ASSET-SSBJ

基本となる事項 以下は、サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」の一部です。
報告企業
- 5. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同じ報告企業に関するものでなければならない。
- 6. 報告企業が連結財務諸表を作成している場合、サステナビリティ関連財務開示は、親会社及びその子会社のサステナビリティ関連のリスク及び機会が理解できるものでなければならない。
関連する財務諸表
- 7. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表を特定できるようにしなければならない。サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されていない場合、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 関連する財務諸表の入手方法
- (2) 関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準の名称
- 8. サステナビリティ関連財務開示において、通貨が測定単位として特定されている場合、関連する財務諸表の表示に用いる通貨を使用しなければならない。
数値の表示に用いる単位
- 9. サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、当該数値の表示に用いる単位(CO2相当のメートル・トン(mt(e))、グラム(g)、ジュール(J)等)を開示しなければならない。
- 10. サステナビリティ開示基準において別段の定めがある場合を除き、サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、情報を理解しやすくするため、重要性がある情報を省略したり、不明瞭にしたりすることにならない限り、千、百万、十億等の単位を用いて表示することができる。この場合、どの単位を用いているか明示しなければならない。
法令との関係
- 11. サステナビリティ開示基準で要求する情報が、企業が活動する法域の法令によって開示することが禁止されている場合、これを開示する必要はない。法令によって開示することが禁止されていることを理由に重要性がある情報を開示しない場合、開示しない情報の種類及び開示しない根拠となる法令の名称を開示しなければならない。
- 12. 企業が活動する法域の法令によって開示しないことが容認される情報であっても、重要性があるサステナビリティ関連財務情報は開示しなければならない。
商業上の機密情報
- 13. 次のすべての要件を満たす場合、かつ、その場合に限り、サステナビリティ関連の機会に関する情報が、商業上の機密であると企業が判断したときには、当該情報がサステナビリティ開示基準で要求する情報であり、また、当該情報に重要性があったとしても、これを開示しないことができる。
- (1) 当該情報が、一般に利用可能となっていない。
- (2) 当該情報を開示することにより、機会を追求することで実現できる経済的便益を著しく毀損すると合理的に見込み得る。
- (3) 機会を追求することで実現できる経済的便益を著しく毀損することなく、開示に関する定めの目的を満たすことができるように(例えば、集約して)当該情報を開示することができないと企業が判断している。
- 14. 第13項の定めにより開示しないこととした情報項目のそれぞれについて、第13項に従い開示していない旨を開示しなければならない。
- 15. 第13項の定めにより開示しないこととした情報項目のそれぞれについて、各報告期間の末日において、開示しないための第13項の要件がすべて満たされているかどうかを再評価しなければならない。
- 16. 第13項の定めは、サステナビリティ関連のリスクに関して、また、幅広くサステナビリティ関連財務情報を開示しない根拠として用いてはならない。
有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性
- 17. サステナビリティ関連財務情報は、関連性があり、表現しようとしている対象を忠実に表現するものでなければならない。関連性及び忠実な表現は、有用なサステナビリティ関連財務情報の基本的な質的特性である。
- 18. サステナビリティ関連財務情報は、比較可能で、検証可能で、適時で、理解可能であれば、その有用性が補強される。比較可能性、検証可能性、適時性及び理解可能性は、有用なサステナビリティ関連財務情報の補強的な質的特性である。
- 19. 有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性の詳細については、別紙Aにおいて記述している。
適正な表示
Ⅰ.原 則
- 20. サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を適正に表示しなければならない。
- 21. サステナビリティ開示基準における具体的な定めを適用しただけでは、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響を理解するうえで不十分である場合には、追加的な情報を開示しなければならない。
- 22. 情報に重要性がない場合、サステナビリティ開示基準で要求する情報であっても、これを開示する必要はない。たとえサステナビリティ開示基準において、具体的な開示項目を列挙していたり、最低限開示すべき事項を定めていたりする場合であっても、情報に重要性がないときには、これを開示する必要はない。
- 23. サステナビリティ開示基準を適用し、必要に応じて追加的な情報(第21項参照)を開示している場合、サステナビリティ関連財務開示は適正に表示されているものと推定する。
Ⅱ.関連性
- 24. 適正に表示されるサステナビリティ関連財務開示は、関連性を有していなければならない。
- 25. 重要性は、関連性の企業固有の一側面であり、当該企業のサステナビリティ関連財務開示の文脈において、その情報が関連する項目の性質若しくは規模(又はその両方)に基づくものである。
Ⅲ.忠実な表現
- 26. 適正に表示されるサステナビリティ関連財務開示は、忠実に表現されていなければならない。忠実な表現は、サステナビリティ関連のリスク及び機会について、完全で、中立的で、正確な描写を提供しなければならない。
Ⅳ.比較可能性、検証可能性、適時性及び理解可能性
- 27. 適正に表示されるサステナビリティ関連財務開示は、比較可能で、検証可能で、適時で、理解可能な情報を開示しなければならない。
集約及び分解
- 28. サステナビリティ開示基準の適用にあたり、すべての事実及び状況を考慮し、サステナビリティ関連財務開示において情報をどのように集約及び分解するかを決定しなければならない。重要性がある情報を重要性がない情報で不明瞭にしたり、類似していない重要性がある項目を集約したりすることによって、サステナビリティ関連財務開示の理解可能性を低下させてはならない。
つながりのある情報
- 29. 次の種類のつながりを理解できるように情報を開示しなければならない。
- (1) その情報が関連する項目の間のつながり(企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る、さまざまなサステナビリティ関連のリスク及び機会の間のつながりなど)
- (2) サステナビリティ関連財務開示内の開示の間のつながり(ガバナンス、戦略、リスク管理並びに指標及び目標に関する開示の間のつながりなど)
- (3) サステナビリティ関連財務開示と、その他の財務報告書(関連する財務諸表など)の情報との間のつながり
- 30. サステナビリティ関連財務開示の作成に用いるデータ及び仮定は、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準(第7項(2)参照)を考慮したうえで、可能な限り、関連する財務諸表の作成に用いるデータ及び仮定と整合させなければならない(第31項参照)。
- 31. つながりのある情報を提供するにあたり、次のことを行わなければならない。
- (1) 開示の間のつながりを明瞭かつ簡潔に説明する。
- (2) サステナビリティ開示基準が共通の情報項目の開示を要求する場合、不必要な繰り返しを避ける。
- (3) サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり用いたデータ及び仮定と、関連する財務諸表を作成するにあたり用いたデータ及び仮定との間の重大な差異に関する情報を開示する。
合理的で裏付け可能な情報
- 32. サステナビリティ開示基準において、合理的で裏付け可能な情報を用いることを求めている場合、当該定めに従わなければならない。
- 33. 合理的で裏付け可能な情報は、外部環境の一般的な状況のみならず、企業に固有の要因も対象としなければならず、これには、過去の事象、現在の状況及び将来の状況の予想に関する情報が含まれる。サステナビリティ開示基準において、何が合理的で裏付け可能な情報であるかを具体的に定めている場合、当該定めに従わなければならない。
サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示
Ⅰ.原 則
- 34. サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示しなければならない。また、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得ないサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報については、開示する必要はない。
- 35. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示するにあたり、次のことを行わなければならない。
- (1) 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の識別(第36項から第45項参照)
- (2) バリュー・チェーンの範囲の決定(第46項及び第47項参照)
- (3) 識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報の識別(第48項から第59項参照)
Ⅱ.サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別
ⅰ.ガイダンスの情報源
(a) サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別
- 36. サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別しなければならない。
- 37. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するため、第40項から第43項におけるガイダンスの情報源に関する定めを適用しなければならない。
- 38. 第36項に従い企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならない(第32項参照)。
- 39. 第36項に従い企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、情報の網羅的な探索を行う必要はない。
(b) 「適用しなければならない」情報源
- 40. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、サステナビリティ開示基準を適用しなければならない。
(c) 「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源
- 41. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、サステナビリティ開示基準を適用すること(第40項参照)に加え、「SASBスタンダード」(2025年12月最終改訂)における開示トピックを参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。考慮した結果、適用すると結論付ける場合と、適用しないと結論付ける場合とがある。
- 42. 第41項について、「SASBスタンダード」が改訂された場合、「SASBスタンダード」(2025年12月最終改訂)に代えて、改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することができる。
(d) 「参照し、その適用可能性を考慮することができる」情報源
- 43. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、サステナビリティ開示基準を適用すること(第40項参照)に加え、次のガイダンスの情報源を参照し、その適用可能性を考慮することができる。
- (1) IFRSサステナビリティ開示基準及び付属するガイダンス
- (2) 「水関連開示のためのCDSBフレームワーク適用ガイダンス」及び「生物多様性関連開示のためのCDSBフレームワーク適用ガイダンス」(以下あわせて「『CDSBフレームワーク適用ガイダンス』」という。)
- (3) 主要な利用者の情報ニーズを満たすように要求事項が設計されている他の基準設定主体(ISSBを含む。)による直近の公表文書
- (4) 同じ産業又は地理的地域において事業を営む企業によって識別されたサステナビリティ関連のリスク及び機会
ⅱ.サステナビリティ関連のリスク及び機会の範囲の再評価
- 44. 重大な事象が発生した場合又は状況に重大な変化が発生した場合、バリュー・チェーンを通じて、影響を受けるすべてのサステナビリティ関連のリスク及び機会の範囲を再評価しなければならない。
- 45. 第44項にかかわらず、バリュー・チェーンを通じてのサステナビリティ関連のリスク又は機会の範囲について、第44項よりも頻繁に再評価することができる。
Ⅲ.バリュー・チェーンの範囲の決定
- 46. 識別したサステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれに関連して、バリュー・チェーンの範囲(その幅広さ及び構成を含む。)を決定しなければならない。
- 47. 第46項に従いバリュー・チェーンの範囲を決定するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならない(第32項参照)。
Ⅳ.識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報の識別
ⅰ.ガイダンスの情報源
(a) 重要性がある情報の識別
- 48. サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関して、重要性がある情報を開示しなければならない。
