源」として定めている(「適用基準」第40項から第43項及び第52項から第55項)。
- (1) 「適用しなければならない」情報源
- (2) 「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源
- (3) 「参照し、その適用可能性を考慮することができる」情報源
- BC43. 本基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会を識別するにあたり、また、開示する産業別の指標を決定するにあたり、「産業別ガイダンス」に定義されている開示トピック、また、当該開示トピックに関連する産業別の指標を「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源としている(第17項及び第86項参照)。
- BC44. BC43項の「産業別ガイダンス」とは、IFRSサステナビリティ開示基準を構成しない、68産業における気候関連開示のガイダンス(IFRS S2号に付属するガイダンス)を示しており、IFRSサステナビリティ開示基準に付属するガイダンス(「適用基準」第4項(11)①)に含まれる。
- BC45. 「産業別ガイダンス」は、「SASBスタンダード」(「適用基準」BC79項)のうち、気候に関連するとISSBが判断した部分を抜き出したものとなっており、気候に関連する部分については、「SASBスタンダード」と内容が重複している。「産業別ガイダンス」は、IFRS財団のデュー・プロセスを経て2023年6月に最終化されているものの、現時点ではIFRSサステナビリティ開示基準の一部を構成するものではないとされている。当委員会は、ISSBの「産業別ガイダンス」がIFRSサステナビリティ開示基準の一部を構成することとなった時点で「産業別ガイダンス」の内容を当委員会が開発するサステナビリティ開示基準に取り入れることを検討するとしているため、本基準においては、「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源とすることとした。
- BC46. このため、企業は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会を識別するにあたり、また、開示する産業別の指標を決定するにあたり、「産業別ガイダンス」に定義されている開示トピックや当該開示トピックに関連する産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮することを要求されるが、適用可能性を考慮した結果、当該ガイダンスを適用しない(「産業別ガイダンス」に記述されている開示トピックに基づき気候関連のリスク及び機会を識別しない、また、「産業別ガイダンス」に記述されている産業別の指標を開示しない)と結論付ける場合がある。また、「産業別ガイダンス」に示されている開示トピックや産業別の指標は、必ずしも網羅されてはいないため、情報に重要性があると判断する場合、「産業別ガイダンス」に含まれていない開示トピックや産業別の指標に関する情報を開示しなければならないと考えられる。
- BC47. ここで、IFRS S2号では、ガイダンスの情報源の「適用可能性を考慮しなければならない」という要求事項について、どのような場合に「適用可能性を考慮しなければならない」という要求事項を満たしたことになるのかが明示されていない。
- BC48. この点、本基準は、考慮したガイダンスに記載されている事項について網羅的に検討することを想定していない。このため、例えば、どの産業に関するガイダンスを参照することとしたのか、当該産業に関するガイダンスに記載されているリスク及び機会のうち、どれを企業のリスク及び機会として識別したのか、当該産業に関するガイダンスにおけるリスク及び機会について記載されている指標等のうち、どれについて開示することとしたのか等について、その理由を検討することが考えられる。
- BC49. なお、どのガイダンスの情報源を適用するかの決定が、「適用基準」第81項に基づく、サステナビリティ関連財務開示に含まれる情報に最も重大な影響を与える判断に関する情報の開示対象となった場合には、企業が検討した事項の全部又は一部について、サステナビリティ関連財務開示に記載することもあると考えられる(「適用基準」BC158項(2))。この定めを適用するにあたり、考慮した特定のガイダンスの情報源を適用した旨を開示するとともに、他のガイダンスの情報源についても考慮したものの、当該他のガイダンスの情報源を適用しなかった旨も開示することが必要となる場合がある。
(合理的で裏付け可能な情報の使用)
- BC50. 「適用基準」は、サステナビリティ開示基準において、合理的で裏付け可能な情報を用いることを求めている場合、当該定めに従わなければならないとしている(「適用基準」第32項)。本基準において、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならないと定めている項目は次のとおりであり、IFRSサステナビリティ開示基準と整合している。

(時間軸)
- BC51. 本基準は、識別した気候関連のリスク及び機会のそれぞれについて、その影響が生じると合理的に見込み得る時間軸を短期、中期又は長期により表さなければならないとしたうえで、企業による「短期」、「中期」及び「長期」の定義を開示しなければならないとしている(第19項(3)及び(4)参照)。
- BC52. IFRS S1号において説明されているように、短期、中期及び長期の時間軸は、企業によって異なると考えられ、企業が属する産業の特性(キャッシュ・フロー、投資及びビジネスのサイクル等)、意思決定や資本配分計画に通常用いられる期間、主要な利用者が企業の評価を行う時間軸といった多くの要因に依存すると考えられる(IFRS S1号第31項)。
- BC53. 気候関連のリスク及び機会に関する情報は、時間軸に関する企業固有の評価の文脈において最もよく理解されると考えられることから、本基準においても時間軸を定義しないこととした。
(商業上の機密情報)
- BC54. 「適用基準」は、一定の要件をすべて満たす場合に限り、サステナビリティ関連の機会に関する情報を開示しないことができるとしている(「適用基準」第13項)。当該定めは、別段の定めがある場合を除き、すべてのサステナビリティ関連の機会に関する情報の開示に適用される(「適用基準」BC39項)ため、別段の定めがある場合を除き、本基準に基づく気候関連の機会に関する情報にも適用されることとなる。
(b) ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響
- BC55. 本基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会について、企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響を開示しなければならないとしている(第20項(1)及び(2)参照)。
- BC56. 「適用基準」は、バリュー・チェーンを「報告企業のビジネス・モデル及び当該企業が事業を営む外部環境に関連する、相互作用、資源及び関係のすべて」と定義している(第7項(11)参照、「適用基準」第4項(12))。同基準では、バリュー・チェーンの範囲を決定するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いることを要求している(「適用基準」第47項)。
- BC57. また、本基準は、企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンにおいて、気候関連のリスク及び機会が集中している部分について開示しなければならないとしている(第20項(3)参照)。例えば、ある製品の製造に必要不可欠な特定の資源の供給に影響を与える、特定の地理的な所在地における物理的リスクの集中を識別し、地域、施設又は資産の種類について開示することが考えられる。
(c) 財務的影響
(財務的影響の開示)
- BC58. 本基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会について、現在の及び予想される財務的影響を理解できるようにする情報を開示しなければならないとしている(第21項参照)。財務的影響とは、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与える影響を意味している。なお、「財務業績」とは、我が国における「経営成績」に相当するものであると考えられる。
- BC59. 本基準では、財務的影響の開示において定量的情報を開示する場合、単一の数値又は数値の範囲を開示することができるとしている(第25項参照)。ここで、財務的影響の開示において開示される定量的情報は、金額であることが多いと考えられるものの、金額以外も排除しないという意味で「数値」という用語を用いている。
- BC60. また、本基準は、財務的影響の開示において定量的情報を提供する必要はないと判断した場合であっても、定性的情報及び有用性がある他の定量的情報を開示しなければならないとしている(第27項参照)。この場合の定性的情報には、気候関連のリスク又は機会が影響を与える可能性が高いか、影響を与えた、関連する財務諸表の行項目、合計及び小計を含むとしている(第27項(2)参照)。なお、「行項目」には、我が国において「表示科目」と呼ばれているものが含まれると考えられる。
- BC61. 財務諸表の行項目、合計及び小計を開示するという定めは、企業が個々の気候関連のリスク及び機会の財務的影響に関する定量的情報を提供できない状況においても、財務諸表上のどの領域が気候関連のリスク又は機会の影響を受けた可能性が高いか又は受けることになるかを強調することができるため、有用であると考えられる。
- BC62. また、本基準では、気候関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を踏まえた、短期、中期及び長期における、企業の財政状態の変化に関する見込みについて開示することを定めており、当該開示を作成するにあたり、企業の投資計画及び処分計画を考慮しなければならないとしている(第22項(3)①参照)。このような投資計画及び処分計画には、例えば、資本的支出、主要な買収及びダイベストメント、共同支配企業、事業変革、イノベーション、新規の事業領域並びに資産の除却に対する計画が含まれ、企業が契約上約束していない計画も含まれると考えられる。
- BC63. さらに、本基準は、気候関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を踏まえた、短期、中期及び長期における、企業の財務業績及びキャッシュ・フローの変化に関する見込みについて開示しなければならないとしている(第22項(4)参照)。このような変化には、例えば、低炭素経済にあわせた製品及びサービスによる売上高の増加、気候に関する事象から生じる資産に対する物理的な損害から生じるコストの増加、並びに気候への適応又は緩和に関連する費用の増加が含まれると考えられる。また、例えば、純利益に対する影響等の開示が考えられる。
- BC64. なお、第22項(2)は、IFRS S2号では「翌年次報告期間中に関連する財務諸表で報告される資産及び負債の帳簿価額に重要性がある修正が生じる重大なリスクがある」とされているが、これは、IFRS会計基準におけるIAS第1号「財務諸表の表示」(以下「IAS第1号」という。)第125項の要求事項と整合していると考えられる。このため、本基準の表現は、IAS第1号第125項を参考に開発された企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の定めと整合させ、「翌年次報告期間において、関連する財務諸表に計上する資産及び負債の帳簿価額に重要性がある影響を与える重大なリスクがある」としている。これは、IFRS S2号とは異なるものの、その趣旨についてIFRS S2号との間に差異を設けることを意図していない。
(d) 戦略及び意思決定に与える影響
(気候関連のリスク及び機会が戦略及び意思決定に与える影響)
- BC65. 本基準は、気候関連のリスク及び機会に対処するために、現在、直接的及び間接的な緩和及び適応の取組みを実施していたり、将来においてこれらに取り組むことが予想されたりする場合には、当該内容を開示しなければならないとしている(第29項(2)参照)。本基準では、「緩和」及び「適応」という用語について、BC26項において記述している意味で用いている。直接的な緩和及び適応の実施及び取組みについては、例えば、生産プロセス又は設備の変更、施設の移転、労働力の調整、及び製品仕様の変更を通じた取組みなどが含まれると考えられる。また、間接的な緩和及び適応の実施及び取組みについては、例えば、顧客及びサプライ・チェーンとの協働を通じた取組みが含まれると考えられる。
- BC66. 本基準は、気候関連のリスク及び機会に対処するための、企業のビジネス・モデル(資源の配分を含む。)に対する現在の変更及び将来における予想される変更を開示しなければならないとしている(第29項(1)参照)。このような変更には、炭素、エネルギー又は水を多用する事業を管理又はやめる計画、需要又はサプライ・チェーンの変化から生じる資源配分、資本的支出又は研究開発に関する追加的支出を通じた事業開発から生じる資源配分、及び買収又はダイベストメントが含まれると考えられる。
(気候関連の移行計画)
- BC67. 本基準は、気候関連の移行計画がある場合、当該移行計画の内容(移行計画の作成に用いた主要な仮定並びに移行計画を実現するうえで不可欠な要因及び条件に関する情報を含む。)を開示しなければならないとしている(第29項(3)参照)。これは、主要な利用者が、移行計画の信頼性を評価し、企業間の比較を行ううえで、企業の気候関連の移行計画を支える仮定及び依存関係を理解する必要があると考えられたためである。
- BC68. ここで、仮定は、企業が見込む信念、予想、仮説又は前提条件を意味しており、企業の気候関連の移行計画に組み込まれるものを意味している。したがって、仮定には不確実性があると考えられる。仮定の例には、規制上の要求事項又は企業が計画された変更を自身のバリュー・チェーンに適用する能力に関する予想が含まれると考えられる。
