SSBJ サステナビリティ基準委員会

証券監督者国際機構(IOSCO)によるIFRSサステナビリティ開示基準のエンドースメント

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、2023年7月25日に、証券監督者国際機構(IOSCO)によるIFRSサステナビリティ開示基準のエンドースメントについて、公表いたしました。

また、ISSBは、法域におけるISSB基準の導入を支援するための「導入ガイド(Adoption Guide)」の概要を公表いたしました。「導入ガイド」は、2023年第3四半期又は第4四半期に公表される予定です。

原文:Adoption Guide overview 

日本語訳:「導入ガイド(Adoption Guide)」

 

国際証券規制当局による「IFRSサステナビリティ開示基準」のエンドース

2023年7月25日

「証券監督者国際機構」(IOSCO)は本日、「国際サステナビリティ基準審議会」(ISSB)の基準の包括的なレビューを行ったことを受け、当該基準のエンドースメントを発表した。

ISSBは、グローバルの資本市場に向けたサステナビリティ関連開示のグローバル・ベースラインを提供するため、2021年11月に設立された。

IOSCOは現在、130の加盟する法域メンバー(世界の証券市場の95%以上を規制する資本市場当局)に対し、世界中でサステナビリティ関連開示の一貫性及び比較可能性を提供するためにISSB基準をそれぞれの規制のフレームワークにどのように組み込むことができるかを検討することを呼びかけている。

IOSCOのエンドースメントは、ISSB基準が資本市場での使用の目的に適合しており、サステナビリティ関連のリスク及び機会を価格に織り込むことを可能にし、データ収集及び分析の向上を促進するという強力なシグナルを世界中の法域に送ることとなる。

このエンドースメントは、IOSCO加盟団体の75%を占める成長市場及び新興市場にも共鳴することが見込まれる。

この発表は、多くの法域がISSBの最初の2つの基準であるIFRS S1号及びIFRS S2号の使用に関する強制力のある要求事項の導入(introduce)を進めている時期に行われている。

このエンドースメントは20年以上前のIOSCOによる「IFRS会計基準」のエンドースメントを再現している。これは「IFRS会計基準」が真にグローバルな会計の言語となる(すなわち当該基準が世界中の投資者及び企業から信頼される)ために、その幅広い包括的な導入(adoption)を支え、140以上の法域で使用が要求されるよう支援した。

このエンドースメントと同時に、「IFRS財団」は、法域での導入(adoption)を支援するために、「IFRS財団」及びISSBの戦略に関する透明性を提供する概括的なロードマップを公表した。

この文書は、2023年後半に最終化される予定である、規制当局に対する「導入ガイド」に先行するものである。

ISSBのエマニュエル・ファベール議長は、次のように述べた。

ISSB基準を通じたサステナビリティ関連開示のグローバル・ベースラインに関する広範な規制上の導入(adoption)は、資本市場が要求する情報の一貫性及び比較可能性を確保することになるであろう。

IOSCOによる適時のエンドースメント及び資本市場当局が行動を起こすことへの強力な奨励は、ISSB基準が目的に適合していることを確認するものである。

IOSCOとともに、我々は、すべての人が行動を起こすように、実質的で包括的なキャパシティ・ビルディング・プログラムを提供することを約束する。

「IFRS財団評議員会」のエルッキ・リーカネン議長は、次のように述べた。

サステナビリティ開示の世界の整合性及び取組みの分断の低減は、極めて重要(of vital importance)である。

このビジョンを現実のものにするには、リーダーシップ及び先見性が必要である。

IFRS財団が国際サステナビリティ基準審議会を設立することを、IOSCOが最初に奨励したことについて、私はIOSCOに敬意を払う。

また、IOSCOがIFRS財団モニタリング・ボードを通じて継続的な監督を行っていることについて、また本日のエンドースメントにつながったISSB基準の徹底的なレビューを行ったことについても、IOSCOに感謝する。

以 上

 

IOSCOによるISSB基準のエンドースメントについてのエルッキ・リーカネンIFRS財団評議員会議長のコメント

2023年7月25日

本日、サステナビリティ開示の世界を進展させる、重要な(pivotal)瞬間を刻むこととなる。

この旅は、2021年11月にグラスゴーで行われたCOP26から始まった。IFRS財団評議員会は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立する決定を発表した。

そこで、我々は資本市場のために、サステナビリティ関連財務開示のグローバル・ベースラインを提供することを約束した。

これを達成するために、我々はまた、サステナビリティ開示の世界を統合する(consolidate)ことも約束した。この統合(consolidation)は、重要な(important)基準設定主体の約束により、またこの分野における多くの機関(慈善団体を含む。)の支援により可能となった。

IFRS財団評議員会は、グローバルなサステナビリティ基準への強力な支持を与えた広範で国際的な協議の後に初めて、ISSBを創設する取組みを行った。この協議はまた、IFRS財団内にISSBを設立することで、財務諸表との重要な(vital)つながりも強調した。