- 49. 識別したサステナビリティ関連のリスク又は機会に関する重要性がある情報を識別するため、まず、そのサステナビリティ関連のリスク又は機会に具体的に適用されるサステナビリティ開示基準の定めを適用し(第50項参照)、具体的に適用される定めがサステナビリティ開示基準に存在しない場合、第51項から第55項に定めるガイダンスの情報源に関する定めを適用しなければならない。これらの情報源は、特定のサステナビリティ関連のリスク若しくは機会、特定の産業又は特定の状況において関連性がある場合がある情報(指標を含む。)を特定している。
(b) 具体的に適用される定めがサステナビリティ開示基準に存在する場合
- 50. 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク又は機会に関する情報を開示するために適用される定めを識別するにあたり、そのサステナビリティ関連のリスク又は機会に具体的に適用される、サステナビリティ開示基準の定めを適用しなければならない。
(c) 具体的に適用される定めがサステナビリティ開示基準に存在しない場合
- 51. サステナビリティ関連のリスク又は機会に具体的に適用される定めが、サステナビリティ開示基準に存在しない場合、次のような情報を識別するために判断を行わなければならない。
- (1) 主要な利用者の意思決定に関連性がある情報
- (2) そのサステナビリティ関連のリスク又は機会を忠実に表現する情報
(「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源)
- 52. 第51項で記述された判断を行うにあたり、「SASBスタンダード」(2025年12月最終改訂)に含まれる、開示トピックに関連する指標を参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。考慮した結果、適用すると結論付ける場合と、適用しないと結論付ける場合とがある。
- 53. 第52項について、「SASBスタンダード」が改訂された場合、「SASBスタンダード」(2025年12月最終改訂)に代えて、改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することができる。
(「参照し、その適用可能性を考慮することができる」情報源)
- 54. 第51項で記述された判断を行うにあたり、サステナビリティ開示基準と矛盾しない範囲で、次のガイダンスの情報源を参照し、その適用可能性を考慮することができる。
- (1) IFRSサステナビリティ開示基準及び付属するガイダンス
- (2) 「CDSBフレームワーク適用ガイダンス」
- (3) 主要な利用者の情報ニーズを満たすように要求事項が設計されている他の基準設定主体(ISSBを含む。)による直近の公表文書
- (4) 同じ産業又は地理的地域において事業を営む企業によって開示された情報(指標を含む。)
- 55. 第51項で記述された判断を行うにあたり、主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用であり、また、サステナビリティ開示基準と矛盾しない範囲で、次のガイダンスの情報源を参照し、その適用可能性を考慮することができる。
- (1) 「GRIサステナビリティ・レポーティング・スタンダード」(以下「『GRIスタンダード』」という。)
- (2) 「欧州サステナビリティ報告基準」(以下「『ESRS』」という。)
ⅱ.重要性の判断
(a) 重要性の判断の行使
- 56. 情報に重要性があるかどうか、すなわち、情報が主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得るかどうかを評価するにあたり、それらの利用者の特性及び企業自身の状況を考慮しなければならない。
- 57. 第49項に従い識別した情報が、個別に又は他の情報と組み合わせて、企業のサステナビリティ関連財務開示全体の文脈において重要性があるかどうかを評価しなければならない。情報に重要性があるかどうかを評価するにあたり、定量的要因及び定性的要因(例えば、サステナビリティ関連のリスク又は機会の影響の規模及び性質)の両方を考慮しなければならない。
- 58. 結果が不確実な、将来起こり得る事象に関する情報に重要性があるかどうかを判断するにあたり、次の事項を考慮しなければならない。
- (1) 短期、中期及び長期にわたり、企業の将来キャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性に与える、その事象の潜在的な影響(以下「考えられる結果」という。)
- (2) 考えられる結果の範囲及びその範囲内での考えられる結果の発生可能性
(b) 重要性の判断の再評価
- 59. 状況及び仮定の変化を考慮し、各報告期間の末日において重要性の判断を再評価しなければならない。個別の状況又は外部環境の変化により、過去の期間の企業のサステナビリティ関連財務開示に含まれていた一部の種類の情報が、もはや重要性がない場合がある。逆に、過去に開示されていなかった一部の種類の情報に重要性があるようになる場合がある。
Ⅴ.ガイダンスの情報源に関する情報の開示
- 60. ガイダンスの情報源に関する情報として、次の事項を開示しなければならない。
- (1) サステナビリティ関連財務開示を作成(該当ある場合には、「SASBスタンダード」における開示トピックの識別を含む。)するにあたり適用した、具体的な基準、公表文書、産業の実務及びその他のガイダンスの情報源
- (2) サステナビリティ関連財務開示を作成(適用される指標の識別を含む。)するにあたり適用した、サステナビリティ開示基準、「SASBスタンダード」又は特定の産業に関連するその他のガイダンスの情報源によって特定された産業
- 61. 第60項における、「SASBスタンダード」には、第42項又は第53項に従い改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することとした場合の「SASBスタンダード」が含まれる。
情報の記載場所
Ⅰ.関連する財務諸表との関係
- 62. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表とあわせて開示しなければならない。ただし、次のいずれかに該当する場合、あわせて開示しないことができる。
- (1) 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で、当該法令が、関連する財務諸表とあわせて開示することを禁止しているか、あわせて開示しないことを容認しているとき
- (2) 任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
Ⅱ.他の情報との関係
- 63. サステナビリティ関連財務開示は明瞭に識別可能でなければならず、財務報告書に含まれる他の情報によって不明瞭にならないようにしなければならない。
Ⅲ.相互参照
- 64. サステナビリティ開示基準で要求する情報は、次のすべての要件を満たす場合、相互参照によりサステナビリティ関連財務開示に含めることができる。
- (1) 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で、当該法令が、相互参照により開示を行うことを禁止していない。
- (2) 相互参照により含まれる情報がサステナビリティ関連財務開示の一部となり、サステナビリティ開示基準の定めに準拠している。例えば、当該情報は、第17項及び第18項に定める有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性を有する情報であることが必要である。
- (3) 相互参照される情報が、サステナビリティ関連財務開示と同じ条件で利用可能であり、サステナビリティ関連財務開示が利用可能となる時点で利用可能となっている。
- (4) サステナビリティ関連財務開示が、相互参照により情報を含めることによって理解が難しくならない。
- 65. サステナビリティ関連財務開示の公表を承認する機関又は個人は、相互参照により含められる情報について、直接含められる情報と同じ責任を負う。
- 66. サステナビリティ開示基準で要求する情報が相互参照により含められる場合、サステナビリティ関連財務開示において、当該情報が報告されている報告書を明瞭に識別し、当該報告書の入手方法を説明しなければならない。また、相互参照は、当該報告書の正確に特定された部分に対して行われなければならない。
報告のタイミング
Ⅰ.同時の報告
- 67. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同時に報告しなければならない。ただし、次のいずれかに該当する場合、同時に報告しないことができる。
- (1) 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で、当該法令が、関連する財務諸表と同時に報告することを禁止しているか、同時に報告しないことを容認しているとき
- (2) 任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
Ⅱ.報告期間
- 68. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同じ報告期間を対象としなければならない。ただし、サステナビリティ開示基準において別段の定めがある場合、当該定めが優先して適用される。
Ⅲ.12か月よりも長い期間又は短い期間
- 69. 報告期間の末日を変更して、12か月よりも長い期間又は短い期間についてサステナビリティ関連財務開示を提供する場合、次の事項を開示しなければならない。
- (1) サステナビリティ関連財務開示の報告期間
- (2) 12か月よりも長い期間又は短い期間を使用している理由
- (3) サステナビリティ関連財務開示で開示された数値が完全には比較可能ではない旨
Ⅳ.公表承認日
- 70. サステナビリティ関連財務開示の公表承認日及び承認した機関又は個人の名称を開示しなければならない。
Ⅴ.後発事象
- 71. 報告期間の末日後、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日までに報告期間の末日現在で存在していた状況について情報を入手した場合、新規の情報に照らして、当該状況に関連する開示を更新しなければならない。
- 72. 報告期間の末日後、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日までに発生する取引、その他の事象及び状況に関する情報について、当該情報を開示しないことにより、主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得る場合には、当該情報を開示しなければならない。
比較情報
Ⅰ.比較情報の開示
- 73. 当報告期間に開示されるすべての数値について、前報告期間に係る比較情報を開示しなければならない。また、当報告期間におけるサステナビリティ関連財務開示を理解するうえで有用である場合、説明的及び記述的なサステナビリティ関連財務情報に関する比較情報を開示しなければならない。ただし、いずれにおいても、次のいずれかに該当する場合、前報告期間に係る比較情報を開示しないことができる。
- (1) 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合における当該法令又はサステナビリティ開示基準が、前報告期間に係る比較情報を開示することを禁止しているか、前報告期間に係る比較情報を開示しないことを容認しているとき
- (2) 任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合
Ⅱ.比較情報の更新
- 74. 前報告期間に開示された見積りの数値に関連して、当報告期間において新規の情報を入手し、当該情報が前報告期間に存在していた状況に関する証拠を提供する場合、第75項に該当するときを除き、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 新規の情報を反映して更新された比較対象の数値
- (2) 前報告期間に開示された数値と更新された比較対象の数値との差異
- (3) 比較対象の数値を更新した理由
- 75. 第74項の定めを適用するにあたり、次のいずれかに該当する場合には、比較対象の数値を更新する必要はない。
- (1) 比較対象の数値を更新することが実務上不可能である場合
- (2) 見積りの数値が将来予測的なものである(すなわち、将来起こり得る取引、事象及び他の状況に関連するものである)場合
- なお、事後的判断の使用を伴わない場合、将来予測的な指標に関する比較対象の数値を更新することができる。
- 76. 前報告期間に開示された数値を更新することが実務上不可能である場合、その旨を開示しなければならない。
- 77. 前報告期間に係る説明的又は記述的な開示は、更新する必要はない。
準拠表明
- 78. 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合、当該法令の名称を開示しなければならない。法令の定めに基づかず任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合、その旨を開示しなければならない。
- 79. サステナビリティ関連財務開示が、サステナビリティ開示基準のすべての定めに準拠している場合、明示的かつ無限定の準拠の旨を開示することにより表明しなければならない。サステナビリティ開示基準のすべての定めに準拠しない限り、サステナビリティ関連財務開示がサステナビリティ開示基準に準拠していると記述してはならない。
- 80. 第11項又は第13項のいずれかの定めにより開示しないこととした情報項目がある場合であっても、サステナビリティ開示基準に準拠していると記述することができる。
判 断
- 81. 数値の見積りを伴うもの(第83項参照)とは別に、サステナビリティ関連財務開示を作成する過程で企業が行った判断のうち、サステナビリティ関連財務開示に含まれる情報に最も重大な影響を与える判断に関する情報を開示しなければならない。
- 82. サステナビリティ開示基準において、第81項に従って企業が開示しなければならない事項を具体的に定めている場合がある。
測定の不確実性
- 83. サステナビリティ関連財務開示で報告される数値に影響を与える最も重大な不確実性に関する情報を開示しなければならない。
- 84. 第83項の開示を行うにあたり、次のことをしなければならない。
- (1) 開示された数値のうち、測定の不確実性の程度が高いものを識別する。
- (2) (1)のそれぞれの数値に関連して、次の事項を開示する。
- ① 測定の不確実性の源泉。例えば、将来の事象の結果、測定技法又は企業のバリュー・チェーンからのデータの利用可能性及び品質に数値が依存していること
- ② 数値を測定するにあたり行った仮定、概算及び判断
- 85. サステナビリティ開示基準において、第83項及び第84項に従って企業が開示しなければならない事項を具体的に定めている場合がある。