- BC69. また、依存関係は、企業の移行計画を実現するうえで不可欠な要因及び条件を意味している。依存関係の例には、企業が温室効果ガス排出目標を達成するために必要な炭素除去技術や、企業が気候関連の移行計画を適用するために必要最低限の資源の利用可能性が含まれると考えられる。
- BC70. 本基準は、気候関連の移行計画に関する開示に、企業の個別の状況(関連する産業別の開示を含む。)が反映されることを意図しており、ビジネス・モデルの変更が含まれる場合もあれば、特定の製品ライン、事業単位又は活動についての計画が含まれる場合もあると考えられる。
- BC71. 企業の気候関連の移行計画に関する開示は、温室効果ガス排出の削減目標を提示するのみならず、当該目標を達成し、気候関連の移行リスクに対応し、低炭素経済への予想される移行に貢献しそこから便益を得るために行うことを計画している具体的な行動に関する情報を提供することが有用であると考えられる。
- BC72. また、気候関連の移行計画に関する情報を開示するにあたり、本基準の他の定めに従い開示される情報を参照する場合がある。例えば、温室効果ガス排出の開示(第46項(1)参照)と、温室効果ガス排出目標の開示(第97項参照)との間のつながりを強調したり、気候関連の移行計画又は関連する開示において気候レジリエンスの評価(第39項参照)を参照したりする場合もあると考えられる。
(気候関連の目標)
- BC73. 本基準は、気候関連の目標がある場合、当該目標を達成するための計画の内容を開示しなければならないとしている(第29項(4)参照)。当該目標には、温室効果ガス排出目標以外の目標も含まれると考えられる。
- BC74. また、本基準は、気候関連の目標のうち、企業が設定した目標以外に、企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標に関する情報を開示しなければならないとしている(第92項参照)。本基準は、企業が目標を設定していない場合に、新たに設定することを要求しておらず、目標を設定している(又は満たすことが要求されている)場合に、気候関連の目標に関する情報を開示することを企業に要求している。
(トレードオフ)
- BC75. 「一般基準」は、企業が考慮した、サステナビリティ関連のリスク及び機会の間のトレードオフを開示しなければならないとしている(「一般基準」第23項(3))。トレードオフの例として、IFRS S1号では、新たな事業を営む場所に関する意思決定を行うにあたり、当該事業による環境上のインパクトと、当該事業がコミュニティに生み出す雇用の機会が挙げられている(IFRS S1号第33項(c))。IFRS S2号には同様の要求事項が明示的に定められていないものの、「一般基準」は「一般基準」以外のサステナビリティ開示基準を適用する場合でも従う必要がある(「一般基準」BC16項)ため、本基準では、明確化の観点から、トレードオフの開示に関して、「一般基準」と同様の定めを設けることとしている(第28項(4)参照)。
(e) 気候レジリエンス
(用語の定義)
- BC76. 本基準は、「気候レジリエンス」について、「気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の能力」と定義している(第5項(2)参照)。当該能力には、気候関連のリスクを管理し、気候関連の機会から便益を享受する能力(気候関連の移行リスク及び気候関連の物理的リスクに対応し、適応する能力を含む。)が含まれると考えられる。
- BC77. また、本基準における「気候レジリエンス」には、気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の戦略上のレジリエンスと、企業の事業上のレジリエンスの両方が含まれると考えられる。ここでの「戦略」とは、第13項で示されている内容と同じく、気候関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を意味すると考えられる。
- BC78. 「気候関連の変化」には、広範囲にわたる山火事など、気候変動から直接生じる事象又は変化が含まれることがあると考えられる。また、「気候関連の進展」には、特定の化石燃料の使用に対する規制上の制限など、規制上の対応及び人口動態の変化などの進化するマクロ経済要因が含まれることがあると考えられる。さらに、「気候関連の不確実性」には、山火事の広範性又は規制の厳格性に関する仮定など、気候関連の変化及び気候関連の進展に関連する信頼度の違いが含まれると考えられる。
(気候レジリエンスの開示)
- BC79. 本基準では、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会、すなわち、短期、中期又は長期にわたり、企業のキャッシュ・フロー、当該企業のファイナンスへのアクセス又は資本コストに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会を識別することを求めている(第4項(5)及び第17項参照)。これは、気候関連開示において、すべての気候関連のリスク及び機会に関する情報を提供するのではなく、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会に関する情報を提供することを意図している。したがって、本基準は、すべての気候関連のリスク及び機会に対して気候レジリエンスの評価を行うことを想定していない。
- BC80. 本基準は、気候関連のシナリオ分析に基づき、気候レジリエンスを評価しなければならないとしている(第30項参照)。本基準は、「シナリオ分析」の概念と「気候レジリエンスの評価」の概念を区別しており、気候関連のシナリオ分析は、企業を取り巻く環境に関する事象を考慮して分析するものとし、気候レジリエンスの評価は、企業自身の状況を考慮して評価を行うものとしている。
- BC81. 企業に影響を与える気候関連のリスク及び機会の発生可能性、規模及び時期は複雑であり、不確実性があると考えられる。本基準は、主要な利用者の理解に資する情報を提供するため、気候関連のシナリオ分析と気候レジリエンスの評価の2つの側面に関する事項を開示しなければならないとしている(第31項参照)。
- (1) 実施した気候関連のシナリオ分析の手法及び実施時期
企業が気候レジリエンスを評価するために、気候関連のシナリオ分析をどのように実施してきたかに関する情報 - (2) 報告期間の末日における気候レジリエンスの評価
不確実性の主要な領域、企業の戦略及びビジネス・モデルに対する影響、並びに企業の適応能力を理解できるようにするための、当該企業の気候レジリエンスに関する情報 - BC82. なお、本基準は、気候関連のシナリオ分析の結果そのものを開示することは要求していない。
(気候関連のシナリオ分析)
- BC83. 本基準は、気候レジリエンスの評価にあたり、企業の状況に見合ったアプローチを用いて、気候関連のシナリオ分析を用いなければならないとしている(第33項参照)。
- BC84. 本基準は、IFRS S2号と同様に、特に、スキル、能力又は資源が少ない企業にとって、シナリオ分析が過大なコストや労力を生じさせる可能性があるという懸念に対応するため、追加のガイダンスを提供している(別紙A参照)。
- BC85. 追加のガイダンスは、企業の状況に見合った気候関連のシナリオ分析に対するアプローチを企業が決定できるように設計されている。追加のガイダンスは、TCFDが公表した文書(「技術的補足文書:気候関連のリスク及び機会の開示におけるシナリオ分析の利用(2017年)」及び「非金融会社のためのシナリオ分析に関するガイダンス(2020年)」を含む。)に概説されている実務の範囲に基づいている。
- BC86. 別紙A「気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチ」は、次のことを考慮に入れて、合理的で裏付け可能な情報を企業が考慮できるようにする気候関連のシナリオ分析に対するアプローチを用いることを要求している。
- (1) 気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャー
- (2) 気候関連のシナリオ分析のために企業が利用可能なスキル、能力及び資源
- BC87. 気候関連のリスク及び機会に対するエクスポージャーが大きい企業ほど、また、気候関連のシナリオ分析を実施するために利用可能なスキル、能力及び資源が多い企業ほど、気候レジリエンスの評価を支えるために、より洗練された形のシナリオ分析を用いることが要求されると考えられる。
- BC88. 資源がより少なく、リスク・エクスポージャーが比較的小さい企業は、例えば、主要な製品、事業単位又は事業の所在地に焦点を当てたシナリオ分析を用いることが考えられる。一方で、リスク・エクスポージャーが大きく、シナリオ分析の経験がより豊富な、規模の大きい企業は、企業の事業及びバリュー・チェーンを通じての複数のリスク伝達経路を取り込むために、さまざまなシナリオを用いた洗練された定量的モデリングを実施することが考えられる。
- BC89. 企業がより洗練された形の気候関連のシナリオ分析を実施するためのスキル及び能力を現時点では有していないものの、気候関連のリスクに対するエクスポージャーが大きい場合、最初は気候関連のシナリオ分析に対してより単純なアプローチを用いることが考えられる。一方、気候関連のリスクに対するエクスポージャーを踏まえ、シナリオ分析に対するより洗練されたアプローチを用いる場合、企業がスキル又は能力を獲得又は開発するために利用可能な資源を有しているときは、スキル又は能力の不足を理由に洗練度合いの低いアプローチを用いることを正当化することはできないと考えられる。
- BC90. 企業がスキル及び能力を開発し、学習及び反復のプロセスを通じ、時間の経過とともに開示を強化することが可能になると考えられる。企業の能力が進展するに従い、コストや労力に関して何が「過大」と考えられるのかの評価も進展すると考えられる。
- BC91. 本基準は、企業が気候関連のシナリオ分析において用いることを要求される特定のシナリオを定めていない。関連するシナリオは、企業の事実及び状況(事業の性質及び所在地並びに企業がさらされている物理的リスク及び移行リスクを含む。)に依存すると考えられたためである。その代わり、本基準は、企業がどの気候関連のシナリオを用いたのか(それらが気候関連の移行リスク又は気候関連の物理的リスクのいずれに関連するのかを含む。)を説明することを要求している(第38項(1)①参照)。
- BC92. また、本基準は、分析に多様な範囲の気候関連のシナリオを含めたかどうかについての開示も要求している(第38項(1)①イ参照)。これは、用いたシナリオの数及び当該シナリオがさまざまな結果又は道筋を対象としているかどうかなどの情報の開示が要求されることを意味していると考えられる。例えば、企業が秩序ある移行シナリオと無秩序な移行シナリオの両方を検討した場合には、企業はその旨を開示する可能性がある。また、例えば、複数の温度帯のシナリオを含めたかどうかを開示することが考えられる。
- BC93. 本基準は、気候変動に関する最新の国際協定と整合するシナリオ又は特定の科学的根拠に基づくシナリオの使用を要求していない。これは、どのシナリオを用いるべきかを定めることは実務的でなく、急速に時代遅れとなる場合があり、企業の具体的な状況又は何がもっともらしいかについての経営者の見方を反映しない情報の開示につながる可能性があると考えられたためである。
- BC94. 本基準は、気候関連のシナリオ分析は、最低限、戦略計画サイクルに沿って更新しなければならないとしており、報告期間ごとに実施することは要求していない(第30項参照)。一方、気候レジリエンスの評価は、報告期間ごとに実施しなければならないとしている(第30項参照)。これは、気候関連の不確実性が企業のビジネス・モデルに与える影響について、更新された洞察を反映するため、毎年、気候レジリエンスを評価することを要求するものである。
- BC95. 第31項(2)が要求している気候レジリエンスの評価に関する情報は報告期間の末日ごとに更新される一方、第31項(1)が要求している実施した気候関連のシナリオ分析の手法及び実施時期に関する情報は、気候関連のシナリオ分析が実施されていない場合には、ある報告期間と翌年次報告期間とで変更がない場合があると考えられる。
- BC96. 企業を取り巻く環境は短期間で大きく変化することは想定されず、したがって、シナリオ分析を毎年実施する必要は必ずしもないが、企業自身の状況については短期間のうちに刻々と変わり得る可能性があり、シナリオ分析を実施した報告期間に関する情報は、主要な利用者の意思決定に関連性があると考えられることから、本基準は、気候関連のシナリオ分析を実施した報告期間の開示を求めている(第38項(3)参照)。
- BC97. 気候関連のシナリオ分析は、気候レジリエンスの評価の文脈においてのみ、使用することが要求されるものであるが、本基準が要求している他のさまざまな開示にも使用することができると考えられる。このような開示には、リスク及び機会の識別及び評価、当該リスク及び機会に関連した予想される財務的影響、並びに企業が低炭素経済に移行するために作成する可能性のある計画が含まれると考えられる。
- BC98. 本基準は、用いたインプットに関して、分析に用いた時間軸についての開示を要求している(第38項(1)②参照)。この定めは、企業が定義する短期、中期及び長期の時間軸に基づき気候関連のシナリオ分析を行うことを求めるものではなく、企業が一定の時間軸について気候関連のシナリオ分析を実施した場合の当該時間軸について開示を求めるものである。当該時間軸によるシナリオ分析の結果を踏まえ、短期、中期及び長期での気候レジリエンスをそれぞれ評価し、気候レジリエンスの評価に関する開示(第39項参照)を行うことになると考えられる。
(気候レジリエンスの評価)
- BC99. 本基準は、気候関連のシナリオ分析の結果が企業の戦略及びビジネス・モデルについての評価に影響がある場合、当該影響を開示しなければならないとしている(第39項(1)参照)。この開示は、気候関連のリスク及び機会が企業の戦略及び意思決定に与える影響に関する開示(第14項(4)参照)と関連する可能性があるため、開示にあたっては、当該情報とのつながりが理解できるように記述することが有用であると考えられる。