先月6月26日に、ISSBはこれらの約束を実行し、その最初の基準、すなわちIFRS S1号及びIFRS S2号を公表した。

本日IOSCOによってそれらの基準をエンドースメントすることは、画期的な出来事であり、歴史的な快挙である。

さまざまな自主的な基準及びフレームワークよって分断がもたらされ、投資者及び企業に混乱さえももたらしてきた。これは、企業が効果的にコミュニケーションを行うことができず、複数の報告フレームワークを適用しなければならないことに苦慮してきたことを意味していた。

投資者は、サステナビリティのリスク及び機会を価格に折込むために必要な情報を受け取っていなかった。市場は、気候変動に対する奮闘において、重要な(important)役割を果たすことができなかった。

これらは、ISSBの設立につながる重要な(important)要因(driver)であった。「ISSB基準」をエンドースすることにより、世界中の証券規制当局は、資本市場が求める情報の一貫性及び比較可能性を達成するために動いている。

IOSCOによるエンドースメントは、グローバル・レベルの資本市場が用いることに適した、頑健で釣り合いのとれた(proportional)、サステナビリティ開示基準を開発するISSBの作業に対する明確な証明(resounding validation)である。

IOSCOは、グローバルな財務規制を形成するにあたり重要な(crucial)役割を有している。証券規制当局は、資本市場における企業報告及び開示要求を設定するための中核を担う。IOSCOによるエンドースメントは、世界中の法域に強力なシグナルを送り、ISSB基準を自身の規制の枠組みに導入する(implement)ために必要な自信を与える。

我々は、IOSCOがこれらの基準を統合する(unifying)ことの重要性(importance)を認識したことについて、IOSCO及びその議長であるジャン=ポール・セルベ氏に対して感謝している。投資者はサステナビリティ関連のリスク及び機会を自身の意思決定に組み込むことができるようになる。

このエンドースメントは、20年以上前の「IFRS会計基準」の広範囲で包括的な導入(adoption)におけるIOSCOの重要な(important)役割を反映している。

財務報告におけるデータ品質の課題は、IOSCOがIFRS財団及びIASBの創設を支援した際に対処された。今日、140か国以上が国内の公的な説明責任を有する企業のすべて又は大半に、「IFRS会計基準」を用いて報告を行うことを要求している。これにより、投資者が高品質でグローバルに比較可能な財務情報にアクセスできることを確保している。

当該基準は、世界中の投資者及び企業に信頼される、世界で認められる会計の言語になった。同様に、本日のIOSCOによるエンドースメントは、ISSB基準がグローバルでサステナビリティ開示の共通言語となる布石となる。

今般、我々はサステナビリティからもたらされるリスク及び機会に直面しており、サステナビリティ情報に会計と同じ厳格さを適用し、会計と同じ一貫性を達成することは重要である(important)。

気候変動は、切迫した悲劇である。効果的な気候の移行のために、我々には政策上の取組みが求められ、民間の投資も必要である。しかし、民間の投資を呼び込むためには、よりよい開示が必要である。IFRS財団は、よりよい開示に対するニーズに対処するために、ISSBを設立した。ISSB基準は、資産運用会社が自身のポートフォリオにおけるカーボン・フットプリントを管理し、銀行が移行リスクの自身のエクスポージャーを評価することを可能にする。

ジャン=ポール・セルベ氏の言葉は、規制の枠組みを通じて資本市場の運営にサステナビリティの考慮事項を取り入れることの緊急性及び重要性(importance)に共鳴する。

財務諸表及びサステナビリティ開示は、かつては別個のものであった。今日、それは同じコインの両側である。

しかし、一貫性があり高品質でグローバルに比較可能なサステナビリティ関連開示を確保する道程は、今日で終わりではない。

「IFRS財団」は、世界中の規制当局が当該基準をタイムリーにかつ一貫した方法で導入する(adoption)することを支援することを約束する。この作業の多くは、IOSCOとの協力により行われるであろう。

高品質なサステナビリティ保証の枠組みを開発することの関連性についてのジャン=ポール・セルベ氏のコメントを私は強調したい。それは、高品質で、一貫性があり、信頼性が高いサステナビリティ関連情報を下支えすることに寄与する、重要な(important)構成要素である。

保証は投資者に対して、ISSB基準を用いて提供された情報における自信を与える。

この作業は、協力的な取組み(efforts)の重要な(vital)構成要素であり、我々と「IAASB(国際監査・保証基準審議会)」及び「IESBA(国際会計士倫理基準審議会)」との対話を私は強調したい。彼らはその作業を進めているからである。

サステナビリティ開示を財務諸表と同じ厳格さに引き上げる道程は容易ではない。しかし、G20、G7、「金融安定理事会」及びIOSCOのようなグローバルの機関の支援のもと、我々は正しい道筋を進んでいる。IFRS財団モニタリング・ボードの初代議長であり、現在はIOSCOの議長であるジャン=ポール・セルベ氏は、常にビジョン及びリーダーシップを提供しており、私は本日彼に敬意を払う。

私はエマニュエル・ファベール氏に託し、最初のISSB基準についての追加の文脈を提供し、我々のロードマップに示されている導入(adoption)に関する我々の考え方を共有してもらうことにする。

以 上

 

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