誤 謬
- 86. 重要性がある過去の報告期間の誤謬について、これを訂正することが実務上不可能でない限り、開示された過去の報告期間の比較対象の数値を修正再表示することによって訂正しなければならない。ただし、法令において、開示された過去の報告期間の比較数値を修正再表示することによって訂正することで、過去の誤謬の解消ができない場合に該当するときは、修正再表示を行わず、当該法令に基づく取扱いに従う。
- 87. 過去の報告期間の誤謬とは、過去の1期以上の報告期間に係る企業のサステナビリティ関連財務開示における脱漏又は誤表示をいう。このような誤謬には、計算上の誤り、指標又は目標の定義の適用の誤り、事実の見落し又は解釈の誤り及び不正行為の影響が含まれる。このような誤謬は、次のような信頼性の高い情報の不使用又は誤用から生じる。
- (1) 当該報告期間のサステナビリティ関連財務開示の公表承認日に利用可能であった情報
- (2) 当該開示を作成するにあたり入手し考慮すると合理的に見込み得る情報
- 88. 表示されている過去のすべての報告期間について誤謬の影響を判断することが実務上不可能である場合、実務上可能な最も古い日付から誤謬を訂正して比較情報を修正再表示しなければならない。
- 89. 過去の報告期間のサステナビリティ関連財務開示に重要性がある誤謬を識別した場合、次の事項を開示しなければならない。
- (1) 過去の報告期間の誤謬の性質
- (2) 表示されている過去の各報告期間について、実務上可能な範囲で訂正した内容
- (3) 誤謬の訂正が実務上不可能である場合、その状態が存在するに至った状況及び誤謬がどのように、また、いつから訂正されているかの説明
- 90. 誤謬の訂正は、見積りの変更とは区別される。見積りは、追加的な情報が知られるに従い、更新することが必要となる場合がある概算をいう。
別紙A:有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性
本別紙について
- A1. 本別紙は、第17項及び第18項に定める有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性の詳細について説明することを目的としており(第19項参照)、本基準を構成するものである。
- A2. 本別紙の内容は、IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(以下「IFRS S1号」という。)付録D「有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性」(以下「IFRS S1号付録D」という。)を基礎としている。
Ⅰ.はじめに
- A3. 「財務報告に関する概念フレームワーク」(以下「『概念フレームワーク』」という。)は、国際会計基準審議会(以下「IASB」という。)により公表された。「概念フレームワーク」は、財務報告書の目的及び財務報告書に適用される概念を記述している。「概念フレームワーク」の目的の1つは、一貫性がある概念に基づく財務諸表の作成のためのIFRS会計基準をIASBが開発することを支援することにある。
- A4. サステナビリティ関連財務開示は、財務報告書の一部である。したがって、「概念フレームワーク」における質的特性は、サステナビリティ関連財務情報に適用される。しかし、本基準の目的(第1項参照)を達成するために要求される情報の一部の性質は、一部の点で財務諸表において提供される情報とは異なる。
- A5. サステナビリティ関連財務情報は、関連性があり、それが表現しようとするものを忠実に表現する場合に有用である。関連性及び忠実な表現は、有用なサステナビリティ関連財務情報の基本的な質的特性である。その情報が比較可能で、検証可能で、適時で、理解可能であれば、サステナビリティ関連財務情報の有用性は補強される。比較可能性、検証可能性、適時性及び理解可能性は、有用なサステナビリティ関連財務情報の補強的な質的特性である。
Ⅱ.有用なサステナビリティ関連財務情報の基本的な質的特性
ⅰ.関連性
- A6. 関連性があるサステナビリティ関連財務情報は、主要な利用者が行う意思決定に相違を生じさせることができる。情報は、一部の利用者がその情報を利用しないことを選択する場合や、既に他の情報源から知っている場合であっても、意思決定に相違を生じさせることができる場合がある。サステナビリティ関連財務情報は、予測価値、確認価値又はこれら両方を有する場合に、利用者の意思決定に相違を生じさせることができる。
- A7. サステナビリティ関連財務情報は、主要な利用者が将来の結果を予測するために用いるプロセスへのインプットとして使用できる場合に、予測価値を有する。サステナビリティ関連財務情報が予測価値を有するためには、予測又は予想である必要はない。予測価値のあるサステナビリティ関連財務情報は、主要な利用者が自らの予測を行うにあたり使用される。例えば、水質情報(汚染されている水に関する情報を含むことがある。)は、地域の水質に関して要求される定めを満たすための企業の能力に関して利用者が行う予想に情報をもたらす可能性がある。
- A8. サステナビリティ関連財務情報は、過去の評価に関するフィードバックを提供する(確認する又は変更する)場合には、確認価値を有する。
- A9. サステナビリティ関連財務情報の予測価値及び確認価値は、相互に関連している。予測価値を有する情報は、確認価値も有することが多い。例えば、当報告期間の温室効果ガス排出に関する情報は、将来の報告期間の温室効果ガス排出を予測するための基礎として利用できるが、過去の年度に行った当報告期間についての温室効果ガス排出に関する予測と比較することもできる。そうした比較の結果は、それらの過去の予測に使用されたプロセスを利用者が修正し改善することに役立つ可能性がある。
ⅱ.重要性
- A10. 情報は、それを省略したり、誤表示したり、不明瞭にしたりしたときに、特定の報告企業に関する情報を提供する報告書に基づいて財務報告書の主要な利用者が行う意思決定に影響を与えると合理的に見込み得る場合には、重要性がある。言い換えれば、重要性は関連性の企業固有の一側面である。情報の重要性は、企業のサステナビリティ関連財務開示の文脈において評価され、その情報が関連する項目の性質若しくは規模(又はその両方)に基づくものである。
ⅲ.忠実な表現
- A11. サステナビリティ関連財務情報は、現象を言葉と数字で表現するものである。有用であるためには、情報は関連性がある現象を表現するだけでなく、表現しようとしている現象の実質を忠実に表現しなければならない。
- A12. 忠実な表現であるためには、描写は完全で、中立的で、正確なものとなる。財務報告書の目的は、これらの特性を可能な限り、最大化することにある。
- A13. サステナビリティ関連のリスク又は機会の完全な描写には、主要な利用者が当該リスク又は機会を理解するうえで必要なすべての重要性がある情報が含まれる。
- A14. サステナビリティ関連財務情報は、中立的でなければならない。中立的な描写は、情報の選択又は開示に偏りがない。情報は、当該情報が主要な利用者に有利又は不利に受け取られる蓋然性を増大させるように、歪曲、重視、強調、抑制又はその他の操作が行われていなければ中立的である。中立的な情報は、目的がない情報でも、行動に影響を与えない情報でもない。その反対に、関連性がある情報は、その定義により、利用者の意思決定に相違を生じさせることができる。
- A15. サステナビリティ関連財務情報の一部(例えば、目標又は計画)は野心的である。このような事項に関する中立的な議論は、野心と、これらの野心を企業が達成することを妨げ得る要因の両方を扱う。
- A16. 中立性は、慎重性の行使によって支えられる。慎重性とは、不確実性がある状況下で判断を行うにあたり警戒心を働かせることをいう。慎重性を行使することは、機会が過大評価されず、リスクが過小評価されないことを意味する。同様に、慎重性の行使は、機会の過小評価又はリスクの過大評価を認めない。
- A17. サステナビリティ関連財務情報は、正確でなければならない。情報は、すべての点で完全に精密でなくても正確であることがある。必要で達成可能な精密性、及び情報を正確なものとする要因は、情報の性質及び情報が関連する事項の性質に依存する。例えば、正確性は、次のすべてを要求する。
- (1) 事実に関する情報に、重要性がある誤謬がない。
- (2) 記述が精密である。
- (3) 見積り、概算及び予想が、そのようなものとして明確に識別されている。
- (4) 見積り、概算又は予想を行うための適切なプロセスを選択し適用するにあたり、重要性がある誤謬が生じていない。
- (5) 見積りを行うために用いられたアサーション及びインプットが合理的で、質的及び量的に十分な情報に基づいている。
- (6) 将来についての判断に関する情報が、当該判断及び当該判断が基づいている情報の両方を忠実に反映している。
Ⅲ.有用なサステナビリティ関連財務情報の補強的な質的特性
- A18. サステナビリティ関連財務情報の有用性は、比較可能で、検証可能で、適時で、理解可能である場合に補強される。
ⅰ.比較可能性
- A19. 財務報告書の主要な利用者の意思決定は、代替案の間の選択を伴う。例えば、投資を売却するか継続保有するか、又は、ある報告企業に投資するか別の報告企業に投資するかである。比較可能性は、項目間の類似点と相違点を利用者が識別し、理解することを可能にする特性である。他の質的特性とは異なり、比較可能性は単一の項目に関連するものではない。比較には少なくとも2つの項目が必要となる。情報は、比較可能でもある場合、すなわち、次のものと比較できる場合には、利用者にとってより有用である。
- (1) 過去の期間に企業が提供した情報
- (2) 他の企業、特に類似した活動を行っている企業又は同じ産業で事業を営んでいる企業が提供した情報
- A20. サステナビリティ関連財務開示は、比較可能性を高める方法で提供しなければならない。
- A21. 一貫性は、比較可能性に関連しているが、これと同じではない。一貫性は、報告企業及び他の企業の両方が、複数の期間を通じて、同じサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する開示を提供するにあたり、同じアプローチ又は方法を用いることをいう。比較可能性が目標であり、一貫性はその目標の達成に役立つものである。
- A22. 比較可能性は、画一性ではない。情報が比較可能であるためには、同様のものは同様に見え、異なるものは異なるように見えなければならない。サステナビリティ関連財務情報の比較可能性は、同様のものを異なるように見せることで比較可能性が高められないのと同様に、同様でないものを同様のように見せることで高められるものではない。
ⅱ.検証可能性
- A23. 検証可能性は、情報が完全で、中立的で、正確であるという自信を利用者に与えるのに役立つ。情報は、その情報自体又はそれを導き出すために利用したインプットのいずれかを裏付けることが可能である場合に、検証可能である。検証可能な情報は、検証可能でない情報よりも主要な利用者にとって有用である。
- A24. 検証可能性は、知識を有する独立したさまざまな観察者が、必ずしも完全な一致ではないとしても、特定の描写が忠実な表現であるという合意に達することができることを意味する。定量化された情報が検証可能であるためには、単一の推定値である必要はない。考えられる数値の範囲とそれに関連する確率も検証可能である。
- A25. サステナビリティ関連財務情報は、検証可能性を高める方法で提供しなければならない。検証可能性は、例えば、次のようにして高めることができる。
- (1) 企業の事業、他の事業、又は企業が事業を営む外部環境に関して、主要な利用者が利用可能な他の情報と比較することで裏付けられる情報を含める。
- (2) 見積値又は概算値を作成するために用いたインプット及び計算方法に関する情報を提供する。
- (3) 企業の取締役会、取締役により構成される委員会又は同等の機関がレビューし、合意した情報を提供する。
- A26. サステナビリティ関連財務情報の一部は、説明又は将来予測的情報として表示される。そのような情報は、例えば、事実に基づいた戦略、計画及びリスク分析を忠実に表現することで裏付けることができる場合がある。主要な利用者がそのような情報を利用すべきかどうかを決定するのに役立てるため、当該情報の基礎となっている仮定及び情報の作成方法について、その情報が企業の実際の計画又は決定を反映している証拠を提供する他の要因とともに記述しなければならない。
ⅲ.適時性
- A27. 適時性とは、意思決定者の意思決定に影響を与えることができるように遅滞なく、情報を利用可能にすることを意味する。一般的に、情報は古くなればなるほど、有用性は低くなる。しかし、情報によっては、報告期間の末日からかなり期間が経過しても引き続き適時性を有することがある。これは、例えば、利用者によっては、トレンドを識別し、評価する必要があることがあるためである。
ⅳ.理解可能性
- A28. サステナビリティ関連財務情報は、明瞭かつ簡潔でなければならない。サステナビリティ関連財務開示が簡潔であるためには、次のことが必要となる。
- (1) 企業に固有ではない一般的な情報(「ボイラープレート」と呼ばれることがある。)を避ける。
- (2) 財務報告書における情報の重複(関連する財務諸表においても提供される情報との不必要な重複を含む。)を避ける。
- (3) 明瞭な言葉遣い並びに明瞭に構成された文及び段落を用いる。
- A29. 開示が取り得る最も明瞭な形式は、その情報の性質によって決まり、記述的な文言に加えて、表、グラフ又は図表を含む場合がある。グラフ又は図表を使用する場合、重要性がある詳細が不明瞭にされることを避けるために、追加的な文言又は表が必要となる場合がある。
- A30. 明瞭性は、報告期間内における進展に関する情報を、複数の期間にわたって変化しない又は変化がほとんどない「常態の」情報と区別することで、高められる場合がある。例えば、前報告期間以降に変更された企業のサステナビリティ関連のガバナンス及びリスク管理のプロセスの特徴を別個に記述するなどである。
- A31. 開示は、重要性がある情報のみを含む場合に簡潔である。重要性がない情報が含まれる場合、重要性がある情報を不明瞭にすることを避ける方法で提供しなければならない。
- A32. サステナビリティ関連のリスク及び機会によっては、本質的に複雑で、理解しやすい方法で表示することが困難なことがあるものもある。そのような情報について、可能な限り明瞭に表示しなければならない。しかし、財務報告書をより理解しやすくするために、これらのリスク及び機会に関する複雑な情報を除外してはならない。そのような情報を除外すれば、そうした報告書は不完全になり、したがって、誤解を招く可能性がある。
- A33. サステナビリティ関連財務情報の完全性、明瞭性及び比較可能性は、情報が一体的な全体として表示されることに依存している。サステナビリティ関連財務情報が一体的であるためには、そのような情報は、文脈及び関連する情報項目の間のつながりを説明する方法で表示しなければならない。