- BC100. 本基準は、気候レジリエンスの評価において考慮された重大な不確実性の領域を開示しなければならないとしている(第39項(2)参照)。例えば、気候レジリエンスの評価が将来の気候を原因とする移住の影響から生じる重大な不確実性にさらされており、それが特定の地域における企業のサプライ・チェーンの安定性又は資産及び事業のレジリエンスに影響を与える可能性がある場合、その旨を開示することがあると考えられる。
- BC101. 2024年3月公開草案に寄せられたコメントの中には、気候レジリエンスの評価の開示に関する第39項(1)の定めと気候関連のリスク及び機会が戦略及び意思決定に与える影響の開示に関する第28項(1)の定めとの関係が明らかではないとの意見があったが、次のとおり、これらは異なる定めであると考えられる。
- (1) 気候レジリエンスの評価の開示に関する第39項(1)の定めは、気候レジリエンス、すなわち、気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の能力を評価した結果を開示することを求めており、気候関連のシナリオ分析の結果を踏まえ、(例えば、戦略及びビジネス・モデルの調整が必要と判断した場合のように)企業の戦略及びビジネス・モデルの評価に影響がある場合に、その影響を開示することを求めている。
- (2) 気候関連のリスク及び機会が戦略及び意思決定に与える影響の開示に関する第28項(1)の定めは、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会が企業の戦略及び意思決定に与える影響として、識別した気候関連のリスク及び機会に対しどのように対応してきたか、また、今後どのように対応する計画であるかについて開示することを求めている。
- BC102. また、2024年3月公開草案に寄せられたコメントの中には、気候レジリエンスの評価における気候関連のシナリオ分析の利用及び開示に関する第31項及び第33項の定めと気候関連のリスク及び機会の識別におけるシナリオ分析の利用及び開示に関する第17項及び第41項の定めとの関係が明らかではないとの意見があったが、次のとおり、これらは異なる定めであると考えられる。
- (1) 気候レジリエンスの評価における気候関連のシナリオ分析の利用及び開示については、第33項において、気候レジリエンスの評価にあたり、気候関連のシナリオ分析を用いなければならないことを定めており、第31項において、気候レジリエンスに関して開示すべき事項の1つとして、実施した気候関連のシナリオ分析の手法及び実施時期があることを定めている。
気候関連のシナリオ分析は、気候レジリエンスの評価の文脈においてのみ、使用することを要求するものであるが、本基準が要求している他のさまざまな開示にも使用することができる。このような開示には、気候関連のリスク及び機会の識別が含まれる(BC97項参照)。 - (2) 気候関連のリスク及び機会の識別におけるシナリオ分析の利用及び開示については、第17項において、気候関連のリスク及び機会を識別するにあたり、気候関連のシナリオ分析を用いることは求めていないが、(1)に記載したとおり、気候関連のシナリオ分析を用いることはできる。すなわち、第17項に従い、気候関連のリスク及び機会を識別するにあたり「産業別ガイダンス」に定義されている開示トピックを参照し、その適用可能性を考慮する場合、気候関連のシナリオ分析を用いることもあれば、用いないこともあると考えられる。また、その利用方法も、さまざまであると考えられる。
仮に気候関連のシナリオ分析を用いて気候関連のリスク及び機会を識別した場合には、第41項(1)②ア及び(2)①に従い、気候関連のシナリオ分析の利用方法に関する情報を開示することになる。
ⅳ.リスク管理
(a) 「一般基準」との関係
- BC103. サステナビリティ開示基準の構造上、本基準のリスク管理に関する定めは、「一般基準」の定めと整合している。整合的で比較可能である開示を確保するため、また、企業が本基準を適用することを支援するため、第40項及び第41項の定めについては、「一般基準」における「サステナビリティ関連のリスク及び機会」という用語を「気候関連のリスク及び機会」に置き換えたうえで、省略することなく全文を示している。
- BC104. 第40項(2)の「企業の全体的なリスク・プロファイル及び全体的なリスク管理プロセスを評価すること」について、IFRS S2号には同様の要求事項が明示的に定められていないものの、「一般基準」は「一般基準」以外のサステナビリティ開示基準を適用する場合でも従う必要がある(「一般基準」BC16項)ため、本基準では、明確化の観点から、リスク管理の開示目的に関して、「一般基準」と同様の定めを設けることとしている(第40項(2)参照)。
- BC105. 本基準は、リスク管理に関する開示において、不必要な繰り返しを避けることを要求している。例えば、気候関連のリスク及び機会について、他のサステナビリティ関連のリスク及び機会とは区別せず、全体的なリスク管理プロセスと統合され、用いられている場合は、リスク管理に対する全体的なアプローチを記述し、気候関連のリスク及び機会について採用するアプローチに関しては、具体的な記述を追加することが適切である場合があると考えられる(第42項参照)。
ⅴ.指標及び目標
(a) 開示目的
- BC106. 「一般基準」第32項(1)において定められているとおり、本基準が明示的に開示を要求している指標については、企業がこれらの指標を事業において用いていない場合においても開示しなければならない。当該定めは、主要な利用者にとって有用となる可能性が高い情報を入手できるようにすることを確保することを目的としており、本基準に示されている指標を用いて事業を管理することは要求されないと考えられる。
(b) 気候関連の指標
(産業横断的指標等の開示)
- BC107. 第46項に定める7つの産業横断的指標等は、TCFDが2021年に公表した「指標、目標及び移行計画に関するガイダンス」において開示推奨項目として示されたものである。
- (1) 温室効果ガス排出(第47項から第76項参照)
- (2) 気候関連の移行リスク(第79項参照)
- (3) 気候関連の物理的リスク(第80項参照)
- (4) 気候関連の機会(第81項参照)
- (5) 資本投下(第82項参照)
- (6) 内部炭素価格(第83項参照)
- (7) 報酬(第84項及び第85項参照)
- BC108. 第46項に定める産業横断的指標等は、次のことを目的としている。
- (1) 気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャーや管理に関する共通の情報を提供する。
- (2) 気候関連のリスク及び機会の主要な側面及び決定要因の指標を提供する。
- (3) 気候変動が企業に与える可能性のある影響に対する洞察を提供する。
(温室効果ガス排出)
温室効果ガス排出の絶対総量の開示
- BC109. 本基準は、温室効果ガス排出の絶対総量の開示を要求している(第47項参照)。当該情報は、特定の気候関連のリスク及び機会(特に、低炭素経済への移行に関連したもの)に対する企業のエクスポージャーを主要な利用者が評価するにあたり役立つと考えられる。
- BC110. 本基準において、温室効果ガス排出の「絶対総量」とは、企業による現在又は将来における直接的及び間接的な緩和及び適応の取組み(第29項(2)参照)(例えば、使用する計画があるカーボン・クレジット)を考慮に入れる前の、原単位ではない、オフセット前の温室効果ガス排出量を意味すると考えられる。
3つのスコープへの分類
- BC111. 本基準は、温室効果ガス排出について、「GHGプロトコル(2004年)」で用いられている定義を採用して3つのスコープを報告企業の視点から定義したうえで(第6項(4)から(6)参照)、温室効果ガス排出の絶対総量を3つのスコープに区分して開示しなければならないとしている(第47項参照)。
- BC112. スコープ1温室効果ガス排出は、報告企業が所有又は支配する排出源から発生する直接的な温室効果ガス排出をいうとしており、例えば、所有若しくは支配するボイラー、炉、自動車における燃焼、又は所有若しくは支配する加工設備における化学的生産からの温室効果ガス排出が挙げられる。
- BC113. スコープ2温室効果ガス排出は、報告企業が消費する、購入又は取得した電気、蒸気、温熱又は冷熱の生成から発生する間接的な温室効果ガス排出をいうとしており、例えば、エネルギーのサプライヤーによる温室効果ガス排出が挙げられる。
- BC114. スコープ3温室効果ガス排出は、報告企業のバリュー・チェーンで発生する間接的な温室効果ガス排出(スコープ2温室効果ガス排出に含まれないもの)をいい、上流及び下流の両方の温室効果ガス排出を含むとしている。スコープ3温室効果ガス排出は、スコープ3カテゴリー(第6項(13)参照)に基づきさらに15のカテゴリーに区分され、そのうち8つは企業の上流、7つは企業の下流に関するものである。例えば、スコープ3カテゴリーの「カテゴリー15」は「投資」であり、報告企業がファイナンスを提供した第三者による温室効果ガス排出が分類される。
絶対総量の合計値の開示
- BC115. IFRS S2号では、スコープ1温室効果ガス排出、スコープ2温室効果ガス排出及びスコープ3温室効果ガス排出に関して、3つのスコープの温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を開示することは要求されていない。一方、2024年3月公開草案では、主要な利用者にとって情報が利用しやすくなり、企業においても開示にあたり比較的労力がかからないと考えられたことから、これら3つのスコープの温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を開示しなければならないとすることを提案した。
- BC116. これに対し、2024年3月公開草案に寄せられたコメントでは、公開草案における提案に賛成する意見があった一方で、幅広い関係者から反対する意見があった。当委員会における審議の結果、本基準では、スコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出の絶対総量の合計値の開示を要求しないこととした。
表示単位
- BC117. IFRS S2号では、温室効果ガス排出の測定単位についてはCO2相当のメートル・トン(mt(e))によらなければならないとの定めがあるものの(IFRS S2号第29項(a)(i)及びB20項)、表示単位については定められていない。CO2相当のメートル・トンの温室効果ガス排出量をどのような表示単位で表示するかについて、常に1メートル・トン単位で表示することを要求した場合、企業によっては桁数が大きくなり、重要性がない端数まで報告することになる可能性があると考えられる。
- BC118. このため、本基準では、表示単位に関する容認規定を設けることとし、第47項において開示するスコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出量のそれぞれの絶対総量が大きい場合、千メートル・トン(キロ・トン(kt(e)))、百万メートル・トン(メガ・トン(Mt(e)))又は十億メートル・トン(ギガ・トン(Gt(e)))のいずれかの単位を用いて表示することができるとしている(第48項ただし書き参照)。
- BC119. 2024年3月公開草案に対して寄せられたコメントでは、温室効果ガス排出量は、スコープごとに大きく異なる場合があるため、単位を統一することで可読性が低下し、誤解が生じる可能性があるという意見があった。一方、当委員会における審議の過程では、主要な利用者は、3つのスコープの温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を把握し、企業がさらされている気候関連のリスクの全体像を理解したうえで、具体的にどのスコープの温室効果ガス排出が多いのか、スコープ3温室効果ガス排出が多い場合には、どのカテゴリーが多いのか、掘り下げていく形で分析を行うことが多いと考えられるという意見が聞かれた。
- BC120. 当委員会における審議の結果、本基準では、3つのスコープの温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を理解することを望む主要な利用者が誤解することを避けるため、温室効果ガス排出量に関して、千メートル・トン(キロ・トン(kt(e)))、百万メートル・トン(メガ・トン(Mt(e)))又は十億メートル・トン(ギガ・トン(Gt(e)))のいずれかの単位を用いて表示することを選択した場合、それぞれの温室効果ガス排出量について、同じ単位を用いて表示しなければならないとすることとした(第48項ただし書き参照)。
「GHGプロトコル(2004年)」に基づく温室効果ガス排出の測定
- BC121. 本基準は、「GHGプロトコル(2004年)」に従って温室効果ガス排出を測定しなければならないとしている(第49項本文参照)。これは、「GHGプロトコル(2004年)」が、最も一般的に用いられているガイダンスであるとされており(IFRS S2号BC88項)、また、用いることができる測定方法の範囲を狭めることにより、開示の比較可能性を高めることになると考えられたためである。なお、「GHGプロトコル(2004年)」は、単一の文書であり、他のガイダンスは含まれないとされている(IFRS S2号BC86項)。
- BC122. 「GHGプロトコル(2004年)」は、当委員会以外の第三者が定めており、今後、定期的に更新されることが期待されているが、更新される場合、当委員会の適正手続に従わずに変更されることになる。この点、ISSBの考え方(IFRS S2号BC90項)と同様に、今後、仮に「GHGプロトコル(2004年)」が更新された場合は、更新によって起こり得る影響を当委員会において評価したうえで、当委員会の適正手続に従って本基準を改正し、更新されたものを参照することにする予定である。
- BC123. 第49項本文では、温室効果ガス排出は、「GHGプロトコル(2004年)」に従って測定しなければならないとしているが、これは、IFRS S2号と同様に、本基準の定めに反しない範囲においてのみ、「GHGプロトコル(2004年)」における定めを適用しなければならないことを意図している。また、IFRS S2号と同様に、「GHGプロトコル(2004年)」では要求されていないものの本基準では開示しなければならないとしている事項がある。例えば、「GHGプロトコル(2004年)」は、スコープ3温室効果ガス排出を開示することを要求していないが、本基準は、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解してスコープ3温室効果ガス排出を開示しなければならないことを明示している(第47項(3)及び第55項参照)。