- A34. 企業の財務報告書のある部分に記載されたサステナビリティ関連のリスク及び機会が、他の部分において開示された情報と関係している場合、利用者がそれらの関係を評価するうえで必要な情報を含めなければならない。
- A35. また、一体性は、利用者が企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を財務諸表における情報と関連付けることができるような方法で、情報を提供することを企業に要求する。
結論の背景
報告企業
- BC32. 本基準は、報告企業について、「財務諸表の作成を要求される又はこれを選択する企業」と定義している(第4項(1)参照)。企業は連結財務諸表と個別財務諸表の両方を作成することがあるが、報告企業は、連結財務諸表を作成している場合は連結財務諸表に含まれる企業集団を意味しており、連結すべき子会社が存在しないため連結財務諸表を作成していない場合は個別財務諸表を作成する企業を意味している。
関連する財務諸表
- BC33. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものであると考えられる。本基準は、主要な利用者が関連する財務諸表を特定できるようにするため、サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されていない場合、当該財務諸表の入手方法を開示しなければならないとしている(第7項(1)参照)。
- BC34. また、BC22項からBC25項のとおり、本基準では、サステナビリティ関連財務開示に関連する財務諸表がどの会計基準に準拠して作成されているかにかかわらず、本基準を適用しなければならないとしている(第3項参照)。そのうえで、主要な利用者がサステナビリティ関連財務開示を理解するためには、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準を理解することが必要であると考えられるため、サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されていない場合、当該会計基準の名称を開示しなければならないとした(第7項(2)参照)。なお、サステナビリティ関連財務開示と同じ文書において関連する財務諸表が報告されている場合は、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準は開示されていると考えられる。
- BC35. 本基準は、サステナビリティ関連財務開示について、関連する財務諸表とあわせて開示しなければならないとしているものの(第62項参照)、主要な利用者が関連する財務諸表を特定できるのであれば、サステナビリティ関連財務開示の有用性は大きく変わらないと考えられるため、必ずしも同じ文書において報告することは要求していない。
数値の表示に用いる単位
- BC36. サステナビリティ関連財務開示において報告する数値は、必ずしも金額に限られるものではなく、CO2相当のメートル・トン(mt(e))、グラム(g)、ジュール(J)等、報告の対象とする数値により表示に用いる単位はさまざまであると考えられることから、本基準は、当該数値の表示に用いる単位を開示しなければならないとしている(第9項参照)。
- BC37. サステナビリティ関連財務開示において報告する数値について、第10項における「別段の定め」には、例えば、「気候基準」における温室効果ガス排出量の表示単位(「気候基準」第48項ただし書き)が含まれる。
法令との関係
- BC38. 本基準は、サステナビリティ開示基準において、法令に違反するような開示を要求することは現実的ではないことから、IFRS S1号B33項の定めと同様に、サステナビリティ開示基準で要求する情報が、企業が活動する法域の法令によって開示することが禁止されている場合、当該情報を開示しないことを容認したうえで、重要性がある情報を開示しないときは、開示しない情報の種類及び開示しない根拠となる法令の名称を開示しなければならないとしている(第11項参照)。
商業上の機密情報
- BC39. 本基準は、商業上の機密情報について、サステナビリティ関連の機会に関する情報が、商業上の機密であると企業が判断したときには、一定の要件をすべて満たす場合に限り、開示しないことができるとしている(第13項参照)。当該定めは、別段の定めがある場合を除き、すべてのサステナビリティ関連の機会に関する情報の開示に適用される。
- BC40. ここで、本基準は、サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連の機会に関する情報を開示しなければならないとしている(第34項参照)。しかし、機会に関する情報は、当該情報が競合他社に知られていないがゆえに競争上の優位性を確立できる可能性がある。当委員会における審議の結果、機会に関する情報は、当初は一般に利用可能でない場合でも、いずれ一般に利用可能となる可能性がある一方で、リスクに関する情報が一般に利用可能となる場合は機会に比べ限られると考えられたことから、IFRS S1号と同様に、サステナビリティ関連の機会に関する情報に限定して第13項の取扱いを定めることとした。
- BC41. 当該情報が商業上の機密かどうかを判断するにあたり、例えば、投資者向けの公表物、アナリストに対する説明又はその他の一般に利用可能な文書に既に含まれている情報を開示することにより、実現できる経済的便益を著しく毀損する可能性は低いと考えられる(第13項(1)及び(2)参照)。また、情報の集約について検討する場合は、重要性がある情報が不明瞭にならないようにしつつ、競争上の優位性の喪失に対する企業の懸念が解消する程度に、情報を集約して開示する方法を考慮することになると考えられる(第13項(3)参照)。
- BC42. 商業上の機密情報に関する容認規定を適用する状況を評価した結果、開示しないこととした場合、開示しないこととした情報項目のそれぞれについて開示していない旨を開示しなければならないが(第14項参照)、本基準は、開示していない理由を開示することは要求していない。
有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性
- BC43. 本基準は、サステナビリティ関連財務開示に含まれる情報が、主要な利用者にとって有用な情報となるように、有用な情報が有すると考えられる質的特性について、次の事項を定めている(第17項及び第18項並びにA5項参照)。
- (1) サステナビリティ関連財務情報は、関連性があり、それが表現しようとするものを忠実に表現する場合に有用である。関連性及び忠実な表現は、有用なサステナビリティ関連財務情報の基本的な質的特性である。
- (2) サステナビリティ関連財務情報は、比較可能で、検証可能で、適時で、理解可能であれば、その有用性は補強される。比較可能性、検証可能性、適時性及び理解可能性は、有用なサステナビリティ関連財務情報の補強的な質的特性である。
- BC44. IFRS会計基準を開発するIASBは、IASBが基準を開発するにあたって用いる目的及び基本概念を示すものとして、IFRS会計基準を構成しない文書である「財務報告に関する概念フレームワーク」(「概念フレームワーク」)において、財務情報が有用である場合の質的特性を記述している。
- BC45. ISSBは、基準の開発にあたり、財務情報とは別のサステナビリティ関連財務情報に直接適用される概念フレームワークを有していなかった。しかし、IASBの「概念フレームワーク」が、財務諸表に加え、サステナビリティ関連財務情報を含む財務報告書の主要な利用者のニーズを満たす情報が開示されることを意図して設計されたことから、IASBの「概念フレームワーク」の一部を、サステナビリティ関連財務情報の文脈において手直しし、有用なサステナビリティ関連財務情報が有する質的特性を、要求事項として定めることとしたとしている(IFRS S1号BC64項)。
- BC46. IFRS S1号付録Dは、IFRSサステナビリティ開示基準の一部を構成するため、IFRS S1号に準拠する企業は、IFRS S1号付録Dの定めに従うことが要求される。その結果、IFRS会計基準の一部を構成しないIASBの「概念フレームワーク」とは、異なる取扱いになると考えられる。
- BC47. IFRS S1号付録Dは、財務報告書(サステナビリティ関連財務開示及び財務諸表の両方を含む。)における情報が、当該報告書の主要な利用者に有用であることを確保すること、及び、サステナビリティ関連財務開示の作成において企業を支援するための情報を提供することを意図しているとされている。
- BC48. 本基準は、IFRS S1号付録Dの内容を、別紙A「有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性」に定めている。ISSBと同様に、当委員会もサステナビリティ関連財務情報に直接適用される概念フレームワークを有しておらず、また、質的特性がISSBと異なることとなった場合には、サステナビリティ開示基準を国際的に整合性のあるものとすることが困難になると考えられたためである。
適正な表示
- BC49. 本基準は、企業がサステナビリティ関連財務開示を適正に表示することを求めている。すなわち、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を適正に表示しなければならないとしている(第20項参照)。
- BC50. 適正な表示と質的特性の関係は、次のとおりである(第24項、第26項及び第27項参照)。
- (1) 適正な表示は、有用なサステナビリティ関連財務情報の基本的な質的特性(関連性及び忠実な表現(完全性、中立性及び正確性が必要))を備えていなければならない。
- (2) 適正な表示は、有用なサステナビリティ関連財務情報の補強的な質的特性(比較可能性、検証可能性、適時性及び理解可能性)を備えていなければならない。
集約及び分解
- BC51. サステナビリティ関連財務開示に対する理解可能性を高めるにあたり、情報を集約又は分解することは不可欠であることから、本基準は、集約及び分解に関する定めを置いている(第28項参照)。すなわち、情報を集約することにより重要性がある情報が不明瞭になる場合、情報を集約してはならず、また、情報項目が共有する特性を有している場合は集約しなければならないものの、共有する特性を有していない場合は集約してはならない。
- BC52. 例えば、IFRS S1号では、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報は、所在地又は地政学的な環境を考慮して分解する必要がある場合があるとされており、重要性がある場合には、重要性がある情報が不明瞭にならないように、水の使用に関する情報を分解し、豊富な源泉から取水される水と、水ストレス下にある地域から取水される水とを区別する必要があると考えられる(IFRS S1号B30項)。
つながりのある情報
- BC53. 本基準は、特定の項目の間にあるつながりを理解できるようにする情報を開示しなければならないとしている(第29項参照)。つながりのある情報は、次のものを含む。
- (1) 特定のサステナビリティ関連のリスク又は機会についての、さまざまな種類の情報の間のつながり。例えば、次のものがある。
- ① ガバナンス、戦略及びリスク管理に関する開示の間のつながり
- ② 記述的な情報と定量的な情報との間のつながり(関連する指標及び目標並びに関連する財務諸表に含まれる情報を含む。)
- (2) さまざまなサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する開示の間のつながり。例えば、サステナビリティ関連のリスク及び機会の監督が統合的に管理されている場合、サステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれについての個別の開示ではなく、統合されたガバナンスの開示を提供することが考えられる。
- BC54. つながりのある情報は、例えば、次のように、その情報が関連する項目の間のつながりに関する洞察を提供する。
- (1) 企業が特定のサステナビリティ関連の機会を追求し、その結果、企業の売上高が増加した場合、つながりのある情報は、企業の戦略と財務業績との間の関係を描写する。
- (2) 企業が、自身がさらされている2つのサステナビリティ関連のリスクの間にトレードオフを識別し、当該トレードオフの評価を基礎として行動した場合、つながりのある情報は、それらのリスクと企業の戦略との間の関係を描写する。
- (3) 企業が特定のサステナビリティ関連の目標の達成を約束しているが、財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準における認識規準を満たしていないため、当該約束がまだ企業の財政状態又は財務業績に影響を与えていない場合、つながりのある情報は、その関係を描写する。
- BC55. また、例えば、つながりのある情報を提供するにあたり、企業の戦略が財務諸表及び財務計画に与えている影響又は可能性のある影響について説明する必要がある場合があったり、企業の戦略が目標に向けた進捗を測定するために企業が用いる指標とどのように関連しているかについて説明したりする必要がある場合がある。また、天然資源の使用又は企業のサプライ・チェーン内の変化によって、企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会がどのように増幅され得るか、逆に、縮小され得るかを説明する必要がある場合がある。天然資源の使用又はサプライ・チェーン内の変化についての情報を、企業の製造コストへの現在の又は予想される財務的影響、それらのリスクを緩和するための企業の戦略的な対応並びに新たな資産への関連投資についての情報とつなげる必要がある場合がある。さらに、記述的な情報を、関連する指標及び目標とつなげ、また、関連する財務諸表における情報とつなげる必要がある場合がある。
- BC56. 加えて、つながりのある情報のその他の例は、次のものを含む。
- (1) 企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会並びに企業の戦略が、短期、中期及び長期にわたり企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与える複合的な影響についての説明。例えば、低炭素の代替品を選好する消費者により、企業の製品の需要の減少に直面する場合がある。この際、主要な工場の閉鎖などの企業の戦略的な対応が労働力及び地域コミュニティにどのような影響を与える可能性があるかについて説明する必要がある場合があり、また、そのような閉鎖が資産の耐用年数及び減損の評価に与える影響について説明する必要がある場合がある。
- (2) サステナビリティ関連のリスク及び機会に対応する戦略を策定するにあたり、企業が評価した代替案の記述(企業が考慮した、サステナビリティ関連のリスク及び機会の間のトレードオフ(「一般基準」第23項(3))についての記述を含む。)。例えば、サステナビリティ関連のリスクに対応するための事業再編に関する意思決定について、企業の労働力の将来の規模及び構成への潜在的な影響について説明する必要がある場合がある。
合理的で裏付け可能な情報
Ⅰ.プロポーショナリティの課題への対応
- BC57. 本基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、また、識別したサステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれに関連して、バリュー・チェーンの範囲を決定するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならないとしている(第38項及び第47項参照)。
- BC58. 合理的で裏付け可能な情報を用いるという考え方は、IFRSサステナビリティ開示基準において採用された考え方である。ISSBは、IFRSサステナビリティ開示基準の開発にあたり、関係者から、企業の能力及び準備状況は特に次の事項についてさまざまであるため、その点を考慮することが要望された(IFRS S1号BC8項及びIFRS S2号BC14項)。
- (1) 資源の制約
開示を作成できるようにするために必要なシステム及びプロセスに投資し、それらを運用するコストは、比例的に高い。 - (2) データの利用可能性
市場、産業及びバリュー・チェーンの一部分によっては、高品質な外部データの利用可能性が比較的低いことがある。 - (3) 専門家の利用可能性
企業及び市場によっては、スキル又は専門知識の利用可能性が比較的低いことがある。 - BC59. ISSBは、BC58項の課題を「プロポーショナリティの課題」としてIFRS S1号及びIFRS S2号の適用を支援するための対応を決定し(IFRS S1号BC9項及びIFRS S2号BC15項)、そのような対応の一環として、IFRS S1号及びIFRS S2号の一部の要求事項について、報告期間の末日において企業が過大なコストや労力をかけずに利用可能な、すべての合理的で裏付け可能な情報に基づいて開示を行うことを要求することとした。
- BC60. 合理的で裏付け可能な情報の概念は、追加の開示を要求するものではなく、開示を免除するものでもないものの、当該概念がなければサステナビリティ開示基準に完全に準拠できないこととなる企業を支援することになる。例えば、特定の情報の入手のコストが相対的に高い企業は、自らの状況に基づいて決定される、過大なコストや労力をかけずに利用可能な情報を用いて開示を行うことが認められる。
- BC61. 当委員会においても、高度な判断を要し、測定の不確実性を伴うなどの特定の項目に関して、開示を作成する際の難しさを緩和するために、合理的で裏付け可能な情報を用いるという考えを取り入れるかどうかを検討した。
- BC62. 当委員会における審議の過程では、合理的で裏付け可能な情報を用いて開示を作成することは、すべての開示項目に共通することであり、IFRSサステナビリティ開示基準のように一部の定めに限定して適用すべきでないとの意見も聞かれた。しかし、本基準の定めをIFRSサステナビリティ開示基準と同様の定めとしない場合、本基準の定めを満たすために必要な労力や負担がかけられず、結果として開示される情報に差異が生じる可能性があると考えられたことから、IFRSサステナビリティ開示基準と同様の項目について、合理的で裏付け可能な情報に関する定めを設けることとした。
- BC63. 本基準において、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならないと定めている項目は次のとおりであり、IFRSサステナビリティ開示基準と整合している。

Ⅱ.合理的で裏付け可能な情報の範囲
- BC64. 合理的で裏付け可能な情報の概念は、考慮すべき情報の種類や、そのような情報を入手するために必要な労力の範囲を決定すると考えられる。
- BC65. 何が合理的で裏付け可能な情報であるかを判断するにあたり、次のことを行うことが考えられる。
- (1) 合理的に利用可能なすべての情報(企業が既に有している情報を含む。)を考慮しなければならない。また、既知の情報を無視することは禁じられる。
- (2) 情報を使用するための適切な基礎を有し、情報が裏付け可能となるように、サステナビリティ開示基準の定めを満たさなければならない。
- (3) 報告期間の末日において利用可能な情報(過去の情報、現在の情報又は将来予測的な情報(将来の状況の予想を含む。)など)を考慮しなければならない。
- (4) 情報の網羅的な探索を実施することは求められない(情報は過大なコストや労力をかけずに利用可能であるべきである。)。
- BC66. 何が過大なコストや労力を構成するかの評価は、企業の固有の状況によって異なるため、企業のコスト及び労力、並びに結果として得られる情報の主要な利用者にとっての便益をバランスよく考慮することが要求されると考えられる。また、状況の変化に応じて、その評価は時間の経過とともに変わることがあると考えられる。
- BC67. サステナビリティ関連財務開示の作成にあたっては、企業の内部及び外部のさまざまな情報源が用いられると考えられるが、このような情報源には、企業のリスク管理プロセス、同業他社の経験、並びに外部の格付け、レポート及び統計情報が含まれると考えられる。また、企業が財務諸表の作成、ビジネス・モデルの運用、戦略の策定並びに企業のリスク及び機会の管理に用いる情報は、過大なコストや労力をかけずに利用可能であるとみなされると考えられる。
- BC68. なお、サステナビリティ関連のリスク又は機会に関する情報の有用性が大きくなるほど、より大きな労力がかかることが多いため、当該概念は、労力をかける必要はないと結論付けるものではないと考えられる。
サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示
Ⅰ.原 則
- BC69. 本基準では、サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示しなければならないとしている(第34項参照)。
当該情報を開示するにあたり、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、識別したサステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれに関連してバリュー・チェーンの範囲(その幅広さ及び構成を含む。)を決定し、識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報を識別しなければならない(第35項参照)。 - BC70. サステナビリティ関連のリスク及び機会は、企業と、当該企業のバリュー・チェーンを通じての企業の関係者、社会、経済及び自然環境との間の相互作用から生じると考えられる。これらの相互作用は、直接的である場合も間接的である場合もあり得るが、企業が戦略上の目的を追求してそのビジネス・モデルを実践すること及び企業が事業を営む外部環境を通じて、企業と資源及び関係との間の相互依存的なシステムの中で行われる。すなわち、企業がキャッシュ・フローを生み出すためにバリュー・チェーンを通じての資源及び関係に依存し、それらの資源及び関係を用いて行われる企業の活動や活動の結果として生じるアウトプットが企業の依存する資源及び関係に影響(それらの資源及び関係の維持、再生及び発展又は劣化及び枯渇等)を与えることにより、サステナビリティ関連のリスク及び機会が生じることがある。
- BC71. 例えば、企業のビジネス・モデルが、水のような天然資源に依存している場合、企業は、当該資源の質、利用可能性及び購入可能性に影響を与えると同時に、当該資源から影響を受ける可能性がある。具体的には、当該資源の劣化又は枯渇(企業自身の活動及びその他の要因から生じるものを含む。)は、企業の事業に混乱をもたらすリスクを生み出し、ビジネス・モデル又は戦略に影響を与える可能性があり、また、究極的には、財務業績及び財政状態に不利な影響を与える可能性がある。一方、当該資源の再生及び維持(企業自身の活動及びその他の要因から生じるものを含む。)は、企業に有利な影響を与える可能性がある。同様に、企業が、競争が非常に激しい市場で事業を営んでおり、その戦略上の目的を達成するために高度に専門的な労働力を必要とする場合、企業の将来の成功は、当該資源を惹きつけて維持する企業の能力に依存する可能性が高い。同時に、当該能力は、企業が従業員の研修及び福利に投資しているかどうかなどの企業の雇用慣行並びに従業員の満足度、対話及び定着率のレベルに部分的に依存する。これらの例は、企業が他者のために生み出し、維持し、又は毀損する価値と、企業が成功し目標を達成する企業自身の能力との間の密接な関係を示している。
- BC72. 企業がその活動及びアウトプットによって依存し、また影響を与える資源及び関係は、自然、人工、知的、人的、社会的又は財務的など、さまざまな形をとり得る。これらは、企業の労働力、ノウハウ又は組織プロセスなど、内部的なものであることもあれば、企業がアクセスする必要がある材料及びサービス、又はサプライヤー、流通業者及び顧客との関係など、外部的なものであることもある。さらに、資源及び関係には、企業の財務諸表において資産として認識される資源及び関係が含まれるが、これらに限定されない。
- BC73. 企業の依存関係及びインパクトは、当該企業が直接関与する資源や、当該企業の直接的な関係に限定されない。それらの依存関係及びインパクトは、当該企業のバリュー・チェーンを通じて資源及び関係にも関連する。例えば、企業の供給チャネル及び流通チャネル、企業の製品の消費及び廃棄の影響並びに企業の資金源及び投資(関連会社及び共同支配企業への投資を含む。)に関連する可能性がある。企業のバリュー・チェーンを通じてのビジネス・パートナーがサステナビリティ関連のリスク及び機会に直面した場合、企業自身も関連する結果にさらされる可能性がある。
Ⅱ.サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別
ⅰ.ガイダンスの情報源
(a) ガイダンスの情報源の目的
- BC74. 本基準は、企業がサステナビリティ関連のリスク及び機会並びに当該リスク及び機会に関する重要性がある情報を識別するために用いるガイダンスの種類を「ガイダンスの情報源」として定めている(第40項から第43項及び第50項から第55項参照)。
- BC75. 企業が参照するガイダンスの種類を定めることで、開示される情報が一定の範囲に含まれる可能性があり、同業他社が提供する情報との比較可能性や、具体的に適用されるサステナビリティ開示基準の定めが存在しない場合に提供される情報との比較可能性が改善されることが考えられ、また、企業が参照するガイダンスを自ら探すコストが低減されることが考えられる。
- BC76. サステナビリティ開示基準は、本基準のほか、当面の間は、IFRS S1号及びIFRS S2号に相当する「一般基準」及び「気候基準」しか存在しない状態となることが見込まれるが、このような状況において、ガイダンスの情報源に関する定めを設けない場合、どのようなリスク及び機会を識別し、どのような開示を行うべきかを検討するにあたり、企業は際限なく多様なガイダンスを参照することになる可能性があり、開示のための負担が過大になる可能性があると考えられる。このため、サステナビリティ開示基準においても、ガイダンスの情報源に関する定めを設けることとした。
- BC77. 報告すべきサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、今後新たに開発されたサステナビリティ開示基準が参照されていくことで、当初よりも本基準で定められているガイダンスの情報源に依存することが少なくなると考えられる。しかし、サステナビリティ開示基準が新たに開発された場合でも、ガイダンスの情報源に関する定めは、企業がサステナビリティ関連のリスク及び機会並びに当該リスク及び機会に関して提供すべき情報を識別するにあたり、依然として有用であると考えられる。
(b) ガイダンスの情報源の種類
- BC78. 本基準のガイダンスの情報源には、「適用しなければならない」と定めているもの(第40項及び第50項参照)、「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」と定めているもの(第41項及び第52項参照)及び「参照し、その適用可能性を考慮することができる」と定めているもの(第43項並びに第54項及び第55項参照)がある。
- (1) 「適用しなければならない」場合とは、当該ガイダンスに記載されている事項が要求されることを意味している。
- (2) 「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」場合とは、当該ガイダンスを参照し、その適用可能性を考慮することは要求されるものの、当該ガイダンスに記載されている事項(例えば、特定の指標を開示すること)は、要求されないことを意味している。
- (3) 「参照し、その適用可能性を考慮することができる」場合とは、当該ガイダンスを参照することも、その適用可能性を考慮することも要求されないことを意味している。
(c) 「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源
- BC79. 本基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、また、識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報を識別するにあたり、「SASBスタンダード」を「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源としている(第41項及び第52項参照)。
本基準において「SASBスタンダード」とは、IFRS財団が2022年8月に統合した旧価値報告財団のサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が開発した、77の産業別のサステナビリティ開示基準を示している。 - BC80. IFRS S1号では、ガイダンスの情報源の「適用可能性を考慮しなければならない」という要求事項について、どのような場合に「適用可能性を考慮しなければならない」という要求事項を満たしたことになるのかが明示されていない。
- BC81. この点、本基準は、考慮したガイダンスに記載されている事項について網羅的に検討することを想定していない。このため、例えば、どの産業に関するガイダンスを参照することとしたのか、当該産業に関するガイダンスに記載されているリスク及び機会のうち、どれを企業のリスク及び機会として識別したのか、当該産業に関するガイダンスにおけるリスク及び機会について記載されている指標等のうち、どれについて開示することとしたのか等について、その理由を検討することが考えられる。