「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法に基づく温室効果ガス排出の測定
- BC124. IFRS S2号では、「GHGプロトコル(2004年)」に従って温室効果ガス排出を測定することが要求されている(IFRS S2号第29項(a)(ⅱ))ものの、我が国を含む複数の法域(日本、オーストラリア、中国、フランス、韓国、台湾など)において、法令又は取引所の規則により、自国の測定方法に従って温室効果ガス排出を報告することが既に要求されている場合があるとされている(IFRS S2号BC88項)。このような状況においても「GHGプロトコル(2004年)」に従って温室効果ガス排出を測定することを要求した場合、追加のコストが生じる可能性があることから、IFRS S2号では、法域の当局又は企業が上場する取引所が、温室効果ガス排出を測定するうえで異なる方法を用いることを要求している場合、当該方法を用いることができるとしており、本基準はIFRS S2号の当該要求事項を取り入れている(第49項ただし書き参照)。
- BC125. BC124項について、例えば、我が国の「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下「温対法」という。)における「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」(以下「SHK制度」という。)に基づく温室効果ガス排出量の報告は、「法域の当局又は企業が上場する取引所が、温室効果ガス排出を測定するうえで異なる方法を用いることを要求している場合」に該当すると考えられる。
- BC126. 「適用基準」は、サステナビリティ関連財務開示が、関連する財務諸表と同じ報告期間を対象とすることを要求している(「適用基準」第68項)。この定めに従い、指標の報告のための算定期間についても、サステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間を対象とすることになると考えられる。
- BC127. したがって、第46項(1)に定める温室効果ガス排出について、第49項ただし書きに従い、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定した温室効果ガス排出量を報告することを選択し、かつ、サステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間と、温室効果ガス排出量の報告のための算定期間との間に差異が生じる場合にも、報告期間に係る温室効果ガス排出量を算定することとなると考えられる。
- BC128. 状況によっては、企業の特定の部分に関する温室効果ガス排出、又は企業の温室効果ガス排出の一部(例えば、スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出のみ)について開示を行うことが、法域の当局によって要求されている場合がある。このような場合であっても、当該法域の要求事項によって、本基準が要求している、報告企業全体としてのスコープ1温室効果ガス排出、スコープ2温室効果ガス排出及びスコープ3温室効果ガス排出の絶対総量を開示することは免除されない。
- BC129. また、企業によっては、温室効果ガス排出の測定について「GHGプロトコル(2004年)」以外の方法を用いることを選択している場合も考えられる。この場合、本基準を適用することによって、測定方法を変更し、「GHGプロトコル(2004年)」を用いることが要求されることになる。この点、本基準は、移行のコストを考慮し、経過措置を定めている。すなわち、本基準を適用する最初の年次報告期間の直前の年次報告期間において、温室効果ガス排出の測定に「GHGプロトコル(2004年)」又は法域の当局若しくは企業が上場する取引所が要求している方法(第49項ただし書き参照)以外の測定方法を用いていた場合、本基準を適用する最初の年次報告期間においてのみ、当該測定方法を用いることができるとしている(第103項(1)及び第105項(1)参照)。
- BC130. 法域の当局又は企業が上場する取引所が「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を用いることを要求している場合、当該方法の中で、表示単位(数値の端数処理の方法(四捨五入、切り捨て、切り上げ等)を含む。)が定められていることが考えられる。追加的な負担を回避する観点から、当該方法で定められた表示単位に従った報告値をそのまま用いることが認められると考えられる。
(2026年改正基準)
- BC130-2. 2025年公表のIFRS S2号の修正では、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を用いることができる範囲について、報告企業全体のみならず、グループ内の一部の企業、支店、事業所等にも適用可能であることを明確化するようにIFRS S2号の要求事項が修正されている。この点、2025年基準の第49項ただし書き及び第62項は、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法が企業の全部又は一部に適用されることを想定した定めとなっており、2025年公表のIFRS S2号の修正における要求事項と既に整合した定めであると考えられる。ただし、基準の明確化の観点から、2025年公表のIFRS S2号の修正における要求事項の表現と同様の表現を用いて、第49項ただし書きの文言を変更することとしている。
測定方法ごとの温室効果ガス排出量の開示
- BC131. 本基準は、第49項ただし書きに従い「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定することを選択し、かつ、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定した温室効果ガス排出量に重要性がある場合、第47項に従い開示する温室効果ガス排出量に加え、その内訳を分解して開示しなければならないとしている(第50項参照)。
- BC132. ここで、2024年3月公開草案に対して寄せられたコメントの中には、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法が、複数の法域の法令又は企業が上場する取引所の規則に関するものである場合があるとの意見があった。
- BC133. 当委員会における審議の結果、本基準では、第50項に従い分解して開示するにあたり、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法が、複数の法域の法令又は企業が上場する取引所の規則に関するものである場合、特定の法域の法令又は企業が上場する取引所の規則が要求する方法により測定した温室効果ガス排出量が単独で重要性があるときは、当該方法のそれぞれについて、第50項(2)に従い開示する「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法により測定した温室効果ガス排出量を区分して開示しなければならないとすることとした(第51項参照)。この場合、区分して開示する測定方法のそれぞれについて、第62項に定める事項を開示することになる。
排出原単位の開示
- BC134. 本基準は、温室効果ガスの排出原単位を開示することは要求していない。この点、「適用基準」第21項は、サステナビリティ開示基準における具体的な定めを適用しただけでは、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響を理解するうえで不十分である場合には、追加的な情報を開示しなければならないとしている。このため、排出原単位の指標に関する情報が、「適用基準」第21項に従い、主要な利用者に有用であると判断される場合には、開示が行われることがあると考えられる。
- BC135. また、本基準は、企業のガバナンス機関又は経営者が、目標の達成に向けた進捗を測定するために用いる指標を開示することも要求している(第44項(3)参照)。この点、企業のガバナンス機関又は経営者が、気候関連のリスク及び機会を管理するために排出原単位の指標を用いている場合には、当該指標の開示が行われることがあると考えられる。
スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出の開示
- BC136. 本基準は、スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出について、IFRS S2号と同様に、連結会計グループに関するものと、その他の投資先に関するものとに分解して開示しなければならないとしている(第52項参照)。本基準は、第49項本文に従い「GHGプロトコル(2004年)」に従って温室効果ガス排出を測定するにあたり、温室効果ガス排出の測定アプローチとして、「持分割合アプローチ」、「経営支配力アプローチ」又は「財務支配力アプローチ」のいずれかを選択することを要求しているが(第60項参照)、第52項の定めは、特に「持分割合アプローチ」を選択した場合に、集計される温室効果ガス排出量が明確になるようにするために設けている。
- BC137. ここで、連結会計グループは、親会社及びその連結子会社で構成される(第6項(9)参照)ため、その他の投資先には、関連会社、共同支配企業及び非連結子会社が含まれると考えられる。
スコープ2温室効果ガス排出の測定方法
- BC138. スコープ2温室効果ガス排出の測定にあたり、「GHGプロトコル(2004年)」では、ロケーション基準及びマーケット基準という2つの測定方法が定められている。ロケーション基準は、地域、地方、国などの特定された場所におけるエネルギー生成に関する平均的な排出係数を用いる方法であるのに対し(第6項(10)参照)、マーケット基準は、スコープ2温室効果ガス排出を測定するにあたって、電気等の購入契約(分離できない契約証書(第6項(12)①参照)が含まれることがある。)及び分離された契約証書(第6項(12)②参照)の内容を反映する方法であり(第6項(11)参照)、いずれも、電気等の消費量を削減することにより温室効果ガス排出を削減することができると考えられる。
- BC139. ロケーション基準は、国際エネルギー機関(IEA)等から法域別の電気等の排出係数が比較的容易に入手可能であると考えられる一方で、その排出係数は実際に購入した電気等に基づかない仮想的な数値であり、電気等の消費量を一定とした場合、所在地等の特定の場所における平均的な温室効果ガス排出率が改善されないときは、温室効果ガス排出を削減できないと考えられる。
- BC140. マーケット基準は、報告企業が実際に購入した電気等の契約内容をスコープ2温室効果ガス排出の測定に反映するため、ロケーション基準よりも企業の温室効果ガス排出の実態を反映すると考えられる。しかし、海外の法域や市場においては、温室効果ガス排出の測定にあたって用いる要素に関する情報が適時に提供されていないことも考えられることから、仮にマーケット基準のみを要求することとした場合、測定にあたり必要な情報を適時に入手できないこともあると考えられる。
- BC141. なお、「GHGプロトコル(2004年)」のスコープ2温室効果ガス排出に関するガイダンスであるとされる「GHGプロトコル スコープ2ガイダンス」では、報告企業がスコープ2温室効果ガス排出の測定にあたって用いる要素に関する情報について、それらの精度を踏まえた優先順位を例示しており、例えば、特定の子会社など、マーケット基準により測定できない部分については、ロケーション基準により測定することになることが示唆されている。
- BC142. IFRS S2号は、ロケーション基準及びマーケット基準のいずれを用いても有用な情報を提供するとしたうえで、次の理由から、ロケーション基準による測定を要求することとしたとされている(IFRS S2号BC108項及びBC109項)。
- (1) 2つの測定方法の選択適用を認めることにより、比較可能性が低減される可能性があり、また、報告企業にとってより有利なデータに偏った開示がなされる場合、報告企業の温室効果ガス排出を忠実に表現しないことがある。
- (2) 2つの測定方法をともに開示することを要求する場合、一部の企業及び法域に対して現行の実務に著しい変更をもたらすことになり、また、両方の情報が提供されることは必ずしも必要ではない。
- (3) 市場の成熟度の違いなどによりマーケット基準を要求することは難しいものの、契約証書に関するより詳細な情報を開示することで、スコープ2温室効果ガス排出を削減するための報告企業の取組みを主要な利用者が理解するうえで役立つ可能性がある。
- BC143. 本基準においても、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示しなければならないとしたうえで(第53項参照)、スコープ2温室効果ガス排出について、主要な利用者の理解に情報をもたらすために必要な契約証書に関する情報がある場合には、当該契約証書に関する情報を提供しなければならないとしている(第54項本文参照)。ただし、マーケット基準により測定した数値には、企業の温室効果ガス排出削減の努力が反映されており、ロケーション基準により測定した数値とあわせて開示することが主要な利用者にとって有用であると考えられたことから、当該契約証書に関する情報については、マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示することにより当該情報の提供に代えることができるとしている(第54項ただし書き参照)。