- BC82. なお、どのガイダンスの情報源を適用すべきかの決定が、第81項に基づく、サステナビリティ関連財務開示に含まれる情報に最も重大な影響を与える判断に関する情報の開示対象となった場合には、企業が検討した事項の全部又は一部について、サステナビリティ関連財務開示に記載することもあると考えられる(BC158項(2)参照)。この定めを適用するにあたり、考慮した特定のガイダンスの情報源を適用した旨を開示するとともに、他のガイダンスの情報源についても考慮したものの、当該他のガイダンスの情報源を適用しなかった旨も開示することが必要となる場合がある。
- BC83. また、本基準は、「SASBスタンダード」が改訂された場合、改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することができるとしている(第42項及び第53項参照)。
- BC84. 本基準において「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することを要求する場合、当委員会において「SASBスタンダード」の内容を検討することと、「SASBスタンダード」の日本語訳を利用可能にすることの両方が必要になると考えられる。したがって、「SASBスタンダード」が改訂された場合、本基準を適用するにあたり、自動的に改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することは要求されず、当委員会において改訂後の「SASBスタンダード」の内容を検討し、適正手続を経て本基準を改正してから、改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することが要求されることになる。また、改正する本基準の適用時期は、改訂後の「SASBスタンダード」の日本語訳が利用可能となってから、十分な期間をとる必要があると考えられる。
- BC85. 一方、IFRSサステナビリティ開示基準においては、「SASBスタンダード」が改訂された場合、自動的に改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮しなければならないと考えられる。この点、IFRSサステナビリティ開示基準と同様に、自動的に改訂後の「SASBスタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することについてのニーズが認められたことから、改訂後の「SASBスタンダード」の原文を参照し、その適用可能性を考慮することができることとした。なお、この選択を行った場合には、その旨の開示がなされることになると考えられる(第60項及び第61項参照)。
(2026年改正基準)
- BC85-2. 2025年12月に、IFRS S2号の修正に伴う結果的修正として「SASBスタンダード」が修正されたことに伴い、本基準において参照する「SASBスタンダード」を「SASBスタンダード」(2025年12月最終改訂)に更新している。
(d) 「参照し、その適用可能性を考慮することができる」情報源
- BC86. 本基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するにあたり、また、識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報を識別するにあたり、サステナビリティ開示基準を適用することに加え、次のガイダンスの情報源を参照し、その適用可能性を考慮することができるとしている(第43項及び第54項参照)。
- (1) IFRSサステナビリティ開示基準及び付属するガイダンス
- (2) 「CDSBフレームワーク適用ガイダンス」
- (3) 主要な利用者の情報ニーズを満たすように要求事項が設計されている他の基準設定主体(ISSBを含む。)による直近の公表文書
- (4) 同じ産業又は地理的地域において事業を営む企業によって識別されたサステナビリティ関連のリスク及び機会並びに開示された情報(指標を含む。)
- BC87. なお、サステナビリティ開示基準は、財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な情報を開示することを企業に求めることを目的としている。このため、サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別する段階においては、「GRIスタンダード」及び「ESRS」を参照し、その適用可能性を考慮することはできない(BC98項からBC100項参照)。
ⅱ.サステナビリティ関連のリスク及び機会の範囲の再評価
- BC88. 本基準は、重大な事象が発生した場合又は状況に重大な変化が発生した場合、バリュー・チェーンを通じて、影響を受けるすべてのサステナビリティ関連のリスク及び機会の範囲を再評価しなければならないとしている(第44項参照)。
- BC89. 重大な事象又は状況の重大な変化は、企業がその事象又は状況の変化に関与していない場合でも発生することがある。また、主要な利用者にとって重要であると企業が評価する内容が変化することにより発生することもある。そのような重大な事象又は状況の重大な変化には、次のものが含まれる場合がある。
- (1) 企業のバリュー・チェーンにおける重大な変化(例えば、企業のバリュー・チェーンにおけるサプライヤーが、温室効果ガス排出を著しく変化させるような変更を行うこと)
- (2) 企業のビジネス・モデル、活動又は企業構造の重大な変化(例えば、企業のバリュー・チェーンを拡張する合併又は買収)
- (3) サステナビリティ関連のリスク及び機会に対する企業のエクスポージャーの重大な変化(例えば、企業のバリュー・チェーンにおけるサプライヤーが、企業が予想していなかった新しい規制の導入の影響を受けること)
- BC90. IFRS S1号は、バリュー・チェーンを通じてのサステナビリティ関連のリスク及び機会の範囲のそれぞれを再評価することにより得られる便益は、通常、重大な変化が発生した場合にのみ、企業が負担することとなるコストを上回ると考えられたことから、各報告期間の末日において再評価することを要求しないこととしたとしている(IFRS S1号BC60項)。本基準においてもこの考え方を取り入れ、重大な事象が発生した場合又は状況に重大な変化が発生した場合に再評価しなければならないとしている。
- BC91. なお、本基準は、IFRS S1号と同様に、バリュー・チェーンを通じてのサステナビリティ関連のリスク又は機会の範囲について、より頻繁に(例えば、毎年)再評価することができるとしている(第45項参照)。
Ⅲ.バリュー・チェーンの範囲の決定
ⅰ.バリュー・チェーンの範囲の決定
- BC92. 本基準は、識別したサステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれに関連して、バリュー・チェーンの範囲(その幅広さ及び構成を含む。)を決定しなければならないとしている(第46項参照)。バリュー・チェーンには、製品又はサービスの構想から提供、消費及び終了まで、企業が利用し依存する、次のような相互作用、資源及び関係が含まれると考えられる。
- (1) 企業の事業における相互作用、資源及び関係(人的資源など)
- (2) 企業の供給チャネル、マーケティング・チャネル及び流通チャネルにおける相互作用、資源及び関係(材料及びサービスの調達、製品及びサービスの販売及び配送など)
- (3) 企業が事業を営む財務的環境、地理的環境、地政学的環境及び規制環境
- BC93. 本基準は、識別したサステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれに関連してバリュー・チェーンの範囲を決定するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いることを定めている(第47項参照)。
ⅱ.共同支配企業、関連会社及び投資
- BC94. 共同支配企業、関連会社及び投資は、財務諸表において認識されているものの、連結財務諸表を作成する主体である報告企業の一部とはみなされない。財務諸表においてこれらの投資が認識され、関連会社及び共同支配企業の業績の一部が報告されているのと同じように、これらの投資に関連するサステナビリティ関連財務情報についても、主要な利用者がサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響を評価するにあたり関連性がある情報を報告する。
- BC95. 本基準は、IFRS S1号と同様に、共同支配企業、関連会社及び投資に関するサステナビリティ関連財務情報をどのように開示に含めるかを定めていない。しかし、特定のサステナビリティ開示基準(例えば、「気候基準」)では、企業のバリュー・チェーン全体を通じて生じるサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めている。
Ⅳ.識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報の識別
ⅰ.ガイダンスの情報源
(a) 具体的に適用される定めがサステナビリティ開示基準に存在する場合
- BC96. 本基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク又は機会に関する情報を開示するために適用される定めを識別するにあたり、そのサステナビリティ関連のリスク又は機会に具体的に適用される定めがサステナビリティ開示基準に存在する場合、当該定めを適用しなければならないとしている(第50項参照)。一方で、本基準は、サステナビリティ開示基準における具体的な定めを適用しただけでは、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響を理解するうえで不十分である場合には、追加的な情報を開示しなければならないとしている(第21項参照)。このため、開示される情報は、必ずしもサステナビリティ開示基準において具体的に開示を求めているものに限定されない。
(b) 具体的に適用される定めがサステナビリティ開示基準に存在しない場合
- BC97. 識別したサステナビリティ関連のリスク又は機会に具体的に適用される定めが、サステナビリティ開示基準に存在しないことが考えられる。このため、本基準は、具体的に適用される定めがサステナビリティ開示基準に存在しない場合、主要な利用者の意思決定に関連性があり、識別したサステナビリティ関連のリスク及び機会を忠実に表現する情報を識別するために判断を行わなければならないことについて定めている(第51項参照)。第52項から第55項では、当該判断を行うにあたり用いるガイダンスの情報源を示している。
(c) 「GRIスタンダード」及び「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」
- BC98. 本基準は、サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別した後に、開示すべき情報を識別するために、一定の要件をすべて満たす場合、「GRIスタンダード」及び「ESRS」を参照し、その適用可能性を考慮することができるとしている(第55項参照)。
- BC99. ガイダンスの情報源において「GRIスタンダード」及び「ESRS」を参照することは、他のサステナビリティ報告に関する要求事項との相互運用可能性を改善し、企業(特に、既に指標若しくは他の情報を提供するために「GRIスタンダード」を使用している企業又は「ESRS」に準拠することが強制される企業)の負担を軽減させるのに役立つ可能性がある。しかし、「GRIスタンダード」及び「ESRS」は、財務報告書の主要な利用者よりも幅広い人々の情報ニーズを満たすことを意図しているため、これらの基準に従って提供される開示の一部のみが、財務報告書の主要な利用者に有用な情報を提供することになる可能性がある。
- BC100. このため、「GRIスタンダード」又は「ESRS」を用いる場合、「GRIスタンダード」又は「ESRS」に従って作成された報告書を、サステナビリティ開示基準における定めを満たすために単純に再利用することはできない。すなわち、サステナビリティ開示基準で要求している重要性がある情報を、重要性がない情報で不明瞭にしないように、また、「GRIスタンダード」又は「ESRS」を用いて識別した情報が、財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用であり、また、サステナビリティ開示基準と矛盾しない範囲で、「GRIスタンダード」又は「ESRS」を参照し、その適用可能性を考慮することができる(第55項参照)。
ⅱ.重要性の判断
(a) 重要性の定義
- BC101. 本基準では、IFRSサステナビリティ開示基準における重要性の定義を取り入れ、サステナビリティ関連財務開示の文脈において、ある情報は、それを省略したり、誤表示したり、不明瞭にしたりしたときに、財務諸表及びサステナビリティ関連財務開示を含む、特定の報告企業に関する財務情報を提供する当該報告書に基づいて財務報告書の主要な利用者が行う意思決定に影響を与えると合理的に見込み得る場合には、重要性があるとしている(第4項(7)及びA10項参照)。
- BC102. IFRSサステナビリティ開示基準における重要性の定義は、IASBの「概念フレームワーク」及びIAS第1号と整合的に定義されたものである。
(財務報告書の主要な利用者)
- BC103. 重要性の定義は、サステナビリティ関連財務開示に固有のものであり、重要性の判断は、特定の報告企業のサステナビリティ関連財務開示の文脈において、主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得る情報に焦点を当てて行われる。また、重要性の定義は、主要な利用者が、企業が公表するさまざまな情報を用いて意思決定を行っていることを踏まえている。
- BC104. サステナビリティ関連財務開示は、事業及び経済活動についての合理的な知識を有し、勤勉さをもって情報を検討し分析する主要な利用者のために作成される。
- BC105. 主要な利用者の情報ニーズはそれぞれ異なる場合があり、時にはそれらのニーズが相反する場合もある。また、時間の経過とともに変化する場合もある。サステナビリティ関連財務開示は、主要な利用者のすべての情報ニーズを満たすことは意図しておらず、共通の情報ニーズを満たすことを意図している。
- BC106. 主要な利用者が行う意思決定のうち、主要なものは企業への資源の提供に関連しており、これには次の意思決定が含まれる。
- (1) 資本性金融商品及び負債性金融商品の購入、売却又は継続保有
- (2) 貸付金及び他の形態による信用の供与又は決済
- (3) 企業の経済的資源の利用に影響を与える企業の経営者の行動に対して投票を行う又は他の方法で影響を与える権利の行使
- BC107. BC106項に記載されている意思決定は、主要な利用者が期待するリターン、例えば、配当、元本及び利息の支払又は市場価格の上昇に依存する。それらの期待は、企業への将来の正味キャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性に関する主要な利用者の評価、並びに企業の経営者及びガバナンス機関又は個人による企業の経済的資源に係る受託責任に関する主要な利用者の評価に依存する。