- BC144. 当委員会における審議の過程では、「契約証書に関する情報」の具体的な内容が明らかではないとの意見が聞かれた。この点、IFRS S2号においても当該用語は明確に説明されていないため、「契約証書に関する情報」としてどのような内容を開示するのかについては、通常、企業の置かれた状況に即して企業が判断することが国際的な実務になると考えられる。このため、「契約証書に関する情報」については、本基準においても具体的な内容を定めないこととした。したがって、スコープ2温室効果ガス排出についての主要な利用者の理解に情報をもたらすために必要な契約証書に関する情報がある場合には、「契約証書に関する情報」の具体的な内容について、企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、企業の置かれた状況に即して企業が判断するものであると考えられる。
スコープ3温室効果ガス排出の開示
- BC145. IFRS S2号では、関係者からの懸念等を踏まえ、特にデータの入手の困難さに対応するものとして、次のとおり、スコープ3温室効果ガス排出の測定に関するフレームワークの提供、企業の能力及び準備状況等に応じて開示に取り組むための経過措置等が設けられた。
- (1) 「報告期間の末日において企業が過大なコストや労力をかけずに利用可能な、すべての合理的で裏付け可能な情報」を用いるとする要求事項の追加(IFRS S2号B36項及びB39項)
- ① バリュー・チェーンの範囲の決定(IFRS S2号B36項)
- ② スコープ3温室効果ガス排出の測定に使用する、測定アプローチ、インプット及び仮定の選択(IFRS S2号B39項)
- (2) 報告企業の報告期間とは異なる報告期間を有するバリュー・チェーン内の企業から入手した情報を用いることの容認(IFRS S2号B19項)
- (3) スコープ3温室効果ガス排出の測定に用いるデータを優先順位付けするための「スコープ3測定フレームワーク」の導入(IFRS S2号B38項からB54項)
- (4) 経過措置(IFRS S2号C4項(b))
- BC146. 本基準では、IFRS S2号においてBC145項の対応がなされたことを踏まえ、国際的な整合性の観点から、スコープ3温室効果ガス排出の絶対総量の開示を要求することとした(第47項(3)参照)。なお、スコープ3温室効果ガス排出を測定する実務は現在もなお発展途上であるため、測定実務の進展にあわせて段階的に開示を拡充するアプローチを採用することが適切と考えられる。
スコープ3温室効果ガス排出のカテゴリー別の開示
- BC147. IFRS S2号では、「スコープ3基準(2011年)」に記載されているスコープ3カテゴリーに従い、スコープ3温室効果ガス排出の測定値に含めたカテゴリーについて開示することが要求されている(IFRS S2号第29項(a)(ⅵ)(1))。さらに、IFRS S1号における集約及び分解の要求事項(IFRS S1号B30項)に基づき、情報を集約することにより重要性がある情報が不明瞭になる場合には、集約してはならないという要求事項を考慮することが示唆されている(「IFRS S2号『気候関連開示』に関する付属ガイダンス」IE10項)。
- BC148. 本基準は、スコープ3温室効果ガス排出のカテゴリー別の開示は、次に示すとおり、主要な利用者の意思決定に関連性があり、定性的に重要性がある情報であると考えられたことから、基準の明確化のため、スコープ3カテゴリーに従い、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解して開示しなければならないとしている(第55項参照)。
- (1) スコープ3温室効果ガス排出をカテゴリー別に分解して開示することにより、性質や時間軸が異なる、さまざまな活動に関連する温室効果ガス排出を、排出源別に示すことが可能となる。
- (2) 「適用基準」第28項は、すべての事実及び状況を考慮し、サステナビリティ関連財務開示において情報をどのように集約及び分解するかを決定しなければならないとしているため、重要性がある場合には、スコープ3温室効果ガス排出の絶対総量についても分解して表示することが必要になると考えられる。この点、基準の明確化のため、第55項のようにスコープ3温室効果ガス排出の絶対総量について、カテゴリー別の開示を明示的に要求することが適切である。
- BC149. スコープ3温室効果ガス排出に含まれるカテゴリーは、企業の事実及び状況によって異なると考えられる。企業は15のカテゴリーすべての関連性を考慮することが要求されるものの、すべてのカテゴリーが企業に該当するわけではなく、したがってすべてのカテゴリーについてスコープ3温室効果ガス排出の測定に含める必要がないと決定する場合があると考えられる。
スコープ3カテゴリー15(投資)の温室効果ガス排出の測定及び開示
(2026年改正基準)
- BC149-2. 2025年公表のIFRS S2号の修正では、スコープ3カテゴリー15に含める温室効果ガス排出をファイナンスド・エミッションに限定することができるとする要求事項が含まれている。また、スコープ3カテゴリー15からデリバティブに係る温室効果ガス排出を除外することができるとする要求事項が含まれている。2026年改正基準では、2025年公表のIFRS S2号の修正における要求事項と整合する定めを取り入れることとしている(第56-2項参照)。
- BC149-3. ファイナンスド・エミッションは、スコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出の全部又は一部を構成するものであり、ファシリテーションに係る排出及び保険に関連する排出など、その他の種類のカテゴリー15の温室効果ガス排出とは区別されている。ここで、スコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出について要求される開示をファイナンスド・エミッションに限定した場合、ファシリテーションに係る排出及び保険に関連する排出などの他の種類のカテゴリー15の排出を除外することになると考えられる。
- BC149-4. なお、第56-2項の定めは、温室効果ガス排出を測定及び開示するにあたっての定めであることから、スコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出の測定及び開示をファイナンスド・エミッションに限定した場合においても、ファイナンスド・エミッション以外のカテゴリー15の温室効果ガス排出を含む気候関連の目標がある場合には、その目標に関する情報を開示することは免除されないと考えられる。
- BC149-5. 2026年改正基準は、2025年公表のIFRS S2号の修正における要求事項と同様に、主要な利用者が第56-2項の定めに従いスコープ3カテゴリー15から除外された温室効果ガス排出がどのような活動に関連するものかを理解するために有用な情報として、除外した温室効果ガス排出に関連する金融活動及び除外したデリバティブがある場合、当該デリバティブに関連する金融活動についての説明を求めるとともに、何をデリバティブとして扱ったかについても説明を求めることとしている(第56-3項参照)。
- BC149-6. また、2025年公表のIFRS S2号の修正では、スコープ3の温室効果ガス排出にカテゴリー15が含まれる場合に、カテゴリー15の温室効果ガス排出の合計及びファイナンスド・エミッションの小計の開示が求められている。この点、本基準においては、カテゴリー15の温室効果ガス排出の合計の開示を既に求めていることを踏まえて(第55項参照)、2026年改正基準では、ファイナンスド・エミッションの合計を小計として開示することについて、追加で定めることとしている(第56-4項参照)。
ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示
(ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示の対象)
- BC150. 金融活動に参加する企業は、それらの活動に伴う温室効果ガス排出に関連するリスク及び機会に直面すると考えられる。温室効果ガス排出の多い相手方、借手又は投資先は、技術的変化、供給及び需要のシフト並びに政策変更に関連するリスクの影響を受けやすく、その結果、これらの企業に金融サービスを提供する金融機関に影響を与える場合があると考えられる。これらのリスク及び機会は、信用リスク、市場リスク、レピュテーション・リスク並びにその他の財務及び事務リスクといった形で発生することがあると考えられる。例えば、信用リスクは、これまで以上に厳しくなる炭素税、燃費規制又はその他の政策の影響を受ける顧客への融資に関連して発生する場合があり、信用リスクは、技術シフトによって発生する場合があると考えられる。レピュテーション・リスクは、化石燃料プロジェクトへの融資から発生する場合があると考えられる。商業銀行、投資銀行、資産運用会社及び保険会社を含む金融活動に参加する企業は、企業自身のファイナンスド・エミッションの測定によって、そのようなリスクをこれまで以上にモニタリングし、管理するようになっていると考えられる。この測定は、企業の気候関連のリスク及び機会に対するエクスポージャーに関する指標、並びに企業が企業自身の金融活動を時間の経過とともにどのように適応させる必要がある場合があるかについての指標として機能すると考えられる。
- BC151. ファイナンスド・エミッションは、「スコープ3基準(2011年)」に定義されているとおり、スコープ3のカテゴリー15(投資)の一部である。本基準では、資産運用、商業銀行又は保険に関する活動を行っている企業については、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報が重要であることを踏まえ、IFRS S2号におけるファイナンスド・エミッションの要求事項(IFRS S2号B58項からB63A項)を取り入れ、本基準を構成するガイダンスとして、別紙C「ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示」を定めている(第57項及び別紙C参照)。
- BC152. 本基準は、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示を行う企業の範囲を明確にするため、「産業別ガイダンス」の「産業の説明」を参考に、「資産運用に関する活動」、「商業銀行に関する活動」及び「保険に関する活動」の定義を示し、報告企業がこれらの活動を行っているかどうか判断するにあたり、当該定義を用いることができることとした(第59項参照)。
- BC153. なお、商業銀行に関する活動は、純粋な商業銀行の活動を対象としており、投資銀行及び仲介サービス、不動産金融、消費者金融、資産及び管理業務並びに保険といった、金融機関が行うすべての活動を含むことを意図していない。
- BC154. また、本基準は、保険に関する活動は保険関連の金融活動に限定しており、保険及び再保険産業における引受ポートフォリオについて、「関連する排出」の開示は要求していない。
- BC155. 別紙Cは、革新の余地を認めながら、ファイナンスド・エミッションについて、一貫して、比較可能な開示を強化することを意図している。また、別紙Cは、(「金融向け炭素算定パートナーシップ(PCAF)」が開発したものなど)さまざまな資産クラスについての測定の方法論が出現し、受け入れられるにつれ、それらについて市場が収斂できるようにすることも意図している。別紙Cは、さまざまな測定方法の使用を認めているが、企業のエクスポージャー及び企業がファイナンスド・エミッションを測定するために用いたアプローチを理解するために必要な情報を提供することも求めている。
- BC156. 商業銀行に関する活動について、C5項(3)における「リスクを軽減するための取組みの影響が反映されている場合」とは、例えば、物的担保、金融担保、クレジット・デフォルト・スワップ、気候保険など、信用リスクから融資を保護するために用いられるあらゆる手段が含まれると考えられる。
- BC157. 第57項の定めのとおり、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示を行うかどうかは、銀行や保険会社といった会社形態に着目するのではなく、企業が行う活動に着目することになる。したがって、銀行であってもそのすべての活動がファイナンスド・エミッションに関する情報の開示の対象となることは意図しておらず、また、専ら製造業を営む企業であっても、特定の活動を行う場合にはファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示の対象となると考えられる。
- BC158. ここで、資産運用、商業銀行及び保険に関する活動は、それらを業として営むことについて、多くの法域の法令により規制されており、そのような規制の対象となっている場合には、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示が必要になるかどうかの判断は難しくないと考えられる。一方、規制の対象となっていない場合に、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の開示が必要になるかどうかの判断が難しい場合もあると考えられる。
- BC159. このため、報告企業が資産運用、商業銀行又は保険に関する活動を行う場合であっても、それらを業として営むことについて企業が活動する法域の法令により規制を受けていないときは、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報を開示しないことができる旨を定めることとした(第58項参照)。
- BC160. なお、「適用基準」では、適正な表示に関して、追加的な情報を開示しなければならない状況を定めている(「適用基準」第21項)。ファイナンスド・エミッションに関して、報告企業が資産運用、商業銀行又は保険に関する活動を行っており、かつ、それらを業として営むことについて企業が活動する法域の法令により規制を受けていない場合であっても、「適用基準」第21項の定めにより、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報を開示しなければならない場合があることに留意する必要があると考えられる。
(産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示に関する当面の取扱い)
2025年基準
- BC161. 2025年基準は、IFRS S2号の要求事項を取り入れ、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報を開示することを要求しており(第57項参照)、報告企業が商業銀行又は保険に関する活動を行う場合、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の一部として、報告期間の末日において入手可能な、最新の「世界産業分類基準」(GICS)の6桁の産業レベルのコードを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報を開示することを要求していた(2025年基準C5項(1)②及び(2)①並びにC6項(1)②及び(2)①参照)。
- BC162. 当委員会は、2024年3月公開草案において、GICSが無償で利用可能であるとの想定に基づき、GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示を要求することを提案した。しかし、2024年3月公開草案に対し、GICSを用いるにあたり、民間企業であるGICSのライセンサーからライセンス料の支払を求められる可能性があり、2025年基準においてGICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報を開示することを要求することで、それまでGICSを使用していない企業に対し特定の民間企業へのライセンス料の支払を義務付けることは適切ではないとの意見が寄せられた。
- BC163. この点、開示基準は社会のインフラと考えられ、特に2025年基準が金融商品取引法等の法令のもとで用いられることとなった場合、2025年基準に従った開示を行うために、それまでGICSを使用していない企業に対し特定の民間企業へのライセンス料の支払を義務付ける結果となる定めを設けることは、不適切な場合があると考えられた。
- BC164. また、我が国以外の法域においてもGICSを使用することについて懸念が示されており、当該法域のサステナビリティ開示基準においてIFRS S2号を修正したうえで取り入れることが検討されていた。さらに、2025年基準公表時において、ISSBでは、世界中の法域からの指摘を受け、GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示に関してIFRS S2号を改訂することが検討されていた。
- BC165. GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示は、主要な利用者の意思決定に有用な情報を提供すると考えられる。しかし、上述の理由から、2025年基準では、GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報は、当面の間、開示しないことができるとする取扱いを定めることとした(2025年基準C7項参照)。
- BC166. ここで、BC164項のとおり、2025年基準公表時において、ISSBでは、GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示に関してIFRS S2号を改訂することが検討されていた。「適用基準」BC19項のとおり、当委員会は、本基準公表後の対応として、ISSBによりIFRSサステナビリティ開示基準が改訂される場合には、サステナビリティ開示基準における取扱いについて可及的速やかに検討を開始することとしている。当委員会は、本論点に関してISSBによりIFRS S2号が改訂される蓋然性が高いと考え、C7項について、IFRS S2号の改訂が行われ、当該改訂の内容を踏まえ当委員会が2025年基準を改正するまでの間の暫定的な取扱いとなることを想定して、当面の取扱いとして定めることとしていた。
2026年改正基準
- BC166-2. 2025年公表のIFRS S2号の修正では、BC164項の懸念に対処するために、GICSを用いて産業別に分解した情報を開示する定めが削除され、企業の気候関連の移行リスクに対するエクスポージャーをサステナビリティ関連財務開示の利用者が理解できるようにする情報をもたらす方法で分類することを可能にする産業分類システムを選択することとする要求事項が含まれている。ここで、同じ産業や同じ法域で事業を営んでいる企業など、他の企業によって一般的に用いられている産業分類システムは、企業固有の産業分類システムよりも、情報の比較可能性を高める可能性があるとされている。
- BC166-3. この点、2026年改正基準では、2025年公表のIFRS S2号の修正における要求事項と整合する定めを取り入れることとしている(C5項(1)②、C5項(2)①、C5項(5)、C5項(6)、C6項(1)②、C6項(2)①、C6項(5)及びC6項(6)参照)。
- BC166-4. また、GICSを用いて産業別に分解した情報を開示する定めを削除することに伴い、GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報について、当面の間、開示しないことができるとする2025年基準C7項の取扱い、及びC7項の取扱いを適用した場合の定めであるC8項は、不要になることが考えられる。このため、当該当面の取扱いについては適用を終了することとしている。
(温室効果ガス排出の測定アプローチ等に関する開示)
温室効果ガス排出の測定アプローチに関する開示
- BC167. 本基準は、温室効果ガス排出量を報告するにあたり報告企業として報告する温室効果ガス排出を集計する範囲を決定する方法のことを、温室効果ガス排出の測定アプローチと称している。
- BC168. 本基準は、第49項本文に従い、「GHGプロトコル(2004年)」に従って温室効果ガス排出を測定するにあたり、「GHGプロトコル(2004年)」に定める測定アプローチのうちの1つを選択し、これを開示しなければならないとしている(第60項及び第61項参照)。測定アプローチについて、IFRS S2号は定義をしていないものの、本基準においては、それぞれの測定アプローチを定義し、明示することとした(第6項(15)から(17)参照)。
- BC169. また、第49項ただし書きに従い、「GHGプロトコル(2004年)」とは異なる方法を用いて温室効果ガス排出を測定する場合は、「GHGプロトコル(2004年)」に定める測定アプローチ以外の測定アプローチを複数用いることも考えられるため、第50項及び第51項に基づき温室効果ガス排出量を区分して開示することとした測定方法のそれぞれについて、適用した測定アプローチに関する情報について開示しなければならないとしている(第62項参照)。
温室効果ガス排出の測定方法に関する開示
- BC170. 本基準は、温室効果ガス排出の測定方法として、「直接測定」の場合と「見積り」の場合に分類し、温室効果ガス排出を測定するために使用した活動量や排出係数などの各項目を選択した理由などを開示しなければならないとしている(第63項参照)。なお、当該定めはIFRS S2号の要求事項を取り入れているが、一部表現を言い換えている(BC34項参照)。
- (1) 「直接測定」とは、温室効果ガス排出を直接モニタリングすることをいう。直接測定の場合、温室効果ガス排出量は、次のとおり算定することが多いと考えられる。

- (2) 「見積り」とは、温室効果ガスを排出する活動に関して、活動量に、活動量当たりの温室効果ガス排出を表す排出係数を乗じることにより温室効果ガス排出を見積ることをいう。見積りの場合、温室効果ガス排出量は、次のとおり算定することが多いと考えられる。

- (3) 「活動量」とは、温室効果ガス排出をもたらす企業の活動を表現する数値をいう。
- (4) 「排出係数」とは、利用可能な活動量の単位(例えば、燃料消費量、製品生産量等)と温室効果ガス排出量の絶対値から、温室効果ガス排出量の見積りを可能にする係数をいう。
- BC171. 本基準は、温室効果ガス排出の測定において使用する排出係数を特定していない。その代わりに、温室効果ガス排出を測定するにあたり、企業の活動を最も表現する活動量に対応する排出係数を使用しなければならないとしている(第67項参照)。例えば、企業が事業を営む法域又は活動が行われた法域に関連する排出係数を優先しなければならないと考えられる。
- BC172. 本基準は、見積りにおいて使用する排出係数が、構成する温室効果ガスをCO2相当量に変換したものではない場合、報告期間の末日において利用可能な、最新の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の評価における、100年の時間軸に基づく地球温暖化係数を用いなければならないとしている(第68項本文参照)。なお、地球温暖化係数が含まれているIPCC報告書は、概ね5年から7年ごとに公表されている。
(2026年改正基準)
- BC172-2. 2025年公表のIFRS S2号の修正では、地球温暖化係数について、法域の当局又は企業が上場する取引所が、異なる地球温暖化係数を用いることを企業の全部又は一部に対して要求している場合、企業のその部分について、当該異なる地球温暖化係数を用いることが可能となるようにIFRS S2号の要求事項が修正されている。この点、2025年公表のIFRS S2号の修正における要求事項と同様に、法域の当局又は企業が上場する取引所が、異なる地球温暖化係数を用いることを企業の全部又は一部に対して要求している場合、企業のその部分について、当該異なる地球温暖化係数を用いることができることを明確にすることとしている(第66項ただし書き及び第68項ただし書き参照)。
- BC172-3. BC172-2項について、例えば、我が国の温対法におけるSHK制度に基づく温室効果ガス排出量の報告における地球温暖化係数は、「法域の当局又は企業が上場する取引所が、7種類の温室効果ガスをCO2相当量に変換するうえで異なる地球温暖化係数を用いることを企業の全部又は一部に要求している場合」の地球温暖化係数に該当すると考えられる。
(特定の状況における異なる算定期間の情報の使用)
- BC173. 温室効果ガス排出に関する開示を行うための温室効果ガス排出の測定にあたり、バリュー・チェーン上の各企業から入手した情報の算定期間が報告企業の報告期間と異なる場合がある。そのような場合、バリュー・チェーン上の各企業の温室効果ガス排出に関する情報を報告企業の開示に用いるにあたり、容易に利用可能でないことがあると考えられる。本基準は、温室効果ガス排出の測定にあたり、バリュー・チェーン上の各企業から入手した情報の算定期間が報告企業の報告期間と異なる場合で、一定の要件をすべて満たすときは、報告企業の報告期間とは異なる算定期間の情報を使用して報告企業の温室効果ガス排出を測定することができるとしている(第64項参照)。
- BC174. 特定の状況において報告企業の報告期間と異なる算定期間の情報を使用することができるとする第64項の定めは、スコープ3温室効果ガス排出の測定に限らず、IFRS S2号と同様に、スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出を開示する場合についても適用することができる。IFRS S2号では、スコープ3温室効果ガス排出の測定に限定して適用することを検討していたものの、最終的にはスコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出についても適用することとしたとされている。その理由として、報告企業の投資先に関する温室効果ガス排出に関する情報は、「GHGプロトコル(2004年)」を適用するにあたって用いる測定アプローチによって、スコープ1温室効果ガス排出、スコープ2温室効果ガス排出又はスコープ3温室効果ガス排出に区分される場合があることが挙げられている(IFRS S2号BC101項からBC104項及びBC115項)。
(スコープ3温室効果ガス排出の測定)
スコープ3測定フレームワーク
- BC175. IFRS S2号の「スコープ3測定フレームワーク」は、「スコープ3基準(2011年)」において示されているデータ収集のプロセスを概説したものと考えられる。スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたって用いる要素及び仮定に関するデータの特性は、報告企業がスコープ3温室効果ガス排出の開示を作成するにあたり役立つと考えられる。また、測定において使用した情報の特徴が共通化されることにより、測定にあたって用いる要素及び仮定に関するデータの特性、並びに報告企業が測定にあたって用いる要素及び仮定に組み込むデータをどのように決定しているかを理解するうえで有用な情報を提供することが考えられる。このため、IFRS S2号の「スコープ3測定フレームワーク」に関する定めを本基準に取り入れることとした。
- BC176. 本基準は、「スコープ3測定フレームワーク」のうち、スコープ3温室効果ガス排出の測定及び開示に関して明示的に要求又は容認している事項を第69項から第73項において定め、説明や事例等のガイダンスに相当する部分を、本基準を構成するガイダンスとして、別紙B「スコープ3測定フレームワーク」において記述している。
実務上不可能である場合
- BC177. 本基準は、スコープ3温室効果ガス排出について、2次データ、産業平均データ等を使用して、信頼性をもって見積ることができるという前提を置いている。しかし、スコープ3温室効果ガス排出を見積るにあたり、1次データの収集や保存がなされておらず、産業平均データや第三者のデータ・プロバイダーによる2次データについても収集や保存がなされていない稀な場合、企業が合理的な努力を行ってもスコープ3温室効果ガス排出を測定することができない状況が考えられる。このため、そのような状況を認めたうえで、企業がどのようにスコープ3温室効果ガス排出を管理しているか(管理していない場合は、その旨)について開示することを求めている(第73項参照)。
- BC178. スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたっては、15のカテゴリーに含まれるそれぞれの活動ごとに、活動量と、その活動量に関する排出係数により見積ることになることが多いと考えられる。通常、そのような見積りは可能であると考えられるものの、温室効果ガス排出を見積ることが実務上不可能である部分があると判断する稀な場合、どのようにその部分に関するスコープ3温室効果ガス排出を管理しているかについて開示することは有用であると考えられる。このため、本基準は、第73項の定めを含めることとした。
(スコープ3温室効果ガス排出の範囲の再評価)