(サステナビリティ関連財務開示に関する重要性の判断)
- BC108. サステナビリティ関連財務開示に関する重要性の判断は、財務諸表に関する重要性の判断と必然的に異なるものとなる。異なる重要性の判断が必要となるのは、サステナビリティ関連財務開示と財務諸表とは、それぞれの固有の目的を果たし、報告企業に関する異なる種類の情報を提供するためである。サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を提供する一方、財務諸表は、企業の資産、負債、資本、収益及び費用に関する情報を提供する。
- BC109. サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報は、資産及び負債の定義並びにそれらの認識規準による制約を受けない。また、サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり、財務諸表の作成にあたって考慮する期間よりも長い期間にわたる財務的影響を考慮しなければならないことが多いことが予想される。さらに、サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり、バリュー・チェーンを通じての相互作用の財務的影響を考慮することが必要となる。加えて、サステナビリティ関連財務情報は、財務諸表に含まれる情報と比較して異なる測定基礎を有する場合がある。
(b) 重要性の判断の行使
- BC110. IFRSサステナビリティ開示基準では、重要性の判断は企業に固有のものであり、したがって、重要性についての量的閾値を特定することや、特定の状況において何が重要性があるものとなり得るかを前もって決定することはしていないとしている(IFRS S1号B19項)。本基準もこの考え方を取り入れ、重要性についての量的閾値を特定することや、特定の状況において何が重要性があるものとなり得るかを前もって決定することはしていない。
- BC111. 本基準は、結果が不確実な、将来起こり得る事象に関する情報に重要性があるかどうかを判断するにあたり、考えられる結果を考慮しなければならないとしている(第58項参照)。考えられる結果を考慮するにあたり、すべての関連する事実及び状況を考慮しなければならないと考えられる。将来起こり得る事象に関する情報は、潜在的な影響が重大であり、その事象が発生する可能性が高い場合、重要性があると判断される可能性がより高くなると考えられる。
- BC112. 発生可能性は低いものの影響が大きい結果に関する情報は、個別に、又は、発生可能性は低いものの影響が大きい結果に関する他の情報と組み合わせて、重要性がある場合があるかどうかを考慮しなければならないと考えられる。例えば、企業は複数のサステナビリティ関連のリスクにさらされている場合があるが、それらのリスクは、それぞれ同じ種類の混乱(例えば、企業のサプライ・チェーンの混乱)を引き起こす可能性がある。個々のリスクの源泉に関する情報は、そのリスクの源泉により混乱が発生する可能性が非常に低い場合、重要性がないことがある。しかし、集約されたリスク(すべての源泉からのサプライ・チェーンの混乱のリスク)に関する情報は、重要性があることがある。
- BC113. 将来起こり得る事象が企業のキャッシュ・フローに影響を与えると見込まれるものの、それが何年も先のことである場合、通常、その事象に関する情報は、より早く発生することが見込まれる同様の影響を伴う将来起こり得る事象に関する情報よりも、重要性があると判断される可能性は低いと考えられる。ただし、状況によっては、将来の事象の潜在的な影響の規模又はその事象の発生時期に関係なく、情報項目が主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得ることがある。例えば、特定のサステナビリティ関連のリスク又は機会に関する情報が、主要な利用者によって厳しく精査されている場合、このような状況が生じることがある。
- BC114. 重要性の判断を行う際には、発生可能性は低いものの潜在的に大きな影響を与えるリスク及び機会を考慮する。このため、次の事項についても考慮することが考えられる。
- (1) 企業の活動が環境及び社会に与える影響と、環境及び社会が企業のキャッシュ・フロー、ファイナンスへのアクセス及び資本コストに与える影響との関係
- (2) 時間の経過に伴う仮定及び条件の変更
- (3) 主要な利用者の情報ニーズの潜在的な変化
Ⅴ.ガイダンスの情報源に関する情報の開示
- BC115. IFRS S1号では、サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり適用した、具体的な基準、公表文書、産業の実務及びその他のガイダンスの情報源並びにサステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり特定した産業について識別することを要求している(IFRS S1号第59項)。
- BC116. BC115項における事項は、サステナビリティ関連財務開示の作成の基礎となる事項であり、主要な利用者がサステナビリティ関連財務開示を理解するうえで有用と考えられるため、本基準では、これらの事項の開示を要求することとした(第60項参照)。
情報の記載場所
Ⅰ.関連する財務諸表との関係
- BC117. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものであると考えられるため、両者があわせて開示されることにより、提供される情報の理解可能性が高まり、情報の利便性も向上すると考えられる。したがって、本基準は、一定の条件を満たす場合を除きIFRS S1号の要求事項を取り入れ、サステナビリティ関連財務開示について、関連する財務諸表とあわせて開示しなければならないとした(第62項参照)。なお、BC35項のとおり、本基準は、サステナビリティ関連財務開示について、必ずしも関連する財務諸表と同じ文書において報告することは要求していない。
- BC118. 本基準は、プライム上場企業が金融商品取引法上の法定書類である有価証券報告書において提供するサステナビリティ関連財務開示を念頭に置いて開発している(BC8項参照)。一方、本基準は、プライム上場企業以外の企業(例えば、金融商品取引法以外の法令によりサステナビリティ関連財務開示の開示が求められる場合や、法令に基づかず、任意でサステナビリティ関連財務開示を作成する場合)も適用することができる(BC9項参照)。
- BC119. 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で、当該法令が、サステナビリティ関連財務開示及び関連する財務諸表をあわせて開示することを禁止しているか、あわせて開示しないことを容認しているときには、あわせて開示しないことを認めることが考えられる。また、任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合に、サステナビリティ関連財務開示及び関連する財務諸表をあわせて開示しないことのみにより、サステナビリティ開示基準に準拠していないとする必要はないと考えられる。
- BC120. サステナビリティ関連財務開示及び関連する財務諸表があわせて開示されず、そのタイミングも異なる場合、サステナビリティ関連財務開示において、関連する財務諸表の入手方法を明らかにする必要があると考えられるが、この点について、本基準は、関連する財務諸表がサステナビリティ関連財務開示と同じ文書において報告されていないときには、関連する財務諸表の入手方法を開示することを要求している(第7項(1)参照)。
Ⅱ.他の情報との関係
- BC121. 本基準は、サステナビリティ関連財務開示は明瞭に識別可能でなければならず、財務報告書に含まれる他の情報によって不明瞭にならないようにしなければならないとしている(第63項参照)。例えば、企業が活動する法域の法令の要求事項を満たすために、重要性がない情報を開示する場合があるが、そのような重要性がない情報が、重要性がある情報を不明瞭にしてはならないと考えられる。
- BC122. 重要性がある情報が不明瞭となる状況には、次のようなものが含まれると考えられる。
- (1) 重要性がある情報が、重要性がない追加的な情報と明瞭に区別されていない。
- (2) 重要性がある情報が、サステナビリティ関連財務開示において開示されているが、使用されている言葉遣いが曖昧又は不明確である。
- (3) サステナビリティ関連のリスク又は機会に関する重要性がある情報が、サステナビリティ関連財務開示全体に散らばっている。
- (4) 類似していない情報項目が、不適切に集約されている。
- (5) 類似の情報項目が、不適切に分解されている。
- (6) どの情報に重要性があるのかを主要な利用者が判断できないほどに、重要性がある情報が重要性がない情報によって不明瞭にされており、その結果として、サステナビリティ関連財務開示の理解可能性が低下している。
Ⅲ.相互参照
- BC123. 本基準は、IFRS S1号と同様に、一定の要件をすべて満たす場合に、サステナビリティ関連財務開示において相互参照を行うことを認めている(第64項から第66項参照)。
- BC124. さらに、IFRS S1号では定められていないものの、法令において相互参照によりサステナビリティ関連財務開示に含めることが認められない場合があるため、本基準では相互参照を容認する場合の要件に、法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で、当該法令が、相互参照により開示を行うことを禁止していないことを追加することとした(第64項(1)参照)。
- BC125. 相互参照によって提供される情報は、企業のサステナビリティ関連財務開示が利用可能である場合には、いつでも利用可能である必要があると考えられる(第64項(3)参照)。また、相互参照によって提供される情報が企業のサステナビリティ関連財務開示と同じ報告書の一部ではない場合には、当該情報が報告されている報告書の入手方法を説明することになると考えられる(第66項参照)。
報告のタイミング
Ⅰ.同時の報告
- BC126. サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものであると考えられるため、両者が同時に提供されることにより、提供される情報の理解可能性が高まり、情報の利便性も向上すると考えられる。したがって、本基準は、一定の条件を満たす場合を除きIFRS S1号の要求事項を取り入れ、サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同時に報告しなければならないとした(第67項参照)。
- BC127. 本基準は、プライム上場企業が金融商品取引法上の法定書類である有価証券報告書において提供するサステナビリティ関連財務開示を念頭に置いて開発している(BC8項参照)。一方、本基準は、プライム上場企業以外の企業(例えば、金融商品取引法以外の法令によりサステナビリティ関連財務開示の開示が求められる場合や、法令に基づかず、任意でサステナビリティ関連財務開示を作成する場合)も適用することができる(BC9項参照)。
- BC128. 法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合で、当該法令が、サステナビリティ関連財務開示及び関連する財務諸表を同時に報告することを禁止しているか、同時に報告しないことを容認しているときには、同時に報告しないことを認めることが考えられる。また、任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合に、サステナビリティ関連財務開示及び関連する財務諸表を同時に報告しないことのみにより、サステナビリティ開示基準に準拠していないとする必要はないと考えられる。
- BC129. サステナビリティ関連財務開示及び関連する財務諸表が同時に報告されない場合、サステナビリティ関連財務開示において、関連する財務諸表の入手方法を明らかにする必要があると考えられるが、この点について、本基準は、関連する財務諸表がサステナビリティ関連財務開示と同じ文書において報告されていないときには、関連する財務諸表の入手方法を開示することを要求している(第7項(1)参照)。
Ⅱ.報告期間
ⅰ.子会社等の財務情報の報告期間が異なる場合
- BC130. 報告企業が連結財務諸表を作成している場合において、親会社の財務情報の報告期間と、子会社等の財務情報の報告期間が異なるとき、サステナビリティ関連財務開示が、関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものであるためには、財務諸表及びサステナビリティ関連財務開示が対象とする報告期間は一致している必要があると考えられる。
- BC131. したがって、報告企業が連結財務諸表を作成している場合、親会社の財務情報の報告期間と、子会社等の財務情報の報告期間が異なるときには、サステナビリティ関連財務開示に取り込まれる親会社及び子会社等のサステナビリティ関連財務情報の報告期間は、それぞれの財務情報の報告期間と同じ期間を対象とすることになると考えられる。
- BC132. ここで、「子会社等」とは、子会社、関連会社その他連結又は持分法の方法により連結財務諸表に財務情報を取り込んでいる会社、組合及びこれらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)を意味している。
ⅱ.指標の報告のための算定期間がサステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間と異なる場合
- BC133. サステナビリティ関連のリスク及び機会に関連する指標として、企業が活動する法域の法令の要請により報告することが要求されている指標を用いることを選択する場合がある。この場合、当該法令において定められている指標の報告のための算定期間が、サステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間とは異なることがある。
- BC134. この点、本基準は、サステナビリティ関連財務開示が、関連する財務諸表と同じ報告期間を対象とすることを要求している(第68項参照)。このため、当該定めに従い、指標の報告のための算定期間についても、サステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間を対象とすることになると考えられる。
Ⅲ.12か月よりも長い期間又は短い期間
- BC135. 本基準は、合併などを理由に、企業が報告期間の末日を変更した結果、報告期間が12か月よりも長い期間又は短い期間となった場合の開示について定めている(第69項参照)。
Ⅳ.期中の報告
- BC136. 企業は、サステナビリティ開示基準に従い、期中報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示を公表することを法令において求められたり、公表することを選択したりする場合がある。