- BC179. 「適用基準」第44項は、重大な事象が発生した場合又は状況に重大な変化が発生した場合、バリュー・チェーンを通じて、影響を受けるすべてのサステナビリティ関連のリスク及び機会の範囲を再評価しなければならないとしている。この再評価には、スコープ3温室効果ガス排出の測定において、スコープ3カテゴリーのどのカテゴリー及びバリュー・チェーン上のどの企業を含めるかについての再評価が含まれる(第75項参照)。重大な事象又は状況の重大な変化には、次のものが含まれると考えられる。
- (1) 企業のバリュー・チェーンにおける重大な変化(例えば、企業のバリュー・チェーンにおけるサプライヤーが、温室効果ガス排出を著しく変化させるような変更を行うこと)
- (2) 企業のビジネス・モデル、活動又は企業構造の重大な変化(例えば、企業のバリュー・チェーンを拡張する合併又は買収)
- (3) 気候関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャーの重大な変化(例えば、企業のバリュー・チェーンにおけるサプライヤーが、企業が予想していなかった排出規制の導入の影響を受けること)
(温室効果ガス排出以外の産業横断的指標等に関する考慮事項)
- BC180. 第77項では、第46項(2)から(7)の定めを満たすための開示を作成するにあたり、考慮しなければならない事項を定めている。例えば、企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンにおいて、気候関連のリスク及び機会が集中している部分(第77項(2)参照)については、地域、施設又は資産の種類別に考慮することが考えられる(BC57項参照)。
- BC181. 第46項(2)から(7)の定めを満たすために開示される情報と、関連する財務諸表において開示される情報とのつながり(第77項(5)参照)には、関連する財務諸表の作成に用いるデータ及び仮定との整合性(関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準を考慮したうえで、可能な限り)(「適用基準」第30項)、並びに第46項(2)から(7)に従い開示される情報と財務諸表において認識及び開示される金額との関連付けが含まれると考えられる。例えば、気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産(第79項参照)として開示した資産の帳簿価額が財務諸表に含まれる金額と整合しているかどうかを考慮し、サステナビリティ関連財務開示における情報と財務諸表における金額について説明することになると考えられる。
(気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する開示)
- BC182. 気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する産業横断的指標等は、企業のどの部分に気候関連のリスク及び機会があるのか、その規模はどの程度なのかが理解できるため、有用な情報であると考えられる。
- BC183. このため、本基準は、気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する産業横断的指標等に関連して、次の事項を開示することを要求している(第79項から第81項参照)。
- (1) 気候関連の移行リスク
気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ、又は、気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれか - (2) 気候関連の物理的リスク
気候関連の物理的リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ、又は、気候関連の物理的リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれか - (3) 気候関連の機会
気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ、又は、気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれか - BC184. 気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する産業横断的指標等として開示される情報は、金額であることが多いと考えられるものの、金額以外も排除しないという意味で「数値」という用語を用いている。
- BC185. 第79項から第81項の定めはいずれも、IFRS S2号と同様の定量的情報の開示を求める定めを含むと同時に、IFRS S2号と全く同じ定めではないものの、その開示目的を満たす情報の開示を促進することを目的とした「規模に関する情報」の開示を選択することを認めている。
- BC186. 「規模に関する情報」としているのは、気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する産業横断的指標等について定量的情報による開示を行うことが望ましいと考えられるものの、定性的情報を含め、企業が表現しようとするものをより忠実に表現できる方法を認めることが適切と考えられたためである。例えば、これまで任意に行われてきたサステナビリティ開示の実態を踏まえ、開示対象となる資産又は事業活動の規模について、企業において定量的な範囲を定め、当該範囲に関する説明とともに「大」「中」「小」のように表現した情報を開示することが考えられる。
- BC187. 当委員会における審議の過程では、「リスクに対して脆弱な資産又は事業活動」や「機会と整合した資産又は事業活動」が具体的に何を意味しているのかが明らかではないとの意見が聞かれた。この点、IFRS S2号においても当該用語は明確に説明されていないため、「リスクに対して脆弱な資産又は事業活動」や「機会と整合した資産又は事業活動」としてどのような資産又は事業活動が含まれるのかについては、通常、企業の置かれた状況に即して、その範囲を画定するための考え方を企業が整理したうえで、当該考え方に従って開示の対象とする資産又は事業活動を決定することが、国際的な実務になると考えられる。
- BC188. このため、「リスクに対して脆弱な資産又は事業活動」や「機会と整合した資産又は事業活動」については、本基準を適用するにあたっても、企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、企業の置かれた状況に即して、その範囲を画定するための考え方を企業が整理したうえで、当該考え方に従って開示の対象とする資産又は事業活動を決定することが考えられる。
- BC189. BC188項のようにした場合、「リスクに対して脆弱な資産又は事業活動」や「機会と整合した資産又は事業活動」が何を意味しているのかが企業によって異なる可能性があり、企業間の比較可能性が損なわれることが懸念された。このため、第79項から第81項に基づく開示を行うにあたり、「リスクに対して脆弱な資産又は事業活動」や「機会と整合した資産又は事業活動」にどのような資産又は事業活動が含まれるのかに関しても、あわせて開示することが考えられる。
(資本投下に関する開示)
- BC190. 本基準は、資本投下に関する産業横断的指標等は、識別した気候関連のリスク及び機会に対応するため、企業が実際にどの程度の資本的支出、ファイナンス又は投資を行ったのかを理解するにあたり、有用な情報と考えられること、また、資本投下は、実績を示すものであり、当該情報を作成するために必要なデータは、財務諸表を作成する過程で把握されていると考えられるため、開示のための追加的なコストは少ないと考えられることから、IFRS S2号の要求事項をそのまま取り入れ、産業横断的指標等として、気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資の数値を開示しなければならないとしている(第82項参照)。
- BC191. 資本投下に関する産業横断的指標等として開示される情報は、金額であることが多いと考えられるものの、金額以外も排除しないという意味で「数値」という用語を用いている。
- BC192. 当委員会における審議の過程では、「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」が具体的に何を意味しているのかが明らかではないとの意見が聞かれた。この点、IFRS S2号においても当該用語は明確に説明されていないため、「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」としてどのような資本的支出、ファイナンス又は投資が含まれるのかについては、通常、企業の置かれた状況に即して、その範囲を画定するための考え方を企業が整理したうえで、当該考え方に従って開示の対象とする資本的支出、ファイナンス又は投資を決定することが、国際的な実務になると考えられる。
- BC193. このため、「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」については、本基準を適用するにあたっても、企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、企業の置かれた状況に即して、その範囲を画定するための考え方を企業が整理したうえで、当該考え方に従って開示の対象とする資本的支出、ファイナンス又は投資を決定することが考えられる。
- BC194. BC193項のようにした場合、「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」が何を意味しているのかが企業によって異なる可能性があり、企業間の比較可能性が損なわれることが懸念された。このため、第82項に基づく開示を行うにあたり、「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」にどのような資本的支出、ファイナンス又は投資が含まれるのかに関しても、あわせて開示することが考えられる。
(内部炭素価格に関する開示)
- BC195. 内部炭素価格(第6項(1)参照)は、さまざまな目的で用いられる。企業がよく用いる内部炭素価格には、次のようなものがあると考えられる。
- (1) シャドー・プライス
理論上のコスト又は名目上の金額であり、企業はそれを請求しないものの、リスクの影響、新たな投資、プロジェクトの正味現在価値、さまざまな取組みの費用対効果など、経済的な影響又はトレードオフを理解するために使用することができるもの - (2) 内部税又は手数料
事業活動、製品ライン又は他の事業単位に対して温室効果ガス排出に基づいて請求される炭素価格。内部税又は手数料は、企業内移転価格に類似している。 - BC196. 内部炭素価格を意思決定に用いている場合には、その内容について開示することが主要な利用者にとって有用な情報となり得ると考えられる。また、内部炭素価格に関する情報の開示を一律に求めるのではなく、内部炭素価格を意思決定に用いている場合に開示を求めることにより、開示のために企業に過度の負担がかかることはないと考えられる。このため、本基準は、IFRS S2号の要求事項をそのまま取り入れ、産業横断的指標等として、内部炭素価格に関する情報を開示しなければならないとしている(第83項参照)。
(報酬に関する開示)
- BC197. 昨今、役員報酬の算定方法に、サステナビリティ関連の評価項目が組み込まれる事例が増えていると考えられる。役員報酬に組み込まれる評価項目や各項目のウェイトは、経営者がどのような項目を重視して経営を行うのかという点に影響を与える可能性があり、結果として、企業のパフォーマンスに影響を与える可能性があると考えられる。このため、報酬に関する開示は、基本的には、有用な情報を提供すると考えられる。
- BC198. IFRS S2号では、当期に認識された役員報酬のうち、気候関連の評価項目と結び付いているもののパーセンテージの開示を要求している(IFRS S2号第29項(g)(ⅱ))。本基準においても、原則として同様の定めを取り入れることとした(第84項参照)。
- BC199. しかし、役員報酬の評価項目は、必ずしも気候関連の評価項目とそれ以外の評価項目とに区分して識別できるとは限らないと考えられる。例えば、役員報酬の評価項目が、気候関連以外の生物多様性や人的資本といった項目とあわせてサステナビリティ関連全般となっている場合があると考えられる。このため、本基準では、第84項(1)①及び②の事項について、気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれているものの、他の評価項目とあわせて役員報酬に組み込まれており、気候関連の評価項目に係る部分を区分して識別できない場合には、その旨を開示したうえで、気候関連の評価項目を含む評価項目全体について開示することができることとした(第85項参照)。
- BC200. サステナビリティ開示基準は、開示すべき項目を定めており、記載場所について定めていない。このため、「Ⅲ.コア・コンテンツの開示」の「ⅳ.指標及び目標」において産業横断的指標等として定められている各項目についても、それらをまとめて開示する必要はないと考えられる。報酬に関する開示は、「Ⅲ.コア・コンテンツの開示」の「ⅰ.ガバナンス」において定められている、パフォーマンス指標が報酬に関する方針に含まれているかどうかに関する開示(第10項(6)①及び②参照)と関連させることにより、双方の定めを満たしつつ、有用な情報を提供することが可能になると考えられる。
(産業別の指標の開示)
- BC201. 本基準は、企業に関連する産業別の指標のうち、主なものを開示しなければならないとしており、開示する産業別の指標を決定するにあたり、「産業別ガイダンス」に記述されている、開示トピックに関連する産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮しなければならないとしている(第86項参照)。
(その他の気候関連の指標の開示)
- BC202. IFRS S2号には同様の要求事項が明示的に定められていないものの、「一般基準」は「一般基準」以外のサステナビリティ開示基準を適用する場合でも従う必要がある(「一般基準」BC16項)ため、本基準では、明確化の観点から、その他の気候関連の指標の開示に関して、「一般基準」と同様の定めを設けることとしている(第87項から第91項参照)。