- BC137. 適時性及びコストを考慮する観点から、また、既に報告済みの情報との繰り返しを避けるため、期中報告期間に関しては、年次報告期間のサステナビリティ関連財務開示で提供される情報と比較して少ない情報を提供することが求められたり、そうすることを選択したりする場合があると考えられる。期中のサステナビリティ関連財務開示は、直近のサステナビリティ関連財務情報に関する年次開示の更新を提供するものである。これらの開示は、期中報告期間における新規の情報、事象及び状況に焦点を当てており、既に報告した情報を繰り返すものではない。
- BC138. 期中のサステナビリティ関連財務開示で提供される情報は、年次報告期間のサステナビリティ関連財務開示と比較して要約されている場合があるが、期中の財務報告書の一部として本基準に定めているようなサステナビリティ関連財務開示を公表することは妨げられない。
Ⅴ.公表承認日
- BC139. 企業が公表するサステナビリティ関連財務開示について、どの時点までの情報が開示に含まれているか、また、どの機関又は個人が公表を承認したのかに関する情報は、主要な利用者がサステナビリティ関連財務開示を理解するために必要な情報と考えられる。これらの開示は、IFRS S1号では要求されていないものの、本基準では、これらの情報についての開示を求めることとした(第70項参照)。
- BC140. 公表承認日に関する開示を行うにあたり、各企業において、サステナビリティ関連財務開示を公表することを承認する権限を有する機関又は個人を定め、当該機関又は個人がサステナビリティ関連財務開示を公表することを承認した日を公表承認日とすることが必要となると考えられる。
Ⅵ.後発事象
- BC141. サステナビリティ関連財務開示は、可能な限り最新の情報を反映することにより、適時な開示を行うことが主要な利用者の意思決定に有用と考えられる。このため、本基準では、報告期間の末日後、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日までに報告期間の末日現在に存在していた状況について情報を入手した場合、新規の情報に照らして、当該状況に関連する開示を更新しなければならないとした(第71項参照)。
- BC142. また、主要な利用者に有用な情報を提供するため、報告期間の末日後、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日までに発生する取引、その他の事象及び状況に関する情報について、当該情報を開示しないことにより、主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得る場合には、当該情報を当報告期間の開示に反映することとした(第72項参照)。
- BC143. なお、サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものであると考えられる。このため、関連する財務諸表の後発事象の開示において記載されている事項については、第64項に掲げた要件をすべて満たす場合、相互参照によりサステナビリティ関連財務開示に含めることができると考えられる。
比較情報
Ⅰ.比較情報の開示
- BC144. 本基準は、一定の条件を満たす場合を除き、当報告期間に開示されるすべての数値について、前報告期間に係る比較情報を開示しなければならないとしている(第73項参照)。
- BC145. この定めは、IFRS S1号の要求事項を基本的に取り入れたものである。ただし、法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合における当該法令が、前報告期間に係る比較情報を開示することを禁止しているか、前報告期間に係る比較情報を開示しないことを容認している場合には、当該法令の趣旨に反して比較情報の開示を求めることは適切ではないと考えられる。そのため、本基準では、このような場合にも前報告期間に係る比較情報を開示しないことができることとした(第73項(1)参照)。
- BC146. 比較情報を開示する対象となる数値には、例えば、指標及び目標やサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する財務的影響が含まれると考えられる。
Ⅱ.比較情報の更新
- BC147. 本基準は、前報告期間に開示された見積りの数値に関連して、当報告期間において新規の情報を入手し、当該情報が前報告期間に存在していた状況に関する証拠を提供する場合、新規の情報を反映して更新された比較対象の数値を開示しなければならないとしている(第74項(1)参照)。
- BC148. サステナビリティ関連財務開示の比較情報を更新する方法は、既に多くの法域の会計基準において確立されている、財務諸表における見積りの変更方法とは異なっている。財務諸表における見積りの変更は、会計基準の定めに従い、変更の影響を受ける当報告期間及び将来の報告期間(すなわち、変更があった報告期間)に認識される。この方法では、比較情報は更新されず、見積りの変更(例えば、資産の耐用年数、公正価値及び予想信用損失に関する見積りの変更)は、複式簿記を通じて、当報告期間の純損益及び資本に反映されると考えられる。
- BC149. しかし、サステナビリティ関連財務開示(例えば、スコープ3温室効果ガス排出)においては、見積り及び指標は資本に影響を与えず、また、変更した見積りを反映するにあたり比較情報を更新することにより、トレンドに関する最善の情報を主要な利用者に提供する可能性があると考えられる。
- BC150. そのため、本基準は、当報告期間の情報を変更するのではなく、前報告期間に関する見積りの変更を反映するために比較情報を更新した方が、より有用な情報を提供することになると判断し、比較対象の見積りの数値を更新することを要求している。
- BC151. IFRS S1号においては、比較対象の見積りの数値を更新することが要求されるのは、見積りの変更に関する情報に重要性があり、見積りを更新することが実務上不可能でない場合のみとされている。また、「実務上不可能」の定義は、IAS第1号における定義に基づくこととしているため、その閾値は高いものとされており、企業がその定めを適用するためのあらゆる合理的な努力を払った後にも適用することができない場合に、当該定めの適用は「実務上不可能」であるとされている。
- BC152. 本基準においても、「実務上不可能」について、「ある定めを適用するために合理的な努力を行っても、その定めを適用することができない状況」と定義したうえで(第4項(14)参照)、IFRS S1号における「実務上不可能」である場合に関する定めを取り入れることとした。
- BC153. また、本基準は、比較対象の見積りの数値を更新することが実務上不可能である場合、その旨を開示することを条件に、比較対象の見積りの数値を更新しないことを認めている(第75項及び第76項参照)。この例としては、指標について、新たな定義を遡及適用するためのデータが前報告期間において収集されておらず、データを再構築することが実務上不可能である場合などが考えられる。
準拠表明
- BC154. 企業が法令の定めに基づき開示を行っているかどうか、また、法令の定めに基づき開示を行う場合、どの法令に基づいているかという情報は、主要な利用者の理解に資する情報と考えられた。このため、IFRS S1号にはない定めであるものの、本基準は、法令の定めに基づきサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合には、当該法令の名称を開示しなければならないとし、法令の定めに基づかず任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合、その旨を開示しなければならないとする定めを追加している(第78項参照)。
- BC155. また、本基準は、サステナビリティ関連財務開示が、サステナビリティ開示基準のすべての定めに準拠している場合にのみ、明示的かつ無限定の準拠の旨を表明しなければならないとしており(第79項参照)、限定付きでサステナビリティ開示基準に準拠していると記述することを認めていない。この定めは、企業がサステナビリティ関連財務情報の報告にあたり、一部の定めに従った部分的な開示を提供したのか、それとも企業がすべての定めに従った開示を提供したのかを主要な利用者に伝えることの重要さを反映したものである。
同様に、サステナビリティ開示基準の定めを適用することなく、第55項に定めるガイダンスの情報源を適用する場合、サステナビリティ開示基準に関する明示的かつ無限定の準拠の旨を表明することは認められない。 - BC156. サステナビリティ開示基準は、戦略的目標(より低炭素の経済への具体的な移行計画に従うことなど)を導入することを企業に要求していないが、例えば、企業が設定した目標や、企業が活動する法域の法令によって設定することを要求されている目標に関する情報を開示することを要求している。ここで、サステナビリティ関連のリスク及び機会の一部を管理していない企業、又は自らの指標及び目標を設定していない企業は、開示においてその旨を説明すれば、サステナビリティ開示基準に準拠していることになると考えられる。
- BC157. 同様に、企業は特定のサステナビリティ関連のリスク又は機会をモニタリングし、管理するために整備されたガバナンスのプロセス、統制又は手続を有していない場合があるが、企業がそのようなプロセス、統制及び手続を整備していないという事実は、それ自体が主要な利用者にとって重要性がある情報である可能性が高いと考えられる。
判 断
- BC158. サステナビリティ関連財務開示を作成する過程で、企業は、見積りを伴うものとは別に、企業のサステナビリティ関連財務開示で報告される情報に重大な影響を与える可能性のあるさまざまな判断を行う。そのような判断には、次のものが含まれると考えられる。
- (1) 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の識別(第36項から第39項参照)
- (2) どのガイダンスの情報源を適用するかの決定(第40項から第43項及び第50項から第55項参照)
- (3) 事象又は状況の変化が重大であり、企業のバリュー・チェーンを通じて、影響を受けるすべてのサステナビリティ関連のリスク及び機会の範囲の再評価が要求されるかどうかの評価(第44項参照)
- (4) サステナビリティ関連財務開示に含める重要性がある情報の識別(第48項及び第49項参照)
- BC159. 本基準は、サステナビリティ関連財務開示を作成する過程で企業が行った判断のうち、サステナビリティ関連財務開示に含まれる情報に最も重大な影響を与える判断に関する情報を開示しなければならないとしている(第81項参照)。この定めは、IAS第1号における、企業が自らの会計方針を適用するにあたって行った判断のうち財務諸表に認識した金額に最も重大な影響を与えている判断を開示するという要求事項を参考に、企業がサステナビリティ関連財務情報の作成及び開示のプロセスにおいて行った判断についての開示に関するIFRS S1号における要求事項に手直ししたものを、本基準にも取り入れたものである。この開示は、企業のサステナビリティ関連財務開示において表示される情報についての主要な利用者の理解に資することになると考えられる。なお、企業が行った判断及びこれらの開示に含まれる情報に最も重大な影響を与える判断は、複数の判断となることもあると考えられる。
測定の不確実性
- BC160. 本基準は、サステナビリティ関連財務開示で報告される数値に影響を与える最も重大な不確実性に関する情報を開示しなければならないとしている(第83項参照)。この定めは、IAS第1号第125項における定めを参考に、主要な利用者の理解に資することを目的としてIFRS S1号における要求事項に手直ししたものを、本基準にも取り入れたものである。なお、サステナビリティ関連財務開示で報告される数値に影響を与える最も重大な不確実性は、複数の不確実性となることもあると考えられる。
- BC161. 第83項の定めは、見積りに関連しており、変数及び仮定の数が多くなれば、それらの判断はより主観的で複雑となり、それに応じてサステナビリティ関連財務開示で報告される数値に影響を与える不確実性も増大すると考えられる。
- BC162. 第83項の定めにより開示しなければならない可能性がある情報の種類及び範囲は、サステナビリティ関連財務開示で報告される数値の性質(すなわち、不確実性及びその他の状況の源泉並びにそのような不確実性及びその他の状況に寄与する要因)に応じて異なることが考えられる。例えば、次のような開示を行う必要がある場合があると考えられる。
- (1) 仮定又はその他の測定の不確実性の源泉の性質
- (2) 開示された数値の、その計算の基礎となる手法、仮定及び見積りに対する感応度(その感応度の理由を含む。)
- (3) 不確実性について見込まれる解消方法及び開示された数値に対して合理的に考えられる結果の範囲
- (4) 開示された数値に関する過去の仮定について行った変更の説明(その不確実性が未解消のままである場合)
- BC163. 第83項が要求する開示を行うにあたり、測定の不確実性の程度が高い数値を識別することになる。これには、BC161項及びBC162項のような背景から、当該数値を測定するにあたっての仮定、概算及び判断に関する情報が含まれると考えられる。
- BC164. サステナビリティ関連財務開示において報告される数値を直接測定することができず、見積ることしかできない場合、測定の不確実性が生じると考えられる。場合によっては、見積りには、結果が不確実な、将来起こり得る事象についての仮定を伴うと考えられる。合理的な見積りの使用は、サステナビリティ関連財務開示を作成するうえで不可欠な要素であり、見積りが正確に記述され、説明されていれば、情報の有用性が損なわれることはなく、測定の不確実性の程度が高くても、そのような見積りによって有用な情報を提供することが必ずしも妨げられるわけではないと考えられる。
誤 謬
- BC165. 当報告期間に発見された、その報告期間における潜在的な誤謬は、サステナビリティ関連財務開示の公表が承認されるまでの間に訂正される。しかし、重要性がある誤謬の中には、後の報告期間まで発見されないものもある。本基準は、重要性がある過去の報告期間の誤謬について、これを訂正することが実務上不可能でない限り、開示された過去の報告期間の比較対象の数値を修正再表示することによって訂正しなければならないとしている(第86項本文参照)。
- BC166. 法令の定めがある場合に、当該法令の趣旨に反して過去の報告期間の比較対象の数値を修正再表示することによって訂正することを求めることは適切ではないと考えられる。このため、IFRS S1号ではこのような定めはないものの、本基準では、例外として、法令において、開示された過去の報告期間の比較数値を修正再表示することによって訂正することで、過去の誤謬の解消ができない場合に該当するときは、第86項の修正再表示を行わず、当該法令に基づく取扱いに従うこととした(第86項ただし書き参照)。
- 以 上