- BC203. 本基準は、企業が作成した気候関連の指標を開示する場合、指標が絶対指標、相対指標又は定性的指標のいずれであるかを開示することを要求している(第89項(2)参照)。ここで、相対指標とは、他の指標との関連で表現されている測定値をいい、例えば、原単位情報や比率が含まれると考えられる。また、定性的指標には、例えば、赤・黄・緑の3色により状態を表したRAGステータス等が含まれると考えられる。
(c) 気候関連の目標
(気候関連の目標の特定)
- BC204. 本基準は、戦略的目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために設定した定量的及び定性的な気候関連の目標並びに企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、これらの目標に関する情報を開示しなければならないとしている(第92項参照)。この情報には、これらの目標の特性に関する情報、企業がこれらの目標をどのように設定しレビューするか、目標のそれぞれに対する進捗をどのようにモニタリングするか、また、目標に対する企業のパフォーマンスに関する情報が含まれると考えられる。
- BC205. 本基準では、気候関連の目標と温室効果ガス排出目標とを区別している。気候関連の目標は、企業が気候関連のリスク及び機会に対応するために設定した目標であればどのような目標も含まれ、温室効果ガス排出目標は、気候関連の目標の一例である。第92項から第96項は、すべての気候関連の目標に関連する事項について定めているが、第97項から第99項は、温室効果ガス排出目標に具体的に関連する事項について定めている。
- BC206. 本基準は、温室効果ガス排出目標を含む、気候関連の目標を企業が設定している場合に、その目標に関する情報を開示することを求めるものであり、企業が気候関連の目標を設定していない場合には、設定することを求めていない。
- BC207. 第92項(4)では、目標が企業全体に適用されるのか、特定の事業や地域などの企業の一部のみに適用されるのかを開示しなければならないとしている。これは、例えば、企業が、ある目標が一部の法域における事業若しくはバリュー・チェーンのパートナーのみに関連するものである旨を開示する場合、又はある目標が特定の製品若しくは製品カテゴリーのみに関連するものである旨を開示する場合があると考えられる。
- BC208. 第92項(8)について、絶対量目標は、測定値の合計又は測定値の合計の変化として表されるものであり、原単位目標は、ビジネス指標に対する測定値の比率、又は当該指標に対する測定値の比率の変化として表されるものであると考えられる。
第三者による認証
- BC209. 本基準は、目標及び目標設定についての方法論が第三者により認証されているかどうかを開示しなければならないとしている(第94項(1)参照)。ここでの「認証」とは、IFRS S2号と同様に、気候関連の目標が、最新の気候科学に関連して第三者によりテストされ、確認されたかどうか、また、第三者によりテストされ、確認された場合、どのようにテストされ、確認されたかという意味で用いている。
- BC210. 本基準は、気候関連の目標が第三者によって認証されているかどうかを開示しなければならないとしているが、気候関連の目標について第三者の認証を入手することは要求していない。
(温室効果ガス排出目標)
温室効果ガス排出の総量(グロス)目標と純量(ネット)目標
- BC211. 本基準は、企業が温室効果ガス排出目標を設定している場合、その目標が温室効果ガス排出の総量(グロス)目標又は温室効果ガス排出の純量(ネット)目標のいずれによるものかを開示しなければならないとしている(第97項(3)参照)。
- BC212. 温室効果ガス排出の総量目標とは、計画されているオフセットによる温室効果ガス排出の削減量(例えば、温室効果ガス排出をオフセットするために使用する計画であるカーボン・クレジットによる温室効果ガス排出の削減量)を考慮しない、企業のバリュー・チェーン内で計画されている温室効果ガス排出目標を意味している。
また、温室効果ガス排出の純量目標とは、温室効果ガス排出の総量目標から、計画されているオフセットによる温室効果ガス排出の削減量を差し引いた排出目標を意味している。 - BC213. 温室効果ガス排出の純量目標を開示する場合、この目標によって、温室効果ガス排出の総量目標に関する情報を不明瞭にしてはならないと考えられる。
- BC214. 本基準は、温室効果ガス排出の純量目標を開示する場合、関連する総量目標を別個に開示しなければならないとしている(第98項参照)。特に、企業が温室効果ガス排出の純量目標を設定している場合、当該目標を達成するために使用するカーボン・クレジットに依拠する方法及び依拠する程度について、明確に説明しなければならない(第99項(1)参照)。これは、当該情報に重要性がある場合に、気候関連の目標(温室効果ガス排出目標を含む。)に関する透明性を確保する必要があると考えられたためである。
カーボン・クレジット
- BC215. 使用する計画があるカーボン・クレジットについては、第99項に定める事項を開示しなければならないが、例えば、カーボン・クレジットに依拠する方法(第99項(1)参照)については、温室効果ガス排出の総量目標のうち、カーボン・クレジットを使用してオフセットする範囲に関する方針について説明することがあると考えられる。また、カーボン・クレジットに依拠する程度(第99項(1)参照)については、温室効果ガス排出の総量目標に対してカーボン・クレジットを使用してオフセットすることを計画している温室効果ガス排出の割合に関して、定量的又は定性的な説明を行うことがあると考えられる。
- BC216. また、第99項に基づく開示の一部として、温室効果ガス排出の純量目標を達成する目的で使用するために購入したカーボン・クレジットに関する情報を含めることがあると考えられる。
セクター別脱炭素アプローチ
- BC217. 本基準は、温室効果ガス排出目標がセクター別脱炭素アプローチを用いて算定されたかどうかについて開示しなければならないとしている(第97項(4)参照)。IFRS S2号では、セクター別脱炭素アプローチは、科学的根拠のある目標イニシアティブ(SBTi)などで用いられている手法であり、国際的なレベルで行われた温室効果ガス排出目標(例えば、気候変動に関する最新の国際協定を通じて設定されたもの)をセクター別のベンチマークに変換し、個別の企業のパフォーマンスを比較できるようにするセクターごとのアプローチであると説明されている(IFRS S2号BC150項)。
Ⅳ.適用時期等
ⅰ.適用時期
(a) 2025年基準
- BC218. 2025年基準では、強制適用時期について定めていなかった。サステナビリティ開示基準に従って開示を行うことが強制される時期については、サステナビリティ開示基準に従って開示を行うことを要求する法令において定められることが想定されたためである。
- BC219. 2025年基準は、2025年に公表された「適用基準」及び「一般基準」と同時に適用しなければならないとしたうえで、公表日である2025年3月5日以後終了する年次報告期間に係る気候関連開示から適用することができるとしていた(2025年基準の第100項及び第101項参照)。
- BC220. 当委員会における審議の過程では、2025年基準の第100項及び第101項のような定めを置くべき理由として、次の意見が聞かれた。
- (1) 企業及び主要な利用者のニーズを踏まえると、可能な限り早いタイミングで適用できるようにすることが適切と考えられる。
- (2) 2025年基準並びに2025年に公表された「適用基準」及び「一般基準」は、開示に関する基準であるため、期首に遡って大量のデータ処理等をやり直すことにはならないと考えられる。このため、公表日以後終了する年次報告期間に係る気候関連開示から適用することとした場合でも対応できる企業はあると考えられ、そのような企業に早いタイミングでの適用を禁止すべきではないと考えられる。
- (3) 2025年基準並びに2025年に公表された「適用基準」及び「一般基準」は、IFRSサステナビリティ開示基準と相当程度、整合性が図られており、IFRSサステナビリティ開示基準を基礎として開示の準備を進めてきた企業においては公表日以後終了する年次報告期間から報告できる場合があると考えられ、これを禁止する理由はないと考えられる。
(b) 2026年改正基準
- BC220-2. 2026年改正基準では、変更に備えるための十分な時間を確保すること、及び、我が国のサステナビリティ開示基準とIFRSサステナビリティ開示基準に同時に準拠した開示を行う企業のニーズを考慮し、2025年公表のIFRS S2号の修正において定められている発効日と整合的に、2027年1月1日以後開始する年次報告期間からの適用とすることとしている(第101-2項参照)。
- BC220-3. また、2026年改正基準によって対処される課題の多くは、当委員会が2025年基準を開発する際に識別していた論点であったことを踏まえると、改正をより早く適用することへの企業のニーズがあると考えられたことから、早期適用を認めることとしている。
- BC220-4. 早期適用の開始時期については、IFRSサステナビリティ開示基準との同時準拠を志向する企業において、2026年改正基準の公表前に終了する年次報告期間であっても、2026年改正基準を早期適用するニーズがあることを考慮し、2025年公表のIFRS S2号の修正の公表日以後終了する年次報告期間について、早期適用ができることとしている。
- BC220-5. さらに、第101-2項における2026年改正基準の適用時期の定めと、2025年基準の第100項及び第101項の定め(BC219項及びBC220項参照)との関係が分かりにくく、円滑な基準の適用を妨げるおそれが生じる可能性があるとの指摘がなされたことを踏まえ、本基準を「適用基準」及び「一般基準」と同時に適用しなければならないとする2025年基準の第100項の定めについて、サステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合には、本基準を含むサステナビリティ開示基準のすべての定めを一体として適用することを定めるものとして明確化することとしている。また、第101項が2025年基準の適用時期に関する定めであることを明確にすることとしている。
ⅱ.経過措置
(a) 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
(本基準の最初の適用)
経過措置が適用される報告期間
- BC221. 第102項及び第103項の経過措置は、法令の定めに基づき本基準を適用する最初の年次報告期間に適用することができる。また、第104項の経過措置は、第103項の経過措置を適用した場合のその後の報告期間において比較情報として情報を表示するにあたり引き続き適用することができる。
- BC222. 法令の定めに基づき本基準を適用する場合、それ以前に任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行っていたかどうかにかかわらず、当該法令に基づき本基準を適用する最初の年次報告期間が「法令の定めに基づき本基準を適用する最初の年次報告期間」となる。
- BC223. なお、法令の定めにおいて、本基準の適用時期を早めることが容認される場合がある。当該法令の定めが容認する内容に基づき企業が適用時期を早めることを選択した場合、本基準を早めて適用する最初の年次報告期間が「法令の定めに基づき本基準を適用する最初の年次報告期間」となる。
経過措置の適用
- BC224. 本基準は、IFRS S2号の経過措置を取り入れ、経過措置を複数定めている。これらの経過措置は、1つ又は複数適用することができるため、すべて又はいずれかの経過措置を適用する場合には、本基準において開示を要求する情報の一部が開示されないことになる。このため、経過措置を適用する場合、どの経過措置を適用しているかが明確になるように、それぞれの経過措置において、当該経過措置を適用している旨をそれぞれ開示しなければならない旨を定めることとした(第102項から第104項参照)。
- BC225. なお、法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で、当該法令において経過措置が定められるときは、当該経過措置に従うことになると考えられる。
(2026年改正基準の適用)
- BC225-2. 2026年改正基準は、2025年公表のIFRS S2号の修正に含まれている経過措置の内容を取り入れ、2026年改正基準を適用する最初の年次報告期間において、実務上不可能でない限り、比較情報を更新することとしている(第104-2項参照)。ここで、法令の定めに基づき2026年改正基準を適用する最初の年次報告期間において比較情報の開示が必要となる企業の数は相当程度限定されることから、この経過措置の影響は限定的であると考えられる。
(b) 任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
(本基準の最初の適用)
- BC226. 「適用基準」は、任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合、前報告期間に係る比較情報を開示しないことができるとしている(「適用基準」第73項(2))。したがって、任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合の経過措置として、法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行うときに適用可能な経過措置のうち、比較情報に関する定めを除いたものを定めることとした(第105項参照)。この場合も、BC224項と同様の理由により、当該経過措置を適用している旨をそれぞれ開示しなければならない。
(2026年改正基準の適用)
- BC226-2. 2026年改正基準では、2026年改正基準を適用する最初の年次報告期間において、比較情報を開示する場合には、法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合と同様に、比較情報を更新することとしている(第105-2項参照)。
- 以 上